第17回大会[1991年]報告

日本映像学会第17回大会
1991年6月8日‐10日
主催校:大阪大学
実行委員長:神林恒道

 6月8・9日は、大阪、豊中キャンパスにて、シンポジウムと研究発表会。10日は、会場を京都、白沙村荘・橋本関雪記念館に移し、エクスカーションと特別講演会と懇親会。また、10日から12日まで、京都文化博物館にて、映像企画展(一般にも公開)が開催された。まず、シンポジウムでは、社会学的、美学的、映像学的視点から、また制作現場から、映像芸術としての日本映画に関する報告と討論がなされた。また、研究発表に関しては、映像概念を拡大させ、従来、等閑視されがちであった分野への踏み込みが試みられた。また、特別公演では、文化文政の頃より伝えられる芸能で、カラーアニメーションの元祖とも言うべき「錦影絵」が、桂米朝事務所からの主演者によって公開された。懇親会は、白沙村荘庭園にて立食パーティー。全て、盛況だった。ご指導、ご協力いただいた役員、委員を始めとする会員の皆様、又、遠方より来阪下さった会員の皆様に感謝申し上げたい。

研究発表
<映像と理論I:映画>
西澤栄美子「書物と映画のアナロジー」
牧野 守「我が国に於ける映画と心理学の発達過程─波多野完治の果たした役割について─」
<映像概念の拡大>
伊東多佳子「影絵のロマン主義─Ph.O.ルンゲの切紙絵によるPlantscape(植物の風景)について─」
岸 文和「明和四年(1767)んおスナップショット─歌川豊春『浮絵』の眼差しについて─」
長尾義人「音の背景にあるもの─自然の形象を求めて─」
<映像とプラクシス>
浅井敬三「1980年代のアメリカテレビCM表現動向─大衆文化の反映を視点として─」
山本圭吾「ISDNによるネットワーク芸術の思想と方法」
岡村征夫「映像表現の研究II ”人物写真の視線による誘導される場”」
<映像と歴史>
福原正行「ナチ・プロパガンダと戦争映画─『勝利の歴史』を巡る比較分析─」
佐伯知紀「映画フィルムの保存態勢について─フランス、イギリスのフィルム・アーカイヴとわが国の現状」
<映像と理論II:映像>
中村光一「フェルメールが描いた世界に見る映画的造形─小津作品との関連をめぐって─」
平松修治「コンピュータ・グラフィックスに於ける『リアリティ』についての考察」

シンポジウム
「映像芸術と大衆文化」
杉山平一・滝沢一・中島貞夫・上倉庸敬(司会)

エクスカーション
白沙村荘・橋本関雪記念館見学

特別公演「錦影絵」桂べかこ、桂小米

映像企画展6月10~12日京都文化博物館別館(旧日本銀行支店ホール)
「歴史的景観のプレザンス」

(執筆・記録:神林恒道)