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関西支部第104回研究会【12月14日】および関西支部総会

2025/11/20 関西支部

日本映像学会関西支部第104回研究会(12月14日)および関西支部総会のお知らせ

下記の通り日本映像学会関西支部第104回研究会を開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2025年12月14日(日)午後2時00分より4時30分頃まで。
会場:京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1B05

研究発表1:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画における作家の反映
        ―『聖なるパン助に注意』(1970)と集団制作を通じて
発表者:角田哲史会員 京都大学大学院 人間・環境学研究科 修士課程
要旨:
本発表では、西ドイツの映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー『聖なるパン助に注意』(1970)を論じることで、ファスビンダーの作家論を再考する。トーマス・エルセッサーやティモシー・コリガンなど英語圏のニュー・ジャーマン・シネマ研究者達は、キャリア後期の西ドイツ三部作を主な分析対象とし、作家の戦後ドイツに対する認識を読解することで作家論を展開した。しかしファスビンダーは一貫して作品に自身の生や思想を色濃く反映しており、そこから浮かび上がる作家像も「戦後ドイツ」という枠組みに留まらない。この問題意識を元に、ファスビンダーが当時主催していた劇団アンチテアーターでの映画制作の体験を題材にした『聖なるパン助に注意』を、キャリア初期における作家の自己認識の反映として論じる。この作業を通じてファスビンダーの作家論を再分節化する端緒を提示することが発表目的である。
 まず批評言説を整理することで、アンチテアーターが当時の西ドイツのアートシーンにおいていかに位置付けられていたのかを明らかにする。次に同時代の批評言説の文脈におけるファスビンダーの演出家/映画監督としての自己認識が、いかに作品に反映されているのかをテクスト分析を通じて検討する。とりわけ撮影現場を舞台にしながらも、ファスビンダー本人が監督ではなく現場主任を演じている点、しかし監督を演じるルー・カステルにはファスビンダー本人を思わせるイメージが付与されている点を、本作における作家性の反映の特徴として論じる。さらにこれらの特徴を、フェリーニの『8 1/2』に代表されるいわゆるモダニズム映画における監督の自己表象の研究と比較することで、『聖なるパン助に注意』におけるファスビンダーの自己反映は、近代的な映画作家としての心理や内面の反映ではなく、劇団員達との集団的な作品の制作過程自体の反映であると主張する。

研究発表2:ギー・ドゥボールの映画におけるニュース映画の「転用」 ­−60年代初頭までの作品を中心に−
発表者:武本彩子会員 大阪大学大学院人文学研究科博士後期課程
要旨:
高度資本主義社会を「スペクタクル」という概念を軸に批判した著作『スペクタクルの社会』(1967)や、前衛芸術家や政治活動家らによって結成され、芸術や社会・政治に対する批評を繰り広げたグループ、「シチュアシオニスト・インターナショナル」の中心人物として知られるギー・ドゥボール(Guy Debord、1931-1994)は、映画作家として、生涯で6本の映画を監督した。ドゥボールの映画の大部分は、既存の映像や図像などの要素を元の文脈から切り離して再使用する「転用(détournement)」と名付けられた手法で構成される。本発表では、ドゥボールがこの手法を用い始めた1950年代〜60年代初頭までに作られた映画を対象に、作中で多用されたニュース映画の「転用」に焦点を当てる。当時のフランスにおいて主要な報道メディアであったニュース映画の使用からは、国際的な情勢に対するドゥボールの関心の高さが読み取れるが、これまでの研究では使用されたニュース映画が特定されてこなかった。本研究は、主に使用された映画のオリジナル版とその報道内容を特定し、作中での使用法と比較することによって、「転用」に込められた編集意図と政治批評を読み解くことを試みるものである。
 本発表で中心的に取り上げる作品『かなり短い時間単位内の何人かの人物の通過について』(1959)と『分離の批判』(1961)の制作時期は、フランスがアルジェリア独立戦争に直面していた時期に当たっている。作中で多用された、各国の街頭で民衆と警察・軍が衝突するデモの報道映像や、1960年に独立したコンゴ共和国の動乱を報じる映像からは、当時報道が規制されていたアルジェリアでのフランス軍による暴力を想像させるとともに、アフリカ諸国の独立後もなお続く植民地主義に対するドゥボールの懸念が具現化されていると考えられる。

研究会会場:会場:京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1B05

研究会終了後、同会場にて2025年度日本映像学会関西支部総会を行います。4時半頃開始予定。

構内マップ:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r-ys
(地図の84の建物地下)

また、懇親会を周辺で開く予定です。
ご出席の方には、googleフォームに今月末までにご記入いただくよう、ご連絡いただければ幸いです。
https://forms.gle/teowmu9tcgH7wF5H9

日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内(大橋)
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
email:eizouosaka-geidai.ac.jp