設立の趣旨

 今日、私たちの生活に占める映画・テレビ・写真の役割は、ますます大きなものになりつつあります。それらは単に、情報伝達の媒体であるばかりでなく、私たちの意識に深く根をおろし、文化の本質まで形づくろうとしています。私たちはこの事実を認識し、写真・映画・テレビを、一つの映像という共通の視点からとり上げたいと思います。

 なぜなら、映画・テレビ・写真による現代の文化的特質は、各媒体の内側においてではなく、媒体と媒体の間につくりだされるものです。また映像は、写真・映画・テレビという既存媒体の外に、いちじるしく拡がりつつあります。私たちは、今まで固執されて来た写真・映画・テレビ等、媒体を中心とするジャンル的思考にとらわれることなく、あるいは学問的・創造的・技術的アプローチの違いにこだわることなく、映像と人間、映像と社会の問題を広い視野で考えなければなりません。
言語は、人間を人間たらしめる人間活動の基本に外なりません。しかし、言語は、人間の想像力を通してこそ文化の創造手段となり得るのであり、想像力こそ、文化の創造主体─人間の根源的なエネルギーと申せましょう。

 ここに「日本映像学会」(JASIAS)を創立する趣旨は、既存の媒体を対象とする学問的研究を超え、映像という共通の問題意識を大切にし、人間と社会の未来について、自由な討論と闊達な研究の場をつくり出すことです。閉ざされた研究、限定された交流ではなく、あくまで開かれた視点に立つ総合的思考─これこそ今日の文化的要請に応え、本質への問題提起を行う姿勢ではないでしょうか。