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関西支部第89回研究会【12月26日】

2020/12/10 関西支部

日本映像学会関西支部第89回研究会(12月26日)

下記の通り日本映像学会関西支部第89回研究会をリモート(Zoom)にて開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2020年12月26日(土)午後2時より4時頃まで。

研究発表1:新中国映画における満映の影響~映画『寂静の山林』を中心に~
発表者:神戸学院大学人文学部(博士課程) 張少博
要旨:
 近代中国では満洲映画は植民地主義の文化機関として、製作された映画は文化侵略道具の称号と理解されており、この観点は中国映画史研究者の間では共通認識となってる。中国における満映研究は初期、すべての研究は被植民者の立場に立って満映を批判するものだったが2005年、中国百年映画史学会は映画史の観点を修正し、大中国映画史(内地、台湾、香港)を抱合するスローガンを打ち出した。このような環境で、中国の満映研究は次第にマルクス主義唯物論を用いて満映を客観的に見るようになって、満映と中国映画史の関連を検討することは、中国の満映研究に欠かせない新たな課題となっている。
1957年に長春電影制片廠が公開した『寂静的山林』は、満映が新中国映画とどのような関連にあるのかを検討するための最適な突破口の一つであると考えられる。俳優陣から見ると、この映画には浦克、白玫、鄭暁君、侯健夫、夏佩傑などの満映出身の映画人が出演しているし、さらに監督の朱文順、撮影の包傑も満映の出身である。一方、映画の内容から見れば、『寂静的山林』には満洲映画の特徴と満州で流行した「実、奇、暴、色」の文化要素を持っている。ここに当時の延安派監督が作った映画との差異が容易に見出せる。この点は中国建国初期の映画が満州文化の影響を受けた証拠の一つである。
本発表は最新の中国満映研究資料『吉林省社会科学基金項目“満映”及其文化侵略史料在華保存状况調査ー満映影評史料』(2019年12月)及び満映の付属機構である満州雑誌社が創刊し、満州で最大の発行部数を誇った大衆文学雑誌『麒麟』を用いて、満州映画の特徴と満州で流行した娯楽文化を考察しながら、満映出身の中国人監督及び俳優が共同して完成した『寂静の山林』を詳しく分析し、満映が新中国初期の映画にどのような影響を与えたのか、満州で流行した娯楽文化とはなにかなどの問題に答えようとするものである。

研究発表2:母性幻想、同性愛、〈クィア〉な女優―戦後文芸映画『挽歌』、『女であること』をめぐって
発表者:大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程 徐玉会員
要旨:
 戦後の文芸映画において特徴的なのは、女性の生き方に重点を置いている点である。当時の文芸映画は主要な女性映画の型のひとつと見なされ、そこで描かれる女性の主体的な恋愛は、当時の女性観客の期待を満たす重要な主題として多くの作品で取り入れられた。『挽歌』(五所平之助1957)(原田康子原作)、『女であること』(川島雄三1958)(川端康成原作)の映画化もそうした流れのなかにある。
 『挽歌』と『女であること』は、物語内容においても配役においても、類似したところがある。『挽歌』では、左腕が不自由な少女怜子(久我美子)が、妻子のある建築家桂木(森雅之)に好奇心を抱き、桂木と関係を持つようになる。しかし、母親がいない怜子は、桂木夫人あき子(高峰三枝子)の優しさに癒されつつ、夫人のことも慕うようになる。『女であること』では、母との関係がうまくいかず、家出した少女さかえ(久我美子)が憧れていた母の友人市子(原節子)のところに飛び込み、「小母さまの子にしてほしい」と甘えて世話してもらうが、やがて市子の夫佐山貞次(森雅之)にも好意を持つようになり、佐山に接近する。
 このように、いずれの作品においても、一種の疑似家族関係―特に怜子とあき子、さかえと市子、という〈母娘〉関係―が構築されると言える。しかしながら、女性の欲望や女性の恋愛が前景化されているとはいえ、これらの映画については、従来「姦通」や三角関係に目が奪われがちで、同性愛的な要素も含まれる女性同士の関係に注目する研究は少なかった。本発表は、怜子とあき子、市子とさかえの関係を中心に、カーヤ・シルバーマンの「同性愛的母性幻想」(Silverman 1988)やパトリシア・ホワイトの「レズビアン表象可能性」(White 1999)といった概念を援用しながら、両作品における女性の欲望のあり方を考察する。また、久我美子、原節子といった女優に注目し、女優のスター・ペルソナがもつクィアの可能性がこれらの作品にもたらす意味について探りたい。

研究会終了後に関西支部総会を引き続きZoomにて開催予定です。※関西支部会員のみ対象。

参加希望の方は前日12月25日(金)までに eizoukansaigmail.com までメールをお送り下さい。メールにはご所属・氏名のみ記入いただければ結構です。追ってZoomの招待メールを返送いたします。

日本映像学会関西支部事務局
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