第50回大会[2024年]報告:九州産業大学

日本映像学会第50回全国大会
2024年6月1-2日
主催校:九州産業大学
実行委員長:黒岩俊哉
大会実行副委員長:井上貢一

日本映像学会第50回全国大会報告
実行委員長 黒岩俊哉(九州産業大学)

日本映像学会第50回全国大会は、2024年6月1日(土)、2日(日)に、九州産業大学芸術学部(福岡市)で開催された。なお近年は「全国大会」という大会呼称を使用していなかったが、50回を機に初期の呼称であった「全国大会」を使用した。

1.大会までの経緯
 2023年3月の理事会にて、主催校を九州産業大学とすることが決まり、翌年(2024年)の6月初旬を開催日とすることで、主催校内の調整作業を開始した。
 主な会場として、九州産業大学芸術学部エリアにあたる15号館、17号館、学生円形ギャラリー等を検討し、準備日を含め大会期間中の使用を確保した。
 同時に大会実行委員会を編成し、大会概要の制作に着手した。また、第49回大会を参考に、過去の大会における開催準備・運営・業務内容・前回大会からの申し送り事項等について調査・検討を始めた。
 2024年度の大会が九州産業大学で開催されることは、2023年6月の第49回大会(明治学院大学・斎藤綾子実行委委員長)で告知された。
 大会開催日については、2024年6月の同月同会場にて日本デザイン学会第71回春季研究発表大会が開催される予定も把握していたため、同実行委員長である井上貢一会員(映像学会第50回全国大会副委員長)と調整し、大会日程を6月1日(土)、2日(日)とした。以下はそれ以後の大会までの大まかなスケジュールである。

2023年7月13日 大会実行委員会設立
2023年7月15日 理事会
2023年10月1日 第一通信公開
2023年12月16日 理事会
2024年1月5日 第二通信公開
2024年3月17日 理事会
2024年5月11日 理事会
2024年5月12日 第三通信公開/研究・作品発表プログラム公開(最終版は5月22日公開)

2. 大会開催報告
2-1. 大会テーマは、大会実行委員会内で検討され、「映像芸術の表現と理論」とした。

2-2. 実行委員
日本映像学会第50回全国大会実行委員は以下の通りである。
委員長 黒岩 俊哉(九州産業大学)
副委員長 井上 貢一(九州産業大学)
委員 伊藤 高志(実験映像作家)
委員 伊原 久裕(九州大学)
委員 岩田 敦之(九州産業大学)
委員 佐藤 慈(九州産業大学)
委員 進藤 環(九州産業大学)
委員 趙 瑞(九州産業大学)
委員 西谷 郁(映像研究/映画プロデューサー)

2-3. 大会概要
会期:2024年6月1日(土)・6月2日(日)(2日間)
会場:九州産業大学芸術学部(福岡市)

2024年6月1日(土)
• 開会
• シンポジウム
• 研究発表
• 作品発表
• 映像作品上映
• 懇親会
2024年6月2日(日)
• 研究発表
• 作品発表
• 映像作品上映
• 新旧理事会
• 日本映像学会第51回通常総会
• 研究発表
• 作品発表/映像作品上映
• 閉会
 大会は対面形式のみによって開催された。大会に伴って開催される理事会は、役員改選後初となるため「新旧合同理事会」とした。また同理由より、第51回通常総会の時間を多く取った。COVID-19によって未開催であった懇親会を、第45回大会(山形大学)以来、5年ぶりに対面形式で行った。

2-4. 大会タイムテーブル
 (別紙に記載)

2-5. 会場
 シンポジウム/総会には、300人収容の教室を充てた。研究・作品発表には、芸術学部15号館5教室と学生ギャラリーを使用し、計6会場で行った。
また、作品上映には17号館の上映施設を備えた教室を1室、新旧理事会や大会実行委員会の本部に大会議室1室、その他スタッフルームおよび発表者控え室として中会議室等3室を使用した。
 今回は、発表会場となる15号館1-2階を中心に、総会、シンポジウム、理事会、事務局本部をコンパクトにまとめた。会場近くに受付を設置し、受付および参加者からの問い合わせや、それらに対する実行委員会の対応を効率化した。
 また懇親会会場には、大会会場に隣接する学生食堂を使用した。

2-6. 参加費
 参加費・懇親会費は以下の通りであった。
• 正会員参加費:3,000円
• 正会員(学生の資格を持つ者) / 一般 / 一般(学生):2,000円
• 懇親会費:5,000円
 本大会は一般(学生)の参加費を2,000円とした。それによって、正会員(学生の資格を持つ)・一般・一般(学生)の区別が無くなり、学生証の確認など受付処理が簡略化された。

2-7. 発表件数
 発表件数は以下の通りであった。大会発表は1月8日にエントリーを開始し、研究企画委員会および理事会の審査を経て決定された。ここでは大会概要集の原稿を元に、大会発表として適切かどうかを検討し、その結果を発表希望者にフィードバックしながら、最終的に、5月11日の理事会にて決定を行った。
【詳細は、会報201号を参照】
 今回1つの発表希望について、メールシステムの不具合により、大会運営委員会からのメールが発表希望者に届いていないことが最終決定後に判明した。調査の結果、発表者希望者の過失ではないことが判明し、臨時に研究企画委員会および理事会をメールで開催し、再審査を行った経緯がある。
 発表件数については、地方の対面開催の大会である事から、減少を危惧したが、特に大きな問題とはならなかったのではないか。

2-8.参加者数
 大会2日間を通じた参加者数等の内訳は、下の表の通りである。受付は、当日受付とPayvent(学会参加申込・決済サービス)による事前受付を併用し、合計154名の参加者となった(表3)。
【詳細は、会報201号を参照】

 学会ホームページからの参加エントリー数は170名であったものに対して、実際に参加した人数は154名であった。大会参加には学会ホームページからのエントリーが必要であるが、発表者のエントリー忘れや、学会員以外の一般参加を希望する参加者には、ホームページからのエントリーを知らない場合もあり、当日受付にてガイダンスすることもあった。
 なお、今回の参加受付業務にはデータベースソフトであるFilemaker Serverとそのクライアントを使用し、電子的に処理を行った。オンラインによる並列処理を可能としたため、受付時の指名検索や大会参加費等の支払いプロセスなどを、複数の受付担当者で同時に行うことができ、受付時の大きな混雑は避けることができたのではないか。また単一データベースによる一元管理によって、参加者の手続情報を逐次把握できたこともメリットであった。

2-9. スタッフ/アルバイト
 アルバイトの数は20名、準備・設営(前日)を含め3日間の延べ人数は42名であった。業務内容は、受付、タイムキーパー/会場担当、誘導/案内、事務局担当を分担して行った。

3. シンポジウム
 シンポジウムは大会1日目、6月1日(土)の13:30 – 16:00に開催された。パネリスト3名と司会を兼ねたモデレータ1名の、計4名が登壇し、大会テーマと同じ「映像芸術の表現と理論」について検討を行った。
 シンポジウムは二部構成とし、前半第一部ではパネリストとモデレータから、問題提起をそれぞれ行った。後半第二部では、4名によるディスカッションの後、会場参加者とともに質疑応答を行った。

シンポジウムの構成
• [第一部] パネリストとモデレータによる問題提起
• [第二部] ディスカッション

パネリスト(敬称略)
• 伊奈 新祐 (京都精華大学名誉教授 / 映像作家)
• 奥野 邦利 (日本大学芸術学部教授 / 映像作家)
• 内海 昭子 (九州産業大学芸術学部講師 / 現代美術家)
モデレータ/司会
• 黒岩 俊哉 (九州産業大学芸術学部教授)

 第一部の問題提起では、まずモデレータの黒岩よりシンポジウムの概要とテーマ「映像芸術の表現と理論」に至った経緯および焦点について説明がなされた。
 そこでは50年間の映像の変容と多様化、通信環境の変化による新たなコミュニケーションの問題、デジタル情報の蓄積とそこから導かれるデジタル空間について、過去・現在・未来の時空間、および作家と作品境界のゆらぎや喪失、そこに立脚するべき「芸術」の意味と現代における(イマージュ)考察の意義、映像芸術と映像理論の相互作用による可能性について言及があった。
――
 次に伊奈新祐氏からは、長年の映像作家および理論研究家の立場から、翻訳や著作を通じて得られた実験映像・ヴィデオアート・メディアアート・モーショングラフィックスの歴史と理論研究の変遷についての考察、表現においては数々のエピソードによる美術・芸術へのアプローチとその視座についての解説がなされた。
【詳細は、会報201号を参照】

 次に、内海昭子氏からは「インスタレーションの鑑賞者の受容について」というタイトルで、現代美術作家の立場から「時間の連続性を表出する風景の再構築」をテーマとした自身のインスタレーション作品の紹介があり、映像に関わる諸問題、とくに見ることの意味を起点とする空間性・精神性・身体性についての考察が述べられた。
【詳細は、会報201号を参照】

 最後に奥野邦利氏からは、映像作家および教育者の視点から、映像をとりまく現在の状況、変容するメディアと教育、過去の作品群との比較・変遷・今日の映像表現の特長や問題点と展望について、映像表現研究会の代表および今年18回目を迎える同研究会主催のISMIE(インターリンク:学生映像作品展)のコーディネータの立場から言及がなされた。
【詳細は、会報201号を参照】
――
 二部のディスカッションでは、一部の問題提起をふまえ、モデレータとパネリスト相互による質問・意見交換を行い、各々の考察を展開した。さらに会場と質疑応答を行い、シンポジウムのテーマに対して検討がなされた。
【詳細は、会報201号を参照】

4. 会計報告
大会収支は以下の通りである。
【詳細は、会報201号を参照】

5. 備考
– 大会1ヶ月半前に、当初基調講演者として予定していたアメリカの大学教員が来日できなくなり、シンポジウムを中心としたプログラムに変更した。大会が決まり、実行委員会などで検討し、旅費や招聘条件など、大学内での調整や領事館との情報交換を行いながら、講演予定者とも約8ヶ月間交渉を続けていたが結果的に実現できなかった。
– 大会発表の審査は、研究企画委員会と理事会により行われる。発表希望者のリスト管理から、審査結果やその確認等の発表希望者とのやりとりは大会実行委員会が担うが、複雑な工程であり大きな負担となる。特に発表希望者とのコミュニケーションは全てメールで行ったが、メールサービスによっては、不具合が生じることもあった。そのため、オンラインによる査読システムなどを利用し、情報を一元管理し、発表希望者・大会実行委委員会・研究企画委員会・理事会の4者が、正確な情報を共有できるよう工夫することも一考と思われる。

6.謝辞
 限られた時間の中、こころよく登壇をお引き受けいただいたパネリストの皆様、大会内容について親身にご相談に乗っていただいた会員の皆様をはじめ、大会にご協力いただいた皆様に、実行委員ともども御礼申し上げます。
 また、すばらしい研究・作品発表をいただいた発表者の皆様、地方大会にもかかわらず遠方より大会に参加いただいた多数の会員の皆様にも、心から御礼申し上げます。