日本映像学会第49回大会ーご挨拶
会期:2023年6月10日(土)・11日(日)
第49回日本映像学会全国大会
大会実行委員長 斉藤 綾子

 第49回日本映像学会大会は、来年(2023年)6月10日(土)11日(日)に明治学院大学で開催されます。東京で大会が開かれるのは、2018年の東京工芸大学以来5年ぶりとなります。
明治学院大学では、1990年に美術史学、音楽学、映像芸術学という3つの領域を学べるカリキュラムを特徴とする文学部芸術学科を開設しました。当時、日本において映像・映画研究を専門科目として学べる大学教育機関としては、日本大学芸術学部、大阪芸術大学を始めとする制作系の大学か、早稲田大学文学部の演劇専修が代表的な機関でした。現在では類似の学科も多くありますが、当時では人文学系の大学において芸術科目の中核を成した音楽学や美術史に加えて、映像芸術学を専門に加え、実作や制作を教えるのではなく歴史や批評に主軸を置いた教育を提供する、先駆的ともいえる新設学科となりました。初代は故宇波彰氏と四方田犬彦氏が中心となり先鋭的な教育を展開、毎年シンポジウムや研究会などを開催して精力的に発信してきました。その後、宇波氏の後任として斉藤綾子が、翌年に門間貴志氏が就任すると、フェミニズム理論、日本映画、東アジア映画、ポストコロニアリズム、女優・ジェンダー表象などさまざまなテーマを取り上げて、さらに研究の幅を広げると同時に、映像学会との関わりも生れてきました。その後四方田氏が退職され、ウィーンから日本映画研究者のローランド・ドメーニグ氏(非会員)がスタッフとして加わり、また、映像学会の多くの会員の方たちに非常勤・兼任として教鞭を執っていただいてきました。残念ながら近年はコロナ禍や諸事情でシンポジウムなどの活動が展開できておりませんが、大会の開催校になるのを機に、映像学会の会員だけでなく、研究者が集う場を提供したいと思っております。
昨年の京都大学では、「カメラを持った女–ジェンダー、創造行為、労働」であるテーマとして、作り手としての女性に焦点を当て、非常に刺激的で学びの多い機会を提供してくれました。今大会でも、アクチュアルな課題に向かう姿勢は継続しながらも、切り口を少し変えて、ジェンダー・フェミニズム批評にとって重要な映像研究における女性、情動・身体という理論的な問題系を取り上げ、明治学院大学の映像研究が重要視してきた東アジア圏という地政学的な面と交錯させたテーマにする予定です。さらに、女性作家が作る映像そのものについて考察するとともに、フェミニズム理論という欧米から移植された理論的枠組みが、東アジアというローカルな文脈でどのように言説化され、どのような歴史的変遷を辿ったかという言説史の文脈からも検討したいと考えております。
21世紀の映像を取り巻く環境は20世紀とは大きく異なり、また近年の#MeToo運動の高まりから、映像とジェンダーの関係のありように対する再検討の必要性が求められています。そのような状況で、1970年代から本格化したフェミニズム映画理論も欧米ではさまざまなモデルへと広がり、時代に応じた展開がある一方で、日本では未だにその時代の概念と理解に留まっているという批判もあります。理論は当然ながら時代との関係において、変化し、常に再検討の対象となります。同時に、近代においては挑戦的な理論は常に既存の理論を批判し、超越することで前進するという前提が主流となっていますが、例えば、一つの理論モデルが時代や地域により、どのように受容され、変化していくのか、それは過去のモデルをどのように取り入れ、あるいは脱臼させるかという問題にも関わっています。こうした問題意識も踏まえて、フェミニズム理論の過去と現在、そしてまさにグローバルな状況に直面している東アジアという文脈においてフェミニズム・ジェンダー批評の重要性について実りある議論が展開できたらと願っております。
大会実行委員会は明治学院大学文学部芸術学科の映像芸術学コースで教えている会員と日本大学芸術学部に所属の会員を中心に構成されています。明治学院大学では初の大会開催となるために、また実行委員長が会長を兼ねているという事情もあり、経験豊富な日大芸術学部の会員にサポートしていただくことになりました。
残念ながら来年のこの時期に新型コロナウィルスの感染状況がどのようになっているかはまったく見通しがつきませんが、5年ぶりに東京での開催ということになりますので、基本は対面開催を考えております。どうか、多数の会員の皆さまのご協力とご支持を賜りますようにお願いいたします。