第24回大会[1998年]報告

日本映像学会第24回大会
1998年5月23日‐25日
主催校:宝塚造形芸術大学
実行委員長:森 嘉紀

 日本映像学会第24回大会は、宝塚造形芸術大学を主催校として5月23日(土)、24日(日)、25日(月)の3日間にわたって、開催されました。
 大会第1日、開会式には日本映像学会会長松本俊夫氏の、研究発表に期待をこめた挨拶があり、引き続いて主催校を代表して、宝塚造形芸術大学副学長崎田喜美枝氏より、感謝と歓迎の挨拶が行われマルチメディア教育にとり組む大学像が紹介された。
 午後1時15分より、大会特別講演「パーソナル・デジタルスタジオ」と題して、宝塚造形芸術大学教授、大村皓一氏による、大学教育現場における標題に至るまでの苦心、努力の数々を、具体的に話され、感銘の深いものでありました。特に今後の映像アーティストは、デジタルハードウェア、ソフトウェアを駆使して、映像・音響を1人で制作しなくてはならない環境におかれると強調され、そのための制作環境の例として、学内のマルチメディアラボ内のパーソナル・デジタルスタジオを見学する事にしました。たまたま校舎増設中の為に、別校舎に至るまでの間、移動は工事用階段を利用して頂くこととなりました。映像造形学科内のスタジオは機器も充実し、具体的に1人で制作する場合、4~5人で制作する場合などわかり易いものでありました。
 研究発表は午後3時より、本館6階の3教室をA(652教室)、B(651教室)、C(650教室)と分かれ、それぞれの分科会会場はなるべく、内容の近い関係のものをまとめる様にしましたが、発表者の都合によって一部替わったところも出来ました。
 A、B、C室の発表については御欠席の会員の方によってわかり易いかとも思い概要集のプログラム頁を掲載しました(会報)。研究発表は、例年に準じ、1発表40分で、発表35分(質問を含)移動時間5分としました。第1日12件、第2日8件でした。
 第24回大会同時開催の映像展は、5階、531教室を使用し、10件の発表がありました。ビデオ上映作品12作品で、大会場で見易くなりました。映像展は第1日、第2日の2日間で行われ、好評でした。
 第25回通常総会は、第2日24日午後2時10分より3時20分まで、マルチメディアホールで実施。報告承認に関する件、選挙結果報告があり、新会長に松本俊夫会員、98年事業計画、および予算案等の審議、正司宝塚市長、池田宝塚造形芸術大学理事長の祝電披露などにて終了。
 その後3時20分より、シンポジウム「メディアとコンテンツ」が行われ、司会稲次敏郎、パネリスト、大村皓一、為ヶ谷秀一の各氏によって行われた。司会者稲次敏郎による報告記事は別欄ご参照下さい(会報)。
 大会第3日エクスカーションは、参加申込者が当初25名程でしたが、都合により欠席者も増し8名になりました。改築なった大阪城見学と、水上バス乗船という事で、御参加の会員は、大阪情緒の一端を味わっていただけたかと存じます。(午前10時~午後3時現地解散)
 なお大会参加者は3日間172名に及びました。
 最後になりましたが、本大会開催に当たり、松本会長初め、理事会員各位に御教示を賜りました。特に関西支部幹事に御協力をおしみなくいただき、厚く御礼を申し上げます。また、本部事務局、大学事務局担当の各位にも感謝致します。

研究発表
井口壽乃「社会主義プロパガンダとしての映画─ハンガリー革命の記録フィルムをめぐって─」
柴田 崇「<メディア>という概念─コミュニケーション・モデルの検証を通じて─」
山口良臣「水平方向360度の視覚」
福原正行「永続するプロパガンダ─ナチ映画<コルベルグ>を巡って─」
沖 啓介「ネットワークにつながる身体」
野村康治・山下耕「”映像”の概念について」
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ「松竹蒲田映画における<新しい女>の創造─<人生のお荷物>その物語の読み替え─」
岡村征夫「ノンリニア編集による映像編集の新しいアプローチ」
永冶日出雄「欧州連合EUの映画振興政策とMEDIA行動計画
1991-1995の成果─長編劇映画の共同制作を中心に─」
森友令子「ファッション写真の中のジェンダー」
高田哲雄「3DCGにおけるリアリティ」
佐伯知紀「ロシアに残されていた日本映画─ゴスフィルモフォンド(国立映画保存所)の日本映画コレクションについて─」
谷川真美「現代美術におけるモノクローム写真の意味」
前川道博「ビデオデータの素材価値の発見」
斉藤綾子「アラン・レネ:運動か時間か、あるいはドゥルーズにおける情動(affect)の問題」
小出正志「アニメーション定義における形成性の概念」
福屋武人「映像認知における残像効果の研究
陣内利博・福間祥乃「ビジュアル・チャット」
宇佐美昇三「映像の提示方法と、その受け取られ方─4コマ漫画と漢詩の事例研究─」
中川邦彦「遠隔コラボレーションによるデジタルムービー制作の意義」

映像展
鈴木良太郎・井上誠真「Dance Canonica」「家族ゲーム・ゲーム」
杉浦康仁「Media Dysphoria」実験映像の新しい倫理
楠かつのり「約束」
吉川信雄「VINYL PONCHO」
広沢文則「写し絵」日高川入相花王 清姫道行より
長久保光弘「双方向性立体映像」
千光士義和「私的アニメ制作法」
浅井敬三「1990年代アメリカテレビCM表現の動向(4)」
風間正・大津はつね「De-Sign9『Scale(ものさし)』
真鍋信誠・李容旭「与那国島海底遺跡のCG可視化」

特別講演:大村皓一
「パーソナル・デジタルスタジオ」

シンポジウム
「メディアとコンテンツ」
司会:稲次敏郎
パネリスト:大村皓一・為ヶ谷秀一

(執筆・記録:森 嘉紀/会報第104号より抜粋)