第56回映画文献資料研究会【11月25日】

2023/10/19 映画文献資料研究会

第56回映画文献資料研究会のお知らせ

日本映像学会映画文献資料研究会では、下記のように、研究例会を開催いたします。会員の皆様のご参加をお待ちいたします。

「映像と資料から迫る満映日本人の戦後」

企画概要:1937年7月「蘆溝橋事変」を契機として日中全面戦争が幕を開け、その一ヵ月後、満州国政府ならびに満鉄による出資と、関東軍、協和会、そして日本国内の各種機関による人的支援のもとで、「満州映画協会(略称満映)」が正式に発足した。第二次世界大戦が終結する1945年8月までに、満映は計1000本ほどの作品を製作した。
やがて終戦を迎え、満映も崩壊したが、しかし、多くの満映の日本人スタッフはそのまま中国に留まり、中華人民共和国成立(1949年)以降も東北(長春)映画撮影所を主な拠点として、中国映画の製作に携わっていた。
 八木寛(脚本家)、内田吐夢、木村荘十二(以上は監督)、岸寛身、福島宏、気賀靖吾(以上はキャメラマン)、岸冨美子、民野吉太郎(以上は編集)、織田謙三郎、勢満雄(以上は特撮)、村田幸吉(照明)、菊地弘義、秋山喜世志、仁保芳男(以上はフィルム・現像)、持永只仁(アニメ。のちに上海映画撮影所へ配置)、高島小二郎、山元三弥、清島竹彦、佐々木勇吉、光本豊(以上は録音。清島竹彦、佐々木勇吉、光本豊はのちに北京映画撮影所に籍を移し、それぞれ秦彦、左山、高敏の中国名で活躍)、小野沢亘(美術。北京映画撮影所所属)らがそうである(劉文兵著『日中映画交流史』より)。
 本企画は、映像と資料の両面から満映日本人スタッフの戦後、とりわけ彼らの中国での活動に迫る。
 『中国映画を支えた日本人~“満映”映画人 秘められた戦後~』は2006年にNHKによって初放映され、大きな話題を呼んだ。戦前「満州映画協会」に勤め、戦後も共産党政権下の中国で映画制作に携わった日本の映画人の知られざる戦後にはじめてスポットライトを当てたことで、日中映画史、ないし日中関係史に大きな一石を投じた画期的な作品である。上映後、小川道幸ディレクターは登壇し、番組制作について語る。
 いっぽう、『中央公論』昭和29年(1954年)2月号に掲載された「座談会:私たちは新中国で映画をつくってきた」は、満映研究の基本文献として多くの研究者に重宝されてきた。ところが、それはあくまでもダイジェスト版である。近年、座談会の全容を記録した謄写版が見つかり、映画史研究の劉文兵(大阪大学)がそれを関係者から特別に提供してもらい、それに基づいて研究発表をおこなう。

日時:2023年11月25日(土)13時30分~17時00分(予定)
第1部:参考上映『中国映画を支えた日本人~“満映”映画人 秘められた戦後~』(2006、NHK)
第2部:「小川道幸ディレクターが番組制作の舞台裏を語る」
 〇小川道幸 (おがわ みちゆき)
映像ディレクター。1947年香川県生まれ。早稲田大学理工学部金属工学科で学び、後に社会学部で人類学を学ぶ。早稲田大学探検部OB。株式会社 グループアンダリン代表取締役。認定NPO法人国境なき子どもたち元会長、前副会長、現在評議員。2016年よりパンジーメディア(知的障害者の発信するメディア)エグゼクティブプロデューサー。
 世界110か国以上を訪れ、80本以上の作品を監督。NHKを中心に『最期のひばり』『中国映画を支えた日本人~“満映”映画人 秘められた戦後~』『ヒマラヤ大空撮!接近!ネパール8000m峰』『神秘の大河アマゾン・3つの不思議に迫る』など、様々なジャンルのドキュメンタリー番組を手がけている。
 現在は知的障害者と映像を作り、パンジーメディア(https://pansymedia.com/)を拠点に毎月インターネットで放送している。
第3部:研究発表「新資料に見るポスト満映の位相」(大阪大学 劉文兵)
 〇劉 文兵(リュウ ブンペイ)
大阪大学人文学研究科准教授。博士(学術)。中国山東省生まれ。東京大学大学院博士課程修了。
主な単著に『日本の映画作家と中国――小津、溝口、黒澤から宮崎駿、北野武、是枝裕和、岩井俊二まで』(弦書房)、『映画がつなぐ中国と日本』(東方書店)、『日中映画交流史』(東京大学出版会)、『日本電影在中国』(中国電影出版社)、『中国抗日映画・ドラマの世界』(祥伝社)、『中国映画の熱狂的黄金期』(岩波書店)、『日中映画人交流』(集英社)、『中国10億人の日本映画熱愛史』(集英社)、『映画のなかの上海――表象としての都市・女性・プロパガンダ』(慶應義塾大学出版会)などがある。共著、論文多数。日本映画ペンクラブ賞受賞。 

会場:東京工芸大学芸術学部1号館2階1206教室
   東京都中野区本町2-9-5
参加費:無料
連絡先:西村安弘 nishimurimg.t-kougei.ac.jp

主催:日本映像学会映画文献資料研究会(代表:西村安弘)/慶應義塾大学東アジア研究所産業経済研究財団助成プロジェクト「日中戦争後の政権移行と映像文化」(代表者 吉川龍生)/科研費 基盤研究C(研究代表者 劉文兵)