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関西支部第90回研究会【3月27日】

2021/03/16 関西支部

日本映像学会関西支部第90回研究会(3月27日)

下記の通り日本映像学会関西支部第90回研究会をリモート(Zoom)にて開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2021年3月27日(土)午後2時より4時頃まで。

研究発表1:ヒトの眼・機械の「眼」に対して「情報源」として機能するフラットネス
発表者:甲南女子大学 水野勝仁会員
要旨:
 Photoshopで加工した痕跡を大胆に残す作品を制作するルーカス・ブレイロックは、写真について以下のように書いている。
写真は、すべてそれらのフラットネスのために、純粋に混成の空間を示唆する:それは二次元と三次元、表面平面とそのなかの空間、それだけでなく、抑制、魔術、死、歴史、目撃とほんのいくつかあげてみただけだが、多くのメタファーとなっている。(*1)

 ブレイロックは印画紙にプリントされた写真であれ、ディスプレイに表示された画像であれ、それらがすべて二次元平面でイメージを提示し、そのイメージから三次元空間が立ち上がるという写真の前提を端的に指摘している。しかし、私は二次元平面でもなく三次元空間でもない「フラットネス(=平坦さ・単調さ)」という言葉に奇妙な感じを持ち、この言葉を用いた「すべてそれらのフラットネスのために〔for all their flatness〕」という一句に惹かれ、ブレイロックの作品の考察を行ってきた。そこから、写真というものが提示される紙やディスプレイといった二次元平面、そして、写真が見る者の意識に否応なく立ち上げる三次元空間、このいずれもが含まれる写真・画像のフラットネスとは次元を持たない「情報源」であると考えるに至った。カメラがコンピュータと結びつき、写真が画像として幾何学的な要素は一切持たない色情報であるピクセルの制御によって、ディスプレイに提示されたときに、写真・画像のフラットネスとは、ヒトの眼・機械の「眼」に対して「情報源」であることを明確に示したのである。
 ブレイロックの作品は写真・画像のフラットネスを情報源と見なすがゆえに、「二次元と三次元、表面平面とそのなかの空間」からはみ出していくような奇妙さを示しているのではないだろうか。その奇妙さは、ブレイロックが写真の問題としてきた二次元平面と三次元空間との幾何学的関係を意識しつつ、コンピュータの「接続の論理」を具現化するものとして、PhotoshopやARを使い、ピクセルとその先にある情報源そのものの情報を選択・操作して、平面と空間とが適切に立ち上がることないように色情報の集合をつくっているからだと考えられる、ということを発表していきたい。
*1 Lucas Blalock, ‘DRAWING MACHINE’, “Foam Magazine #38: Under Construction”, 2014, p. 208.

研究発表2:メアリー・エレン・ビュートの抽象映画作品におけるヨーゼフ・シリンガーの芸術理論の影響
発表者:大阪芸術大学 大橋勝会員
要旨:
  メアリー・エレン・ビュート/Mary Ellen Bute(1906-1983、アメリカの映画作家、美術家)は、自らの音楽体験を視覚的に表現するという目標のため、様々なメディア(絵画、照明、カラーオルガンなど)を遍歴したのち、サウンド映画に到達する。この間、トマス・ウィルフレッドやレフ・テルミンらとの重要な出会いがあり、特にロシアの科学者・作曲家ヨーゼフ・シリンガーの大きな影響を受けている。シリンガーは後のバークレー・メソッド、コード進行の元になる作曲理論を考案した人物で、芸術制作に数学的方法論を持ち込もうとした。特に人間の五感の順列組合せに対応する芸術形式を考察しており、その理論は大著The Mathematical Basis of the Arts(芸術の数学的基礎)(1943)にまとめられている。本書第三部5章Production of combined art(複合芸術の制作)では視覚と聴覚の相関関係が示唆されており、音楽を伴う抽象アニメーションが例として挙げられている。
 ビュートの映画作品は、その始まりにおいて、シリンガー理論の実践という側面がある。映画第1作であるSynchromy(シンクロミー)(1932)は、シリンガー・システムによる幾何学的パターンとシリンガー作曲の曲を組み合わせたサウンド映画、抽象アニメーションであったが完成には至っていない。その後、アニメーションと実写の折衷的な技法と既存のクラシック音楽を組み合わせた抽象映画Rhythm in Light(光のリズム)(1934)、Synchromy no.2(シンクロミー2番)(1935)を完成させているが、シリンガーの芸術理論をその基盤に置いている。
本研究発表では、メアリー・エレン・ビュートの初期作品について、ヨーゼフ・シリンガーの芸術理論との関連を確認し、その上で今日のメディアアート的視点からビュート作品とシリンガー理論の再評価を試みる。

参加希望の方は前日3月26日(金)までに eizoukansaigmail.com までメールをお送り下さい。メールにはご所属・氏名のみ記入いただければ結構です。追ってZoomの招待メールを返送いたします。

日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内
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