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藝術学関連学会連合第11回公開シンポジウム「ニュースを創り出すアートの力」【6月11日】

2016/05/26 お知らせ

藝術学関連学会連合
第11回公開シンポジウム「ニュースを創り出すアートの力」開催のお知らせ

日時:2016年6月11日(土) 13:30-18:00(13:00開場)
会場:早稲田大学 戸山キャンパス 382教室(36号館3階/収容人員250名)
   (東京都新宿区戸山1-24-1)
入場無料/申し込み不要
http://geiren.org/news/2016/20160611.html

オーガナイザー
藤澤 茜(国際浮世絵学会・学習院大学)
武田 潔(日本映像学会・早稲田大学)

 芸術的な表現がどのようになされ、受容されてきたのか、という問題については、これまでにも様々な場で解釈がなされてきた。作品表現の中には、作り手や表現者の意思、個性以外にも多くの要素が含まれ、背景にある社会通念や社会情勢、政治的なメッセージ、同時代の流行などを読み解くことは作品を理解するための重要な作業となる。情報を伝達する「ニュース性」を持った作品は、絵画、写真、映像、音楽、演劇などにも数多くみられるものであり、こうした作品が生み出された状況や文化的環境に与えた影響について、多角的に検討することには大きな意義があると思われる。
 「ニュース性」をキーワードにすえると、様々な問題が浮かび上がってくるだろう。その作品が果たしたメディアとしての役割を明らかにすることも重要であり、その過 程で加わり得る人為的な操作を検証する必要も生じる。また時には、ニュース性を帯びるが故に、独特な表現が生まれる場合もある。例えば、幕府の出版統制を受け、浮世絵版画では規制の対象となり得る内容を描く場合に、別のものに置き換える作業を経てカモフラージュし、重層的にニュースを伝える。あるいは、報道写真についても、被写体や構図や撮影する瞬間の選択から、時に加えられる演出やキャプションの言葉に至るまで、伝えることと創ることにまつわる幾多の要因が介在する。
 客観的な事実の報道にとどまらず、一つの「作品」としてニュースが創出され、そこから新たな流行や世界観が生み出されることがある。こうした大きな流れを生み出すアートの力について、政治的な観点、あるいは戦争や災害等に特化するのではなく、ファッションや最新文化などの情報伝達にも積極的に目を向け、各方面から検討したい。

【プログラム】

開会の辞 (13:30-13:45)
挨拶 礒山 雅(藝術学関連学会連合 会長)
趣旨説明 藤澤 茜(国際浮世絵学会・学習院大学)
司会 武田 潔(日本映像学会・早稲田大学)

報告 (13:45-16:15)

「ニュースになった江戸文化 ―浮世絵が創る「時代の顔」―」
藤澤 紫(国際浮世絵学会・國學院大學)
 新興都市・江戸のメディアとして開花し、国内外を問わず今も多くの愛好者を有する浮世絵。とりわけ錦絵に代表される木版画は、庶民層の娯楽品のみならず、貴重な情報源として受容された。そこに選択された様々な主題は、まさに江戸庶民が求めた「ニュース」そのものと言える。今回は、「評判娘」、「死絵」、「鯰絵」の3点から、江戸の出版文化におけるビジュアル・イメージの役割を考える。

「語りの変遷 ―作られる白虎隊イメージ―」
川延 安直(東北芸術文化学会・福島県立博物館)
 戊辰戦争末期、敗走の末、飯盛山山腹から煙に包まれる城を見て絶望し、命を絶つ。このような白虎隊を巡る言説はどのように成立したのか。報道、伝聞、絵画化された資料が言説を作りあげていく。その過程について報告する。

「藤田嗣治《アッツ島玉砕》(1943)と「玉砕」の誕生」
長田 謙一(美術科教育学会・名古屋芸術大学)
 1943年5月29日、米軍に追い詰められた日本軍アッツ島守備隊は、最後の決死攻撃を挙行し全員戦死を遂げたとされた。大本営はそれを初めて「玉砕」と呼び大々的に報じたが、それを伝える画像はあろうはずもなかった。同年9月1日に発表された藤田嗣治《アッツ島玉砕》こそは、「一億国民の身体」に響くイメージ「玉砕」の誕生をつげるものとなった。

「見えるものは真か偽か」
小松 弘(日本映像学会・早稲田大学)
 例えば裁判における証拠能力という観点から見て、「映像」は一般的に視覚的に真実を表象していると考えられている。だが一方で、コンピュータによる映像技術の発展はSFX技術を駆使した最近の映画が作り出しているような視覚的真実からの隔たりを実現しているという意味で、偽(=似せ)を表象していることは一般的に明らかである。こうした映像の視覚的両義性を映画史の始まりを事例として説明しようと試みるのが本発表である。

(休憩10分)

「政吉ヴァイオリンがニュースになるとき」
井上 さつき(日本音楽学会・愛知県立芸術大学)
 発表者が鈴木ヴァイオリンの創業者である名古屋の鈴木政吉(1859‐1944)に関する調査研究を行う過程で、何がニュースとなり、その結果どのような展開が生じたか、その実例を紹介し、ニュース性と音楽学研究との関係について考える。

「音による出来事の表現の展開 ―録音コンテストの記録から―」
金子 智太郎(美学会・東京工芸大学)
 日本では60年代から70年代にかけて、録音装置が一般に普及していくなかで、いくつもの録音コンテストが開催された。本発表はこうしたコンテストの記録にもとづいて、音による出来事の表現が移り変わっていく経緯をたどる。

「萌芽的文化とアート概念の拡張 ―神戸ビエンナーレ、10年の試み―」
大森 正夫(意匠学会・京都嵯峨芸術大学)
 地域での芸術文化力による震災復興と、既存のアート概念の拡張をめざした「神戸ビエンナーレ」。ポピュラーカルチャーに不可欠な先取性と多様性に着目したコンペティションと展示作品の「ニュース性」について報告する。

討議 (16:30-17:50)

閉会の辞 (17:50-18:00)
挨拶 山﨑 稔惠(藝術学関連学会連合 副会長)

以上
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