第14回大会[1988年]報告

日本映像学会第14回大会
1988年6月4日‐5日
主催校:日本大学文理学部
実行委員長:浅井正昭

 従来、映像を媒介としたコミュニケーションに関する研究は、映像創作すなわちEncoding過程にかかわる映像学と、創作された映像の認知すなわちDecoding過程にかかわる心理学とを便宜上区別していた。しかし、映像を媒体とするコミュニケーションにおいてこれらの両過程は、本来相互に関連する連続体であるはずである。第14回大会では、映像学と心理学が有機的にかかわりあえる学際的な共同作業の場を提供し、心理学が映像学にどのようにアプローチできるのか、その可能性を探索した。この目的に沿って本大会では、2つのシンポジウム、新しい企画としてより緊密に創造と認知との接点を探るワークショップを設けた。
 急速なテンポで変化するテクノロジーは映像創作の世界にも大きなインパクトを与えてきた。映像創造の未来を予測する手掛りとしてMITメディア研究所のN.P.ネグロポンティ所長を招待、特別講演を依頼した。

研究発表
八木信忠・広沢文則・高野徹「映像における心理学的距離について」
奥村 賢「日独映画作品スタイルについての一考察」
曽根幸子「映画と写真─写真の物理性について─」
須永範明「人物の記憶と認知スタイル」
飯村隆彦「Person/Gender Difference」
野地朱真「コンピュータ・グラフィックスの虚実」
吉田敦也・米谷 淳「画像解析による対人社会心理学研究」
米谷 淳・吉田敦也「画像解析による行動研究」

シンポジウム
(1)映像の創造─Encoding Processesをめぐって
(司会 厳島行雄)
河口洋一郎「CG映像における芸術表現の可能性」
端山貢明「社会メディアとしての映像」
池田 宏「動画像生成システム─アニメーション製作システムの革新─」
山口勝弘「映像表現の複雑性」
為ヶ谷秀一「ハイビジョンとコンピューターグラフィックス」
浅井正昭「心理学研究で利用する電子映像」

(2)映像の理解─Decoding Processesをめぐって
(司会 横田正夫)
波多野哲朗「映像理解と映像理論」
森岡祥倫「インタラクティブ映像の可能性とコミュニケーション概念の転換」
高野陽太郎「認知心理学から見た映像理解」
厳島行雄「映像理解と感情のかかわり」
武邑光裕「情報代謝と電子映像」

ワークショップ
映像の創造と理解の統合をめざして─身体表現を媒介して─
(司会 浅井正昭)
福屋武人「臨床心理学からみた映像表現の分析およびその方法」
Stelarc「Beyond the Body─Amplified Body, Laser Eyes and Third Hand─」
原島 博「知的通信における顔画像の分析と合成」
山田 寛「顔面表情の認知構造」

招待講演
ニコラス P.ネグロポンティ(M.I.Tメディア研究所長)
「Iconoclastic View of the Future」

映像作品展
浅井敬三「1987年米国優秀テレビCM」
ほしのあきら「悲しき街角─断片化による詩的物語の成立の試み─」
吉川信雄「分身としての「ですね」」
風間 正・大津はつね「デカルコマニーの窓」
土佐尚子「It’s Got to be Somewhere」

(執筆・記録:浅井正昭)