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関西支部第101回研究会【12月21日】及び関西支部総会

2024/11/26 関西支部

日本映像学会関西支部第101回研究会(12月21日)および関西支部総会のお知らせ

下記の通り日本映像学会関西支部第101回研究会を開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2024年12月21日(土)午後2時00分より4時30分頃まで。
会場:大阪芸術大学7号館51教室

研究発表1:鈴木清順問題共闘会議再訪―自主上映史の視座から―
発表者:田中晋平会員 日本大学研究員 
要旨:
1968年、日活による鈴木清順監督の突然の契約打ち切りと、東京のシネクラブ研究会が予定していた同監督の特集上映に対する作品貸し出し拒否に端を発して抗議活動が起き、〈鈴木清順問題共闘会議〉が結成された。鈴木清順による日活との裁判闘争の支援と作品封鎖の解除を求めたその活動に関して、本発表では、主に自主上映史の視座からの再考を試みる。〈清順共闘〉に関連する資料に基づき、インディペンデントな上映活動の担う可能性が、当該期においてどのように捉えられていたかを検討するのが狙いである。
 1960年代は日本における映画産業の衰退が進んだ時代だが、戦後の非商業的上映活動の転換期としても、先行研究で位置付けられてきた。製作・配給・興行のシステムを築いてきた旧来の映画産業側に対し、勃興した新たな映画運動、すなわち観たい映画を自らの手で上映する自主上映グループやシネクラブの活動が衝突して生じた鈴木清順問題は、時代を象徴する出来事としても事後的に把握されてきた。『鈴木清順全映画』(立風書房、1986年)で上野昻志は、「それまでの、作る側中心にしか展開しなかった映画運動を、見る側へ開いてゆく大きな力になった」(同書、224頁)とシネクラブ研究会などの活動を位置付け、〈清順共闘〉について論じている。
 ただし、当時の〈清順共闘〉での討論記録や映画雑誌に掲載された関連する論考や座談会、新聞記事などを確認すると、鈴木清順の映画を観るための上映活動のみが議論されていたわけでは全くない。映画産業内の労働者の権利や著作権の問題、五社体制のオルタナティブとなる映画の創造と批評運動のありかたなど、さまざまな論点が噴出していた。そのため、「観客の“映画を観る自由”」、「〈観る権利〉を確立せよ!」といった表現は散見されるものの、自主上映の活動の可能性や意義について議論が尽くされていたとは、むしろ言い難い面がある。しかし、〈清順共闘〉で中核的役割を果たした大島渚に対し、その政治主義的側面を批判した上で、映画運動/観客運動としての固有の問題を探った松本俊夫のテキストなど、注目すべき論点は提示されていた。自主上映史の視座から整理すれば、政治運動に従属する「運動の映画」ではなく、(鈴木清順の作品含め)映画と観客の関係から形成されるべき「映画の運動」として自主上映を捉える主張、あるいはその萌芽を認めることができる。こうした論点を、〈清順共闘〉に関連する言説から掘り起こす作業を進め、作品封鎖に対抗し、観る権利を唱えた上映活動への認識、その可能性の一端に迫りたい。

研究発表2:『トーク・トゥ・ハー』の劇中映画『縮みゆく男』とクールベの『世界の起源』
発表者:伊集院敬行会員 島根大学
要旨:
ペドロ・アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』(2002)には『縮みゆく男』という劇中映画が登場する。この映画は主人公ベニグノが見た映画で、劇中、彼はその内容を語りながら眠れる美女アリシアをマッサージしている。しかし、そうしているうちにベニグノは興奮し、ついに超えてはいけない一線を越えてしまう。だがそれは画面に映し出されることはない。なぜならこの『縮みゆく恋人』のある場面がベニグノの卑劣な行為を覆い隠すからである。その場面とは、恋人の科学者アンパロの作った痩せ薬のせいでペニスサイズにまで縮んでしまったアルフレドが、眠っている彼女の膣に滑り込んでいくというものである。
 『トーク・トゥ・ハー』が論じられるとき、一般にこのシーンは、「トーク・トウ・ハー」というセリフとともに、アリシアをレイプしたベニグノに対して我々鑑賞者を同情と反感、好意と嫌悪、賞賛と非難に引き裂く仕掛けとして考察されることが多い。
 だが、精神分析的な視点で見るならこのシーンは、フロイトが「快感原則の彼岸」(1920)で論じたエロスとタナトスの分かちがたい関係を見ることもできる。そしてそうだとすれば、劇中映画でアルフレドが眠っているアンパロの膣に潜り込むときの構図が、クールベの『世界の起源』(1866)を思わせるものであることは重要である。なぜなら『世界の起源』の最後の所有者はジャック・ラカンであり、彼が『世界の起源』を、アンドレ・マッソンがそれをもとにして描いた風景画で覆い隠したことは、『精神分析の四基本概念』で論じられる「眼差し」を説明する図を連想せるからである。そこで本発表は『トーク・トゥ・ハー』の精神分析的解釈を通し、『縮みゆく恋人』もまた、ラカンの装置におけるマッソンの線画のように、「眼差し」を隠していることを明らかにする。

研究会会場:大阪芸術大学7号館51教室

・研究会終了後、同会場にて2024年度日本映像学会関西支部総会を行います。4時半頃開始予定。

交通アクセス:https://www.osaka-geidai.ac.jp/guide/access
近鉄南大阪線「喜志駅」下車 大阪芸術大学スクールバス(無料・随時発車)

構内マップ:https://www.osaka-geidai.ac.jp/guide/access/campus

日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内(大橋)
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
email:eizouosaka-geidai.ac.jp