2022/06/01 関西支部
日本映像学会関西支部第94回研究会(6月25日)のお知らせ
下記の通り日本映像学会関西支部第94回研究会を関西学院大学上ヶ原キャンパスにて開催いたします。多くの方の参加をお待ちしています。
日時:2022年6月25日(土)午後2時より4時頃まで。
研究発表1:前近代の放浪者—1970年代の瞽女映画
発表者:京都大学大学院 人間・環境学研究科博士前期課程 内山翔太会員
要旨:
本発表は、盲目の女性の旅芸人である瞽女を描いた、映画『津軽じょんがら節』(斎藤耕一監督、1973年)と『はなれ瞽女おりん』(篠田正浩監督、1977年)について論じるものである。瞽女の活動は近世中期から明治にかけて全盛を迎え、そののち衰退したが、1970年代には再び、消滅の危機にある瞽女に注目が集まっていた。本発表では、上記2つの作品をこうした「瞽女ブーム」のなかに位置づける。その上で、まず、作品公開時の製作者や批評家、観客の言説を調査することで、当時、瞽女のなかに日本の起源が見出だされていたことを指摘する。作品に関する当時の言説は、かつての日本の文化が失われつつあることを悲観するとともに、消滅の危機にあった瞽女を消えていく日本文化と重ね合わせていた。過去に存在した文化を懐かしみ、その喪失を嘆く態度は、とりわけ『はなれ瞽女おりん』において、作品のメロドラマ性となって表れている。次に、本発表の後半では、なぜ日本の起源が瞽女に求められていたのかについて考察する。
1950年代から1970年代の日本では、高度成長にともなって都市が急速に拡大し、農村から都市部へと大量の人口が流入していた。流入した人々の多くは都市においても安定した地位になく、故郷を失ってさまよう、いわば放浪する人々であった。ここでは、特に『津軽じょんがら節』のテクストを分析することによって、こうした高度成長期の放浪する人々こそ、瞽女に日本の起源を求める主体であったことを指摘する。以上を踏まえ、本発表の最後では、1970年代に製作されたこれらの作品において、瞽女が日本の起源として見出だされた主な理由は、高度成長期の放浪する人々が、前近代のやはり放浪する人々であった瞽女に、自らを重ね合わせていたからだと結論する。
研究発表2:アニメーションの疑似知覚(ver.2)―パペットとCGIからみた物質性による意識構成の違い
発表者:関西学院大学文学研究科博士課程後期課程 洪愷均(ハン・カイチュン)会員
要旨:
パペットアニメーションとCGアニメーションの美学的な相違を探求する際に、多くの人々は主に実体の有無に注目し、それによる実体性と認識性の相違を中心に説明する傾向が強かった。例えば、ロシャ(Rocha, E. 2012)も制作時にメディアに残された指紋や動きの不自然さなどのアニメーターの行為と結びついた物理的な痕跡の働きを焦点とし、それによる「触感(sense of touch)」と「触覚性(tactility)」からパペットアニメーションのほうがより強い体感(embodied experience)をもたらせると主張した。また、アニメーターのアルベルト(Alberto, C. 2019)はパペットアニメーションの魅力を「アニメーションとフィギュアの間で行われるライブプレイによる、数時間かけて施された様々なディテールだ」と述べた。
しかし、日進月步の機械的進化につれ、現在のCGI技術において、実体性はおろか物体表面の紋や毛などの細かいディテールもすべでリアルに再現できるようになっている。また、パペットにディテールが見えると言っても、決して誰もがその触感に気づいたり、そのことを反省しようとしたりはしない。さらに、パペットとCGIの双方に共通してコマ数を減らすことにより、その動きは不自然さという基準で統一される。したがって、互いの美学的な比較にはもはやより一層基盤的かつ概念的な新しい基準点が必要とされる。それを見極めるために、本発表ではサルトルの唱えた「イマジネール」及びキム・ジュニアンの「観賞装置」という主張を中心において、パペットとCGIのそれぞれの物質性について存在論的な角度から着目し、観賞時における観客の異なる意識構成とその原因について再考察を行う。
会場:関西学院大学上ケ原キャンパス F号館203教室
交通アクセス:https://www.kwansei.ac.jp/access/uegahara
キャンパスマップ:https://www.kwansei.ac.jp/cms/kwansei/pdf/about/campus/nuc2022.pdf
※当日、F号館1階は別学会の研究会が開かれております。日本映像学会関西支部研究発表会場はF号館2階になりますのでご注意ください。
日本映像学会関西支部事務局
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