第15回大会[1989年]報告

日本映像学会第15回大会
1989年6月3日‐5日
主催校:京都芸術短期大学
実行委員長:松本俊夫

 第15回大会は会員118名の参加があり、地方の大会としては予想以上の盛況ぶりだった。場所が京都だったことに加えて、準備や情報伝達が順調だったのが良かったのだろう。
 14名の研究発表は2日間にわたって二つの分科会で行われたが、内容は学会にふさわしく充実したものだったし、運営もスケジュールどおり円滑に進展した。
 私が実行委員長として本大会に特色を出そうとしたのは次の2点である。一つは映像をめぐる文化・芸術の今日的変容を脱近代の視点でとらえ、シンポジウム、講演、特別企画の三つの切口から掘り下げたことであり、いま一つは有能な中堅・若手会員を積極的に起用して大会の体質改善を計ったことである。
 懇親会とエクスカーションも大ぜいの会員の参加を得て賑わった。快晴続きの比叡山の新緑のふもとで、本大会は学会の活性化を促進し、相互刺激と親睦を深めて、ほぼ大方の会員に満足をいただけたものと思っている。

研究発表
曽根幸子(実践女子大)「ロラン・バルトにおける写真と映画」
豊原正智(大阪芸大)「映像における技術の意味」
岡田 晋(神戸芸工大)「象徴記号としての文字」
八木信忠・広沢文則・高野 徹(日大)「標準レンズとは何か」
橋本英治(神戸芸工大)「映画の喚喩と隠喩についての一考察」
石原 亘(京都芸短大)「球による図形の構成を支援するシステム:CUE」
岩本憲児(早大)「映像と音の実験─ヴェルトフの場合」
古賀 太(国際交流基金)「映画行政の現状と諸問題」
伊奈新祐(九州芸工大)「ビデオアートとTV」
牧野 守「加納竜一における映画と建築についての研究」
木下長宏(京都芸短大)「映像の迷宮─Eugeォne Atgetをめぐって」
植条則夫(関西大学)「アメリカにおける比較広告─その社会的背景とテレビCM─」
山縣 煕(神戸大)「ジル・ドゥルーズの映画論」
脇リギオ(多摩美大)「カラー写真における新しい色再現法の提案」

シンポジウム
「脱近代と映像」
パネリスト/室井尚(兼司会)、犬伏雅一、柏木博、武田潔、森岡祥倫

特別講演
青木保「映像における異文化と外部」

特別企画「映像の実験と伝統」(解説 松本俊夫)
稲垣貴士(京都芸短大)「INTERFERENCE」(ビデオ 1986)
伊奈新祐(九州芸工大)「SHA」(ビデオ 1986)
かわなかのぶひろ(東京造形大)「私小説」(映画 1989)
相原信洋(京都芸短大)「水の雲」(映画 1989)
松本俊夫(京都芸短大)「気=BREATHING」(映画 1980)

映像作品展
池田光恵(大阪芸大)「ハンプティ・ダンプティのTV」(ビデオ 1989)
吉岡敏夫(大阪芸大)「The Countour of Taiwanese Road」(ビデオ 1989)
豊原正智(大阪芸大)「DIVISION」(ビデオ 1989)
伊藤 弘(京都工繊大)「WHITE LIGHT」(ビデオ 1989)
土佐尚子(総合電子専門学校)「カオス「WORK1」」(ビデオ(CG) 1989)
太田米男(大阪芸大)「墨絵動画I・II」(ビデオ(フィルム) 1988)
遠藤賢治(大阪芸大)「花がさく」(ビデオ(フィルム) 1989)
吉川信雄「すぐナル」(ビデオ 1989)
水野哲雄(京都芸短大)「へそ」(ビデオインスタレーション 1989)
幸村真佐男(京都芸短大)「ヤヌス像」(CGマルチプレックス・ホログラム 1988)
竹上正明「DAI MEDIAによる写真」(パネル 1988)
鈴鹿芳康(京都芸短大)「6分館のセルフ・ポートレート」(パネル 1989)
ほしのあきら(多摩美大)「FIX・TONE」(映画 1989)
黒坂圭太(京都芸短大)「海の唄」(映画 1988)
浅井敬三(日大)「80年代アメリカCM集(参考上映)」(ビデオ 1980年代)
飯村隆彦(大阪芸大)「MA:SPACE/TIME THE GARDEN OF RYOANJI」(ビデオ 1989)

エクスカーション
京都庭園「碧雲荘」「対龍山荘」(いずれも小川次兵衛作)の見学

(執筆・記録:松本俊夫)