第16回大会[1990年]報告

日本映像学会第16回大会
1990年6月2日‐3日
主催校:東京芸術大学
実行委員長:内山昭太郎

 今回は、未来映像に向けて、ますます緊密になってきた『音楽と映像』が主題です。AV時代は、ソフトと共にあるといわれてから久しいように思われます。『聴く』『視る』から発達して、音声、映像が電気的に処理されることがAVであるとすれば、ハードとソフトがシステム化しない限りメディアにはならないでしょう。AVの可能性が、一方通行にとどまらず、誰にでも楽しめることが、文化的に芸術性、社会性のすべてにおいて期待されるゆえんと思われます。
 最近のAVの普及ぶりは、AVに何を求めて何を楽しむべきかという、自分なりの目標が、はっきり描ける様になったからではないでしょうか。音と映像の善し悪しということが単なるメカニックな、ハード思考の再現性から、その人のもつ感性に訴えるソフト思考に価値基準が移りつつあるように思われます。『音楽と映像』の融合をAV時代からの目で再考してみたい、というのが今回の基本テーマです。

研究発表
小笠原隆夫「映画文献資料調査について」
宇佐美昇三「認識の成長過程を追跡する手段としての映像機器の利用」
山口 泰「テレビCMにおける音記号論の考察」
岡村征夫「映像表現での視点の研究」
中村光一「フェルメールが描いた世界に潜む映画的視覚」
浅井敬三「アメリカのテレビCMにおける音楽と映像」
濱口幸一「「カメレオンマン」のドキュメンタリー映画の手法について」
八文字俊裕「近年、AV共同作品の発展のために」
石原 亘「球の結合として表現された図形の表示の高速化」
豊原正智「映像の技術と再現について」
長 幾朗「デザイン・ソース、美術資料のためのビジュアル・データベースの試み」

講演
篠原資明「映像とメディア」

映像作品展
浅井敬三「1980年代アメリカTVコマーシャル表現トレンド」(25分)
山口勝弘「MEDIA VILLAGE」(5分)
ほしのあきら「お別れする時」(30分)
藤井克美「アジア太平洋博覧会 福岡’89よかトピア」(30分)
浅野良一「神武天皇」(30分)
大津はつね「マルチ・モニターにおけるビデオソフト」(10分)
風間 正「デ・ザイン(KUNREN+5・7・5)」(17分)
宇井朗浩「放課後は踊る」(10分)
黒坂圭太「みみず物語」(15分)
小幡 章「光の国から」創作バレエ 1987(上演)(20分)
土佐尚子「POINTS OF VIEW」(6分)
太田米男「江波獅子舞」(10分)
豊原正智「DIVISION 2」(5分30秒)
平松修治「DHINWALLS」(4分)

展示
竹上正明「音楽をイメージした映像」(レコードジャケット)
吉川信雄「シーラカンスのクリエイティブ」
幸村真佐男「スポット衛星のための3つの点」
脇リギオ「白いゴルフボール フォーマット・グレイバランスシステム」

実験コンサート
「音楽と映像」への提案
東京芸大作曲科チームと視覚デザイン研究室チームによる上映と演奏
南弘明・笠原浩・岩崎真・佐柳祐次・千住明・高橋元・中川善裕・永井俊一・西岡龍彦・布村順一・松尾早人・浜島達也・松本日之春・三好正木。

シンポジウム
「音楽と映像」におけるテクノロジーの接点
伊藤博文・今関あきよし・大川正義・千住明・内山昭太郎(司会)

(執筆・記録:内山昭太郎)