第7回大会[1981年]報告

日本映像学会第7回大会
1981年6月20日‐21日
主催校:早稲田大学
実行委員長:山本喜久男

 当時の文学部には、会議に使えるようなAVホールはむろんのこと、スライド映写機を除けば、映像ディスプレイができるような機器の設備もなく、映像ソフトを利用した授業も皆無だった。したがって、大会は口頭発表だけに限ることとした。会員個人の研究発表のほかに、フランスから映画記号学を代表するクリスチャン・メッツ氏を招き、二日目の午後にはこの講演が目玉になった。文学部ということもあり、フランス文学関係者をはじめ、言語学や記号学に関心の深い人々も押し寄せ、200人収容の会議室が超満員になって、まだ大学院生だった武田潔氏の名通訳もあり、熱気に満ちた講演と質疑応答の会になった。また、この大会に合わせて、『映像学』21号を「映画記号学」の特集に当てて編集・発行した。映画に関してはわずか2名の専任教員(会員の山本喜久男・岩本憲児)だったが、大学院生を中心に学部の学生諸君の応援も得て、盛会のうちに終了したことを感銘深く思い出す。当時の大学院生たちもいまは研究者として会員になっている人も多い。

研究発表
今井 滋「キールリーアン写真術の概要とその実験結果について」
出口丈人「映画における物語停止の一側面」
永田彰三「演劇的空間と映像的空間」
山下 勇「音楽を中心とした映像作品における映像表現と音楽表現の関係について」
西澤栄美子「映像としての文字」
藤井 勇「双方向映像システムによる学習効果の考察」
岡田 晋「映像Discoursの構造分析」
山本喜久男「日本映画における季語」
八木信忠「映像と観客の心理的距離についての考察─2」
松本俊夫「無意識の二重性と創造原理」

講演
クリスチャン・メッツ「映画観客における同一化の問題」(通訳:武田潔)

特別企画
「メッツ氏を囲む会」(司会:蓮實重彦、於:完之荘)

(執筆・記録:岩本憲児)