2022/06/07 アジア映画研究会
福岡市総合図書館所蔵作品アジア映画セレクション Dedicated to the late Tadao Sato
◎会期:2022年6月27日(月)~7月2日(土)
◎会場:アテネ・フランセ文化センター(御茶ノ水・水道橋)
◎料金:一般1,200円、学生/シニア1,000円、アテネ・フランセ文化センター会員800円、3回券(一般/学生/シニア/会員共通)2,400円
※「日本映像学会会員」または「アジア映画研究会会員」は当日受付にて申し出てください。
【開催趣旨】
アジア映画研究会は本年度の公開イベントとして、アテネ・フランセ文化センターと共催で「福岡市総合図書館所蔵作品アジア映画セレクション Dedicated to the late Tadao Sato」を開催します。
福岡市総合図書館はFIAF(国際フィルム・アーカイブ連盟)の準会員として、アジアフォーカス・福岡国際映画祭(1991ー2020)で上映された優れたアジアの作品を中心に積極的に収集・保存してきました。このたび同館は収蔵作品を日本国内で広く活用するためにBlu-ray化に着手し、上映機会の拡大を図ることとなりました。 本特集では、今回Blu-ray化された7作品に加えて2作品を特別上映するとともに、当研究会のメンバーも加わって、日本におけるアジア映画普及の足跡と展望を語る2つのトークを実施します。
なお、本特集を、福岡市総合図書館アジア映画ライブラリーの設立と推進に尽力し、本年3月に逝去された佐藤忠男さん(日本映像学会創立メンバー)に捧げます。
主催:アテネ・フランセ文化センター
共催:日本映像学会アジア映画研究会
協力:福岡市総合図書館、コミュニティシネマセンター、シネマトリックス、株式会社スモールトーク
webページ:http://www.athenee.net/culturalcenter/program/as/asiancinema.html
【スケジュール】
6月27日(月)
18:00 | オープニングトーク:「開催から40年―国際交流基金「南アジア映画祭」(1982年開催)がもたらしたもの」 四方田犬彦(映画誌・比較文学研究者) 清水展(文化人類学者) モデレーター:石坂健治(日本映像学会アジア映画研究会代表) |
19:30 | 特別上映『悪夢の香り』(95分) |
6月28日(火)
15:10 | 『私はガンディーを殺していない』(104分) |
17:20 | 『ヴィレッジ・オブ・ホープ』(72分) |
19:30 | 『トゥルー・ヌーン』(83分) |
6月29日(水)
13:50 | 『虹の兵士たち』(125分) |
16:20 | 『夢追いかけて』(127分) |
19:00 | 『ジャングル・スクール』(90分) |
6月30日(木)
15:10 | 『トゥルー・ヌーン』(83分) |
17:00 | 『ジャングル・スクール』(90分) |
19:00 | 『ヴィレッジ・オブ・ホープ』(72分) |
7月1日(金)
14:00 | 『土曜の午後に』(86分) |
16:00 | 『虹の兵士たち』(125分) |
18:30 | 『夢追いかけて』(127分) |
7月2日(土)
12:00 | 『土曜の午後に』(86分) |
14:00 | クロージング・トーク:「アジアフォーカス・福岡国際映画祭から未来へ」 ショーレ・ゴルパリアン(映画プロデューサー) 山口吉則(アジアフォーカス・福岡映画祭元事務局次長) モデレーター:石坂健治(日本映像学会アジア映画研究会代表) |
15:30 | 特別上映『牛』(105分) |
【作品解説】(text by 石坂健治)
●『悪夢の香り』※特別上映
Perfumed Nightmare
1977年/95分/16mm
監督・脚本:キドラット・タヒミック
出演:キドラット・タヒミック ジェジェット・ボードリィ マン・フェリィ
ジープニー(乗合バス)運転手がアメリカ人に雇われて車ごとパリに移動し、珍妙な労働に従事させられる。監督自ら主演して先進国の独善を揶揄する本作が1982年「南アジア映画祭」で上映されると衝撃が走り、四方田犬彦はゴダールとの比較論をただちに発表。清水展はタヒミックや先住民と暮らして30年後に文化人類学の著作を上梓した。詳しくはオープニングトークで!
●『私はガンディーを殺していない』
I Did Not Kill Gandhi
2005年/104分/35mm→Blu-ray
監督:ジャヌ・バルア
脚本:ジャヌ・バルア サンジャイ・チョウハーン
撮影:ラージャー・チャクラヴァルティー
出演:アヌパム P.ケール ウルラミー・マートーンドカル プラヴィーン・ダバス
退職した大学教授に認知症が兆し、自分はガンディー殺害犯だという妄想に取り憑かれていく…。アジアフォーカス映画祭の初代ディレクター・佐藤忠男はアッサム語映画界の名匠バルアの作品を愛し、『河は流れる』(99)『虹に乗って』(02)に続いて任期最後の2006年に本作を福岡に紹介した。福岡観客賞(コダックVISIONアワード)受賞作。
●『トゥルー・ヌーン』
True Noon
2009年/83分/35mm→Blu-ray
監督:ノシール・サイードフ
脚本:サファール・ハクドドフ
撮影:ゲオルギー・ザラエフ
出演:ユーリー・ナザーロフ ナシパ・シャリポワ ナスリディン・ヌリディノフ
ソ連邦崩壊後にタジキスタン共和国で初めて製作された長編劇映画。国境沿いの二つの村はソ連時代から人々が自由に行き来していたが、ある日突然軍隊が国境線を作り往来が妨げられてしまう。気象観測所に勤めるロシア人キリルは国境越えの一計を案じるが…。映像美に圧倒されるサイードフ監督のデビュー作。福岡観客賞受賞作。
●『虹の兵士たち』
Laskar Pelangi
2008年/125分/35mm→Blu-ray
監督:リリ・リザ
原作:アンドレア・ヒラタ
脚本:サルマン・アリスト リリ・リザ
撮影:ヤディ・スガンディ
出演:チュッ・ミニ ズルファニ フェルディアン
アンドレア・ヒラタのベストセラー小説(邦訳「虹の少年たち」)を21世紀のインドネシア映画を牽引するリリ・リザが映画化した大ヒット作。スズ鉱山で知られるブリトン島のイスラム小学校を舞台 に、新任女性教師と10人の貧しい児童のふれあいと成長の物語。リザはアジアフォーカス映画祭で最も愛された監督の一人で、多くの作品が上映されている。
●『夢追いかけて』
Sang Pemimpi
2009年/127分/35mm→Blu-ray
監督:リリ・リザ
原作:アンドレア・ヒラタ
脚本:サルマン・アリスト ミラ・レスマナ リリ・リザ
撮影:グンナール・ニムプノ
出演:レンディ・アフマド アズウィル・フィトゥリアント フィクリ・セプティアワン
『虹の兵士たち』の大ヒットを受けて直ちに制作された続編。高校生になった少年たちは新たな友人とも出会い、それぞれの進路を見つめて勉学に励むが、スズ相場の暴落で家庭が困窮し、暗雲が立ち込める。悩みながらも成長していく若者の姿に社会的不平等や不公正な富の分配といったテーマも加わった辛口の青春映画。
●『ジャングル・スクール』
Sokola Rimba
2013年/90分/DCP→Blu-ray
監督:リリ・リザ
原作:ブテット・マヌルン
脚本:リリ・リザ
撮影:グンナール・ニムプノ
出演:プリシア・ナスティオン ニュンサン・ブンゴ
スマトラ南部の熱帯林で活動する環境NGOの女性職員ブテットは「森の民」の子どもたちに読み書きや算数を教えようとするが、現地の大人たちとの軋轢、彼女の活動に理解のない上司、違法な森林伐採を目論む業者たち、といった試練が次々と降りかかる。実在の人物ブテット・マヌルンに取材し、文明とは何かを問うリザの福岡観客賞受賞作。
●『ヴィレッジ・オブ・ホープ』
Village of Hope
2013年/72分/DCP→Blu-ray
監督:ブンソン・ナークプー
脚本:ブンソン・ナークプー
撮影:ティーラワット・ルジンタム
出演:グライソーン・ナークプー トゥープ・ナークプー シリモンコン・ワイプット
若い兵士ソーンは半年後の除隊を控えて故郷の村に一時帰省するが、父・母・兄とも所在不明の離散状態で孤独に苛まれる。農業を営む親戚たちも彼を疎んじるが不作で生活は厳しい。「ロマンティックな故郷ではないので白黒で撮影しました」とブンソン監督は語る。 大島渚『愛と希望の街』にも似てタイトルと内容が皮肉なねじれを示している。
●『土曜の午後に』
Saturday Afternoon
2019年/86分/DCP→Blu-ray
監督:モストファ・サルワル・ファルキ
脚本:モストファ・サルワル・ファルキ
撮影:アジズ・ジャンバキエフ
出演:ジャヒド・ハサン ポロムブロト・チャテルジー ヌストラ・イムロズ・ティシャ
ラマダン期間中、首都ダッカのレストランがイスラム過激派に占拠される。警察に包囲された彼らは人質のうち異教徒から殺していく…。22人が殺害された実際のテロ事件をもとに全篇ワンカットで撮り上げた意欲作。世界が注目するファルキ監督の「アイデンティティー三部作」は本作と次作『ノー・ランズ・マン』(大阪アジアン映画祭2022出品)まで進行中。
●『牛』※特別上映
The Cow
1969年/105分/35mm→DCP
監督・脚本:ダリウシュ・メールジュイ
撮影:フェレイデュン・ゴワンルー
出演:エザットラー・エンテザミ マヒン・シャハビ アリ・ナシリアン
イラン映画に革新をもたらしたメールジュイの代表作。可愛がっていた牛を失ったショックで自分を牛と思い込んでしまう男の錯乱と妄執、それを取り巻く農村の閉鎖性を描く。東京フィルメックス 2019でデジタル修復版が上映され、その際にアミール・ナデリ監督が「『牛』はイラン映画史上の『羅生門』である」とコメントした。