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関西支部第98回研究会【12月23日】及び関西支部総会

2023/12/04 関西支部

日本映像学会関西支部第98回研究会(12月23日)および関西支部総会のお知らせ

下記の通り日本映像学会関西支部第98回研究会を開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2023年12月23日(土)午後2時00分より4時30分頃まで。
会場:神戸女学院大学 文学館2階 L-28教室

研究発表1:「芸術的フランス映画」、あるいは「フランスの芸術映画」のデータ分析
―Cahiers du cinéma誌にある46作品を対象にして―
発表者:畔堂洋一会員 大阪公立大学非常勤講師
要旨:
本発表では、「芸術的フランス映画」、あるいは「フランスの芸術映画」とは、具体的にどのような映画であるのかということを、データサイエンスの視点から分析していくことを目標とする。本発表の意義を2点述べておく。1点目は、データサイエンスの視点から「芸術的」であると表されやすいフランス映画の解像度を上げることによって、映画作品を構成する一要素として、漠然として漂っている「芸術性」を明確にしていく一助になると考えられる。2点目は、映画にある「芸術性」を明確にすることにより、日本の映画支援、とりわけ「芸術性」を打ち出そうとする映画に対する支援の方針を決定づける雛形になりうることである。日本の映画支援といえば、映画監督の是枝裕和らにより「日本版CNCの設立を求める会」が2022年に立ち上げられた。「日本版CNC」は、フランスの映画産業支援機関であるCNCをモデルに構想されており、商業性に劣る芸術映画の製作、普及にも広く支援の網が張られるようなシステムを取り入れようとしている。本発表は、「日本版CNC」を設立するにあたって、先に触れたように、芸術映画に対する支援のありかたに対する一つのモデルを示すことができる。
分析について簡単に説明すると、フランスの映画批評サイト「AlloCiné」に掲載されている、それぞれの作品によせられたコメント(全5463コメント)をスクレイピングにより集めてコーパスを作成し、フリーソフトウェア「KHcoder」を使用してテキストマイニングを実施した。そして、次の頁に掲載している図1(【共起ネットワーク図】抽出語)、と図2(【共起ネットワーク図】抽出語x外部変数〈ランク〉)を得ることができた。図1は、コーパスから抽出した100語から1000語の名詞(N:Nom)と形容詞(AQ:Adjectif Qualicatif)から作成したものであり、図2は、図1に外部変数(ランク:映画評価にかかる星0.5から5.0)をかけあわせて作成したものである。本発表は、図1と図2について解釈していくことが主な内容となる。具体的には、図1に関しては、クラスターの分類を通してコーパス全体の特徴を概観し、図2に関しては、外部変数(ランク)を導入したことで変化した共起ネットワーク図から、特徴的なクラスター、あるいは抽出語をとりあげ、分析を深めていく。分析対象の選定基準、「芸術的フランス映画」と「フランスの芸術映画」という用語の説明、個々の具体的な映画作品の情報などの前提事項についても、可能な限り述べていく。

研究発表2:映画『理性に還る』に見るブリコラージュ的制作方法とオブジェ性
発表者:大橋勝会員 大阪芸術大学映像学科
要旨:
マン・レイの映画作品Le Retour à la Raison(理性に還る)が公開されて100年が経つ。ダダの示威行動「髭の生えた心臓の夕べ」(1923年7月6日、パリ、テアトル・ミシェル)で上映するため、トリスタン・ツァラに請われて本作は制作される。ツァラはマン・レイの映画上映をクレジットしたイヴェント告知のチラシを先に印刷してしまっており、催し間近で作品依頼をする。マン・レイはこれに応えるため、撮影を必要としないレイヨグラフの手法を映画フィルムに応用する。これに若干の撮影済みフィルムを繋ぎ合わせて、映画『理性に還る』はイヴェントに間に合わせて作られた。発表者は本作の特徴をブリコラージュと捉え、その内容の精査を試みる。
ブリコラージュ(bricolage)はフランス語動詞「bricoler」の名詞形で、「ありあわせのものを寄せ集めて作る」「繕う」などの意があり、それを行なう者を「bricoleur」という。合理的・計画的な近代西洋的思考法による生産と異なるこれを、クロード・レヴィ=ストロースは『野生の思考』において「具体の科学」と指摘した。
合目的の作為を否定するダダの姿勢と、ブリコラージュの思考法には親和性があり、ファウンド・オブジェという形態はそのことを明快に示している。『理性に還る』はダダの無目的な発想と、予期せぬ事態に対処するブリコラージュ的思考の融合であることを確認する。

研究会会場:神戸女学院大学 文学館2階 L-28教室

・研究会終了後、同会場にて2023年度日本映像学会関西支部総会を行います。4時半頃開始予定。

交通アクセス:https://www.kobe-c.ac.jp/access
※最寄駅は阪急今津線「門戸厄神」駅です。駅から大学正門まで徒歩で約8分、正門を入ってから急な坂道を約8分登ります。
※タクシーで来校される場合は、阪急神戸線「西宮北口」駅からご乗車のうえ、大学の「西門」から入構し、車道用の坂道を登りきったところで降車してください。
※自家用車の乗り入れはできません。自家用車で来校される場合は近隣のコインパーキングをご利用ください。

構内マップ:https://www.kobe-c.ac.jp/campuslife/map
※会場のある「文学館」はマップの「13」の建物です。

日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内(大橋)
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
email:eizouosaka-geidai.ac.jp