映像心理学研究会・アニメーション研究会合同研究発表会【3月6日】

2016/02/15 アニメーション研究会

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平成27年度
日本映像学会「映像心理学研究会・アニメーション研究会」
合同研究発表会のご案内
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 早春の候、益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 さて、日本映像学会東部支部映像心理学研究会ならびにアニメーション研究会では、このたび合同研究発表会を企画いたしました。
 詳細は下記の通りです。参加申込みに関しては文末をご覧下さい。
 どなたでもご参加いただけますので、是非ご出席くださいますようご案内申し上げます。

日本映像学会 映像心理学研究会・アニメーション研究会
代表 横田正夫
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期日:平成28年3月6日(日)
時間:PM1:00~6:00
場所:日本大学文理学部百周年記念館会議室1
アクセスマップ http://www.chs.nihon-u.ac.jp/access/
キャンパスマップ http://www.chs.nihon-u.ac.jp/about_chs/campus_map/
東京都世田谷区桜上水3-25-40
京王線 下高井戸あるいは桜上水下車、徒歩8分

第1部 映像心理学研究会(1:00~3:55)

1:00~1:50
表題「静止画の連続呈示に何を見るのか~多様な運動対象とその動き~」
野川中氏(明星大学)
要旨
 静止図形を異なる位置に連続的に呈示すると、1つのものが移動するように見える。このように外的な動を伴わずに動きが知覚される現象は仮現運動と呼ばれる。静止画の連続呈示による動きの表現は、映画やアニメーションの根幹である。心理学では、前後の呈示の“間”が60msとする時に最適に運動が見えることが明らかにされている(Wertheimer,1912)。しかしながら、映画やテレビの呈示方法における各静止画の“間”は、非常に短いか、あるいは存在しない。2013年のパネルディスカッション「アニメーションと仮現運動~この似て非なるもの?~」では、動きが見えるための時間条件が異なるという観点から議論が行われた。
 本話題では、静止画の“呈示方法”に着目し、仮現運動として様々な運動現象が生じることを明らかにする。上記議論の的である時間条件の相違も、その諸相の一部として包括的に理解することができる。

2:00~2:50
表題「アニメーション制作実習課題の検討とその作品の印象評定」
野村康治会員・野村建太会員(日本大学)
要旨
 画力にばらつきがある学生を対象としたアニメーション制作の教育、特に動きの制作を習得する初歩として、日本大学芸術学部映画学科では、カットアウト人形を使用した歩きのアニメーション制作課題を課している。具体的には、人形の体の部位と関節の数を指定し、人形を制作。カメラの固定など撮影方法は各自検討し、自宅で行う。完成した動画は、講評会で見ながら問題点を指摘し、何度か作り直す。といったものである。
 本研究では、こうして制作された作品の動きについて、制作者である学生に自身が作ろうとした(頭に思い描いていた)作品の動き、造形と、完成した作品のそれとの齟齬の程度をマグニチュード推定法で回答してもらった。この回答をもとに実習課題の教育的効果と意義を検討したい。
 また、こうした課題作品を対象として、その動きに対する印象評定調査も併せて行った。芸術系ではない学生を評価者とし、先行研究の評定項目(25の形容詞)を用いて調査を行ったが、評定結果に先行研究で確認されたような明確な因子構造は確認されなかった。しかしながら、各作品の評定をプロフィール化したところ、特徴的なパターンがみられた。研究会では、この調査研究の結果も併せて報告したい。

3:00~3:25
表題「様々な顔の印象評価とアニメーションへの応用可能性」
渡邊伸行氏(金沢工業大)
要旨
 セマンティック・ディファレンシャル(SD)法を用いた、様々な顔の印象評価の研究を中心に紹介する。具体的には、ヴィジュアル系バンドのメイク、女性の上目遣いや伏し目、ヘアカラーの研究などを紹介する。ヴィジュアル系バンドのメイクの研究では、ファンの間で定義されているバンドのカテゴリーごとに、そのバンドメンバーの顔のメイクやヘアカラーから受ける印象が異なることが示唆された。女性の上目遣いや伏し目の研究では、上目遣いは社交性や魅力の度合いが高く、伏し目の研究では逆に社交性も魅力も低く評価されることが示された。ヘアカラーの研究では、4色のヘアカラーと、髪の長さや前髪を組み合わせた女性の顔画像の印象評価実験を行った結果、ヘアカラーによって顔の印象が左右される可能性が示された。以上の研究によって得られた知見が、アニメーション研究にどのように役立つか議論したい。

3:30~3:55
表題「萌える顔、萌える声の設計に関する研究」
山田真司氏(金沢工業大学)
要旨
 最近のアニメ、ゲームにおいて「萌える」キャラクタが多く用いられている。本研究ではまず、ゲームのキャラクタクリエイト機能を用いて様々な顔を合成し、これらを刺激としてSD法による印象評定実験を行った。その結果、「萌える」顔は、美しく、子供っぽい顔であり、「美人」顔は、美しく、大人っぽい顔であることが明らかになった。さらにこれらの結果から、「萌える」顔を構成するためのサイズ比を明らかにした。次に、女性声優5人がそれぞれ100通りの状況設定の下で発話した「おにいちゃん」という音声を用いて、印象評定実験を行った。その結果、「快さ」と「興奮度」の因子が抽出され、萌える声は快さ高い必要があることが分かった。また、萌える声は、基本周波数、スペクトル重心ともに高く、発話者のサイズが小さい、すなわち幼いことを示唆する情報を持っていることが明らかになった。

第2部 アニメーション研究会:持永只仁研究特集(4:10~6:00)

4:10~5:00
表題「持永只仁のアニメーション」
横田正夫会員(日本大学)
要旨
 持永只仁が日本で監督した作品は良質な人形アニメーションであり、人間の健全な本性を描こうとする思想に満ちている。そこには人を怒らず、相手の良いところを見出し、それを伸ばそうとする教育者の理想的なあり方が見出せる。たとえば、「瓜子姫とあまのじゃく」では、あまのじゃくは瓜子姫に言われるままに、彼女の仕事を手伝おうとする。仕事をすることを媒介にして、あまのじゃくは人間的な本性を露わにする。このように持永のアニメーションの特質は、あまのじゃくといったように、差別され虐げられかねない対象との間に深い関係を築き、差別が描かれないということである。そうした表現は、持永が中国のアニメーションの仲間との深い交流を背景にしているのであろう。こうした持永の作品は、異なるものへの不寛容が繰り返し苛烈に描かれている現代日本の映像メディアに対して改めて取り組むべき重要なテーマを提起するものであり、現代的な意義が大きいといえる。

5:10~6:00
表題「1955-1963:人形映画製作所とMOMの映画~電通映画社に残された資料を中心に~」
和田敏克氏(東京造形大学)
要旨
 太平洋戦争敗戦後、中国におけるアニメーション映画製作の基盤を築いた持永只仁が帰国したのは1953(昭28)年。その後、国内での自身の本格的な制作活動は1955(昭30)年、元朝日映画社の稲村喜一プロデューサーとともに「人形映画製作所」を設立したことに始まる。その際大きな役割を果たしたのが、電通映画社の小畑敏一であり、雑司ヶ谷にある電通映画社の現像所内に敷地を提供、『瓜子姫とあまのじゃく』をはじめとする児童向け教育映画9作品の製作(教育映画配給社との共同)はもちろん、米ビデオクラフト社からの発注による『ピノキオの冒険』の日本側製作も電通映画社が担当した。またMOMの設立に際しても、田無の特撮スタジオの敷地提供、日米合作『ウィリーマックビーンの魔法の機械』製作など、その関係は続くことになった。昭和30年代を中心とした、日本国内における持永只仁の映画制作を考えるとき、果たして電通映画社は、どのようなきっかけで関わり、具体的にどのような役割を果たしていたのか。現・電通テックの倉庫に残されていた小畑敏一の資料をもとに、当時の状況を読み解く試みをここから開始してみたいと思う。

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■参加申込み
どなたでも参加できますが、参加人数把握のため3月5日(土)までに申込み頂けますと助かります。

■参加申込み・問合せ先
日本大学文理学部心理学研究室(横田正夫)
E-mail: myokota@chs.nihon-u.ac.jp
Tel: 03-5317-9720 Fax: 03-5317-9427
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以上
日本映像学会
映像心理学研究会・アニメーション研究会
代表 横田正夫
〒156-8550
東京都世田谷区桜上水3-25-40
日本大学文理学部心理学研究室内