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関西支部第100回研究会【7月6日】

2024/06/14 関西支部

日本映像学会関西支部第100回研究会(7月6日)

下記の通り日本映像学会関西支部第100回研究会を開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2024年7月6日(土)午後2時より4時頃まで
会場:甲南女子大学

研究発表1:ミア・ハンセン=ラヴの初期長編三作品における家の表象
発表者:中村莉菜会員 大阪大学大学院 人文学研究科 芸術学専攻 博士後期課程
要旨:
フランス人女性映画監督のミア・ハンセン=ラヴ(Mia Hansen-Løve , 1981-)は、現代フランスで活躍する映画監督の一人である。彼女の監督した初期の長編三作品『すべてが許される』(2007)、『あの夏の子供たち』(2009)、『グッバイ・ファーストラブ』(2011)は、少女が中心的な役割を担う点が共通しており、三部作として語られることが多い。ハンセン=ラヴ自身もこの三作品を三部作だと認めているが具体的な理由は明らかにしていない。先行研究では、この三作品について、少女とその家族に焦点を当てて分析がなされているが、物語の主な舞台となっている家についての言及は少ない。そこで、本発表では作品内における家の表象が、登場人物の心情や人物同士の人間関係をどのように表現しているかに着目し分析する。
 まず、長編第一作目の『すべてが許される』では、家の表象の変化や食卓のシーンが、人物の関係性の変化や感情の相違を示していることを指摘する。次に、長編二作目の『あの夏の子供たち』では、家の表象の変化と心理的状況の関係性を確認し、食卓が「家族」そのものの偶然性を示唆していると論じる。最後に、『グッバイ・ファーストラブ』では、主人公の設計した建築物に心情が反映されていることを示し、作中全体で複数回登場する「夢の家」が、最終的に三部作の要としての役割を果たすと結論づける。

研究発表2:研究発表:映画を逆撫でに読む——「火垂るの墓」
発表者:甲南女子大学 横濱雄二会員
要旨:
野坂昭如の短編小説「火垂るの墓」は、劇場公開作品に限っても高畑勲監督のアニメーション(1988年、新潮社・スタジオジブリ)と日向寺太郎監督による実写映画(2008年、「火垂るの墓」パートナーズ)の二回、映画化がなされている。
 歴史社会学者の土屋敦は当事者への聞き取り調査をもとにした著書『「戦争孤児」を生きる』(青弓社、2021年)のなかでアニメーションをとりあげ「「戦争孤児」たちの生活実態に近い場面が多く描かれた映画である」と述べる。一方、野坂は空襲で養父を失い妹と西宮の知人宅に身を寄せたが、養母は負傷で入退院の後に祖母と暮らしており(『新編「終戦日記」を読む』中公文庫、2020年)、その意味で孤児ではない。また、身を寄せた知人の女性を誇張的に悪く書いたとも言明している(「アニメ恐るべし」、『小説新潮』1987年9月号)。これらをみると、「火垂るの墓」の主人公の戦争孤児としての姿は、そのモデルが戦争孤児であったという歴史的事実によるものではない。
 いま論者は土屋が丹念にたどった戦争孤児の姿を否定するものではない。考察すべきは事実/虚構の二項対立を超えた表象体系のあり方である。ここで参考となるのは、四方田犬彦と田中純の映画論である。四方田は映画の権能を「複数の潜在的な力の束として多元的に解釈し直すこと」と述べ(『テロルと映画』中公新書、2015年)、田中はそれを「歴史の逆撫で」であり、「過去を局所的に未決定状態へと逆戻りさせ、「原—歴史」を露呈させること」であると説く(『イメージの記憶』東京大学出版会、2022年)。
 これらを踏まえると、「火垂るの墓」には戦争孤児ではなかったモデルの姿が潜在しているのと同様に、直接のモデルではないあまたの戦争孤児の姿も潜在していると見ることができる。映画が複数の潜在的な力の束としてとらえ、そのなかにある未決定なもの、決定的に描かれてはいないが潜在しているものをいかに触知するかが肝要である。本発表では、以上の見通しに基づき「火垂るの墓」の映画化作品をとりあげて検討したい。

研究会会場:甲南女子大学 10号館1034教室
交通アクセス https://www.konan-wu.ac.jp/access/
* 土日はスクールバスの運行はありません 
JR「甲南山手」駅より徒歩(約10分)または阪急「岡本」駅よりタクシーでおいで下さい。
キャンパスマップ https://www.konan-wu.ac.jp/institution/map/
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