第48回大会[2022年]報告:京都大学

日本映像学会第48回大会
2022年6月4-5日
主催校:京都大学
実行委員長:木下千花
大会実行副委員長:仁井田千絵

日本映像学会第48回大会報告
実行委員長 木下千花(京都大学)

2022年6月4日(土)−5日(日)の二日に亘り、京都大学吉田南キャンパスにおいて日本映像学会第48回大会が開催されました。当初は2019年の山形大学における第45回大会以来の全面的な対面開催を計画していましたが、必ずしも危機的状況ではないとはいえコロナ禍は継続し、開催方式については議論を重ねました。結果的に1日目のシンポジウムはオンライン配信、2日目の研究発表は原則として対面のみという折衷方式での開催を決定し、多くの会員・非会員の方々にご参加いただき、大過なく終えることができました。こちらで簡単なご報告を行うとともに、ご尽力いただいた方々に心より御礼申し上げます。
 大会実行委員会メンバーは以下のとおりです。
委員長:木下千花(京都大学)、副委員長:仁井田千絵(京都大学)
委員:板倉史明(神戸大学) 、大橋勝(大阪芸術大学) 、菅野優香(同志社大学) 、辰巳知広(京都大学) 、橋本英治、ミツヨ・ワダ・マルシアーノ(京都大学)

1.第三通信から開催まで
 実行委員会では、開催形式の決定を大会6週間前である4月半ばに設定し、京都市および日本全国の感染状況をはじめとした情報収集を行いつつ、実行委員会MLおよびZoomで意見交換を重ねました。4日(土)はシンポジウムのみとしてウェビナー配信によるオンライン開催、研究発表は5日(日)のみとして対面開催という結論に達し、連休明けには会員に周知することができました。とはいえ、5月9日(月)だった大会参加申込の締切を一週間延ばし、5月16日(月)としました。
 仁井田副委員長が中心になり、橋本委員、板倉委員、ワダ・マルシアーノ委員で協力して研究発表のスケジュールを組み、教室を割り振り、司会者(座長)を依頼しました。大橋委員の尽力により、座学の大学の不十分な設備にもかかわらず、作品発表の環境をなんとか整えることができました。概要集制作は、第46回、第47回から引き継いだフォーマットを活用し、仁井田副委員長と京大修士二回生の清武燈によって進められました。
 シンポジウム「カメラを持った女——ジェンダー、創造行為、労働」は業者に委託してのオンライン配信ということで、橋本委員の協力のもと業者の選定を行って相見積を取り、撮影会場・楽友会館での下見を行うなど、準備を進めました。座談会の登壇者のお三方(熊谷博子さん、山城知佳子さん、横浜聡子さん)とは、斉藤会長と木下が東京で個別に打合せをし、質問内容などを検討しました。また、シンポジウムの一環となる望月優子監督『ここに生きる』(1962年)は、開催1週間前の5月27日よりVimeoでの英語字幕付配信を開始し、リンクを大会ウェブサイトや会員MLで共有しました。

2. 会計報告(作成:会計担当・辰巳委員、仁井田副委員長)
【詳細は、会報195号を参照】

3. 実施報告
<1日目>シンポジウム「カメラを持った女——ジェンダー、創造行為、労働」(ウェビナー配信)
 鷲谷花会員による基調講演「女たちの声、子どもたちのまなざし―『ここに生きる』(望月優子監督)の映した失業、貧困、労働」は、戦後日本の映画文化と労働運動の双方によって忘却されていた傑作『ここに生きる』を文字通り発掘し、製作の背景となった政府の失業対策事業縮小への反対運動について解説・分析するとともに、「教宣映画」としての文脈とこの映画テクストとの齟齬や折衝を照射する刺激的な発表でした。
 座談会「言葉・身体・記憶——映像作家の実践」では、ドキュメンタリー、美術、商業映画と、異なった領域を牽引する熊谷さん、山城さん、横浜さんに、映像制作の道に入ったきっかけや経緯、ご自身のジェンダーと制作/製作プロセスや作品との関係、対象との関係性のありかたなどについて、縦横に語っていただきました。作家としてのステイタスから言って、本来でしたらお一人ずつフィーチャーして当然であるにも拘わらず、「カメラを持った女」として集って下さったお三方には、お礼の言葉もありません。なお、本シンポジウムは、登壇者の旅費・謝金について科研費プロジェクト「日本映画における女性パイオニア」(20H01200)より助成を受けています。
 シンポジウムには342名の登録者があり、一意の視聴者数(同一IPアドレスからの視聴者数)223名、合計ユーザー数316名、ビュー最大数191名と、非会員を含む多くの方にご参加いただき、何人かの方から「面白かった」とのお褒めの言葉を頂戴いたしました。京大吉田南キャンパス人間・環境学研究科棟の地下大講義室で行ったパブリックビューイング(仁井田副委員長担当)にも、40名ほどの参加がありました。シンポジウム収録に引き続いて楽友会館ロビーで開催した飲食提供なしの「ソーシャルアワー」にも多くの会員にお越しいただき、久方ぶりの対面での交流の機会となりました。

<2日目>研究・作品発表
 三年ぶりの対面開催となり、当日受付の会員72名、非会員40名を含む204名の方々にご参加いただきました。参加者数が予想を大幅に上回ったため、多めに印刷していたはずの概要集が足りなくなり、一部の会員のみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。
 会員のみなさまのご尽力のおかげで、発表に続いて活発な質疑が行われ、対面での研究交流の喜びを肌で感じることのできる大会だったと思います。心より御礼申し上げます。
 下記の先生方に司会をつとめていただきました(アイウエオ順、敬称略)。ありがとうございました。

青山勝、晏妮、板倉史明、上田学、大久保清朗、大橋勝、韓燕麗、菅野優香、菅原慶乃、瀧澤将師、武田潔、仁井田千絵、藤井仁子、堀潤之、馬然、宮下十有、宮本裕子、ミツヨ・ワダ・マルシアーノ

 最後に、内輪のことになりますが、京都大学と同志社大学の学生バイトのみなさんが、会場設営、受付、タイムキーパー、機材の準備などで大活躍してくれたことをお礼とともに申し添えます。