日本映像学会第45回大会ーご挨拶
会期:2019年6月1日[土]、2日[日]

ノスタルジーのゆくえ
大会実行委員長 阿部宏慈
 来年(2019年)6月1日(土)、2日(日)に山形大学で開催予定の第45回日本映像学会のテーマは、「ポスト・ノスタルジー:映像メディアと記憶の問題」です。多様な映像メディアを横断する映像と記憶の問題を、「ノスタルジー」をキーワードに論じようとするものです。
 映像を取り巻く状況は、今日、多様を極めます。遍在する映像とカメラ(監視カメラやドライブレコーダーからスマートフォンまで)は、映像の時間性にも変化を生じさせつつあります。その一方で、映像的記録は、過ぎ去りつつある現在をたちまち懐かしむべき過去に後退させ、時には倒錯的とも言える心的距離を生じさせるでしょう。それを我々はとりあえず「ノスタルジー」と呼ぶことにしましょう。「ノスタルジー」という概念すらすでに古めかしいものかもしれません。ただそれを批判の対象とするだけでなく、ニュートラルな視点から再考したいと思います。今回のテーマを「ポスト・ノスタルジー」という聞き慣れない言葉にしたのは、(かつての)ノスタルジー以後に来た(そしてこれから来るかもしれない)新たなノスタルジーの地平を模索したいという思いが込められています。大規模な災害、例えば震災の映像がもたらす集団的な記憶の集積であってさえ、ある種の既視感とともに、ノスタルジックな境位へと退引する時、出来事がもたらした傷は、そしてそれを記録した映像のもたらすべき傷は、映像を突き破って鮮血とともに蘇るのでしょうか。
 さて、山形における日本映像学会全国大会の開催は、東北芸術工科大学での第23回大会の開催(1997年)以来22年ぶりのことです。山形市では、30年にわたって山形国際ドキュメンタリー映画祭が開催され、昨年(2017年)10月にはユネスコ創造都市ネットワークへの映画部門における加盟を認められました。その山形において再び本学会の全国大会が開催されることは大きな意義を持つと考えます。
 山形大学では、1994年(平成6年)に当時の人文学部に表象文化論コースを新設し、国立大学としてはかなり早い時期に、映画や漫画、さらにはポップカルチャーなどの文化的事象についての教育・研究をおこなってきました。芸術系の学部とは異なり、本来映像作家として立つことを目的として養成を行っているわけではないのですが、それでも、映画やテレビの現場で活躍したり、あるいは漫画家として活動している卒業生もおります。ここ山形で日本映像学会を開催することができますことは山形大学にとっても大きな喜びであります。ぜひ、多数の会員のご参加を期待いたします。

日本映像学会第45回大会のご案内
大会テーマ「ポスト・ノスタルジー:映像メディアと記憶の問題」
会期 2019年6月1日(土)・2日(日)
会場 山形大学小白川キャンパス
〒990-6560
山形市小白川一丁目4番12号
第45回大会実行委員会 副委員長 大久保清朗 (山形大学)
委員 加藤 到 (東北芸術工科大学)
委員 松村泰三 (東北芸術工科大学)
委員 岡 達也 (東北芸術工科大学)
委員 畑 あゆみ (山形国際ドキュメンタリー映画祭)
委員 村山匡一郎 (山形国際ドキュメンタリー映画祭)
委員 日下部克喜 (山形国際ドキュメンタリー映画祭)
委員 小川直人 (せんだいメディアテーク)
(あべ こうじ/日本映像学会第45回大会実行委員長・山形大学)