第21回大会[1995年]報告

日本映像学会第21回大会
1995年6年3日‐5日
主催校:神戸芸術工科大学
実行委員長:山口勝弘

 今年は動く映像への長年の人類の夢が、映画という形によって実現してから100年を迎え、日本映像学会第1回大会は「映画100年─夢のアーカイヴスの誕生」というテーマを掲げて開催されました。
 本学会設立の目的も、まさに動く映像を中心とした映像文化の研究にありました。今日映画から出発した多様な映像世界は技術と表現方法の革新のなかに発展して参りました。マルチメディアの可能性を考える場合にも、映画によって作られた映像研究はなお無限の源泉として、そのデータを無視することはできません。本大会では国際交流委員会と協力し、初期映画についての世界的権威であるチャールズ・マッサーとローランド・コザンディ両氏を迎え、2つの記念講演と国際シンポジュームを中心に運営されることにまりました。更に大会の基軸となる会員の研究発表も例年を上回る件数となりました。
 また、今年1月の阪神・淡路大震災の被災地で開かれることになり、当大学にも会員の皆様から御見舞とお問い合せなどいただき御心配をおかけ致しましたが、漸く大会に漕ぎつけることができました。大学のキャンパスも修復のため足場で覆われており、大会運営に際し色々と御不便をおかけしましたが無事終了することになりました。
 最後にマッサー氏招聘については国際交流基金の御援助をうけ、コザンディ氏については本大学の協力をえました。また多くの企業から御協賛とさまざまなお力添えにより開催実現を見ることができました。ここに改めて御礼申し上げたいと存じます。
 なお運営の概要について今後の参考のために述べておきます。
(1)大会の内容及び研究発表等について数次にわたり開かれた関西支部幹事会の皆様に大変お世話になりました。とくに本校は開設されて新しいためアドヴァイスに感謝しております。
(2)海外からの講演者招聘については国際交流委員会との協力で実現しました。マッサー、コザンディ両氏はともに映画100年の世界各地のイヴェントで多忙ななか時間をさいてよく来ていただけたと思います。岩本憲児委員の御連絡のお陰です。
(3)6月3日(土)大会初日は激しい雨で参加の皆様はさぞ御苦労だったと思います。本校の委員3名と大学院中心のスタッフの能力の限界のため受付の事務が時間をとり開会が約20分遅れました。
(4)マッサー、コザンディ両氏の講演も時間オーヴァーして大会運営が延びてしまいました。しかし特別企画「荒神山」の弁士と和洋合奏はめったに見られない演出で好評でした。
(5)研究発表の件数が多く発表会場を3ヶ所としたため司会者も多くの会員にしかも当日お願いするなどご迷惑をおかけしました。今後予めお願いするなど考える必要があります。
(6)今回は研究発表の中に作品展示についても含めました。なお大会当日に発表機材の使用申し出などがありました。これも予めアンケートの折にお申込み願いたいと思います。
(7)その他大会企画と研究発表の運営と総会の運営があるため会員への通知等で重ならないように考えること、また総会の準備運営は総務委員会の方ですべて仕切った方がよいと思いました。
以上大会の反省をこめて気のついたことをご報告いたします。

研究発表
近藤源三「映画館の宇宙誌」
米谷 淳「日米のTVドラマにおける感情表現」
犬伏雅一「スティーグリッツとピクトリアリズム」
森岡祥倫「マルチメディア型人物情報データベース」
中川邦彦「近未来都市のバスストップの案内装置に組み込む非リニアな物語映画」
上倉庸敬「ドラマ・空間・時間」
端山貢明・前川道博「動画像ショット変化点抽出法の検証と評価」
ほしのあきら「被写体のカメラの相互干渉によるリズム」
加藤文一「楽しい実用立体写真と、それに対応可能な新型カメラの提案」
木下武志「パソコンによる3次元CGアニメーションを応用した映像デザインの実例」
小出正志「アニメーションにおける個人性と集団性に関する一考察」
千光士義和「映像作品『ことば』のアニメーション制作について」
内山昭太郎「映像フレームに関する一考察」
横田正夫「アニメーション作品のカラー化の効果についての心理学的検討」
吉川信雄「絵画のジレンマ」
登川直樹「映画フィルムの劣化と保存」
福屋武人「モンタージュ法によるイメージ形成過程の検証」
飯村隆彦「ジャック・デリダの『Differance』と『あいうえおん六面相』」
加藤幹郎「ポーチの力学 ハリウッド西部劇の構造と歴史」
鷲見成正「映像事象の時間的流れについて」

国際シンポジウム
「映画100年~映画の誕生をめぐって~」
司会:岩本憲児
パネリスト:チャールズ・マッサー、ロラン・コザンディ、八木信忠、小松弘

特別講演
(1)「エディソンのキネトスコープをめぐって:その製作・表象・利用」チャールズ・マッサー
(2)「初期映画の鏡像1905~1914 ジョアコレクションから」ロラン・コザンディ

特別企画
無声映画上演(弁士・楽隊つき)「荒神山」
主演:大河内傳次郎、監督:辻吉郎
弁士:井上陽一、演奏:大野政夫と和洋合奏団

エクスカーション
大阪ベイエリア、天保山シルフィールド号大阪湾めぐり、サントリーミュージアム見学

(会報第92号より抜粋)