日本映像学会第22回大会
1996年6月8日‐10日
主催校:日本大学芸術学部
実行委員長:真鍋信誠
日本映像学会第22回大会は、日本大学芸術学部を主催校として6月8日(土)から10日(月)の3日間、第1日は日本大学総合学術情報センター(所沢)、第2日は同大学芸術学部(江古田)で研究発表および映像展、第3日はひきつづき映像展とエクスカーションを実施致しました。
大会第1日は八木信忠組織委員長の開会挨拶、日本への映画伝来100年と新しい技術の展開期に開催する意義、日本大学を代表して同総情センター長の瀬在幸安副総長により、デジタル時代の情報化、国際化における大学教育の意義と同センターの図書情報、学術情報、衛星通信ネットワークなどプロジェクトの紹介を兼ね、映像情報と芸術に関する当学会への期待を込め挨拶されました。
その後、同センターの施設を供覧し、午後1時0分から「映画史研究の視角」と題して佐藤忠男会員により特別講演を行いました。
研究発表は午後3時から同センターの研修室AとBの分科会に別れ実施され、第22回大会第1日の口頭発表の特徴は、インターネットを利用し自己のホームページおよび研究データベースからの検索、コンピュータソフトおよびビデオ素材のプロジェクションを行うという複合的な発表形式を採用したことにあります。第日は芸術学部江古田校舎に会場を移して、午前9時30分から視聴覚教室AとBの分科会。1人口頭発表25分、質問5分、計30分の持ち時間、休憩10分で並行に進行し、午後2時10分研究発表を終了しました。
2時30分より視聴覚Bにおいてシンポジウム「マルチメディア時代の知的所有権」を基調報告とパネルディスカッションを実施しました。
第22回大会同時開催の会員による映像展では、図書館棟AV展示室でビデオ上映、1Fロビーではパネル展示を第3日まで2日間にわたり実施した。
第23回通常総会は午後5時から視聴覚Aにおいて実施。報告承認に関する件、選挙結果報告、新会長に松本俊夫会員、’96事業計画および予算案等の審議をし、午後6時30分から懇親会に入りました。
大会第3日エクスカーションは午前10時ソニー(株)高輪オフィスに集合、井深亮会員により同メディアワールドのカメラ・VTRを主体とした総合展示、最先端のデジタル映像および音響機器等解説と紹介、さらに米国の惑星探査衛星マゼランによるデータを3次元CGに映像化したハイビジョン作品「金星<ヴィーナス>」を鑑賞した後、正午から高輪プリンスホテルレストラン・パティオにて昼食懇談会を行った。新橋から東京臨海新交通「ゆりかもめ」に乗りテレコムセンター下車、平成7年11月開局のUHF局東京メトロポリタンテレビジョン(MXTV)を見学。ゼネラルプロデューサーの村木良彦、プロデューサーの定村武士両会員によって、同局の特徴とする東京23区それぞれ担当のビデオジャーナリストによる取材体制や、通常のテレビ局と異なって制作加工等ニュース素材のプログラム蓄積収蔵に力点が置かれ、番組送出はそのデータベースから行うという基本姿勢について語られ、スタジオ内のデジタルシステム、さらに島嶼部向けの衛星送信施設などを見学、午後4時エクスカーション日程をすべて終了し、現地解散となりました。
なお、今回大会出席者は3日間延べ304名、映像展2日間延べ246名、これまでの大会で最も多くの会員参加となりました。
研究発表
<第1日>
端山貢明「新しい情報ネットワークの社会的効果と映像─新しいメディアとしての映像情報とインターネット等人類ネットの展開と方向性─
前川道博「インターネット社会における映画情報のニーズ」
土佐尚子「デジタル・ヌーベルバーグ─サイバー・ムービーにおけるインタラクティブ・シアターの生成─」
宮崎正弘「コンテンツ制作のためのデジタルマスターシステムについて」
小出正志「アニメーションにおける制約と限定に関する一考察」
木下たけし「3次元CGアニメーションによる視覚言語:その応用の試みとデザインプロセス」
黒岩俊哉「映像をめぐるテレコミュニケーションとコンテンポラリーアートの現状」
<第2日>
西村安弘「横断的イタリア映画史序説」
木村建哉「映画における自己反省作用─ジル・ドゥルーズの<クリスタル・イマージュ>の概念に拠りつつ─」
アーロン・ジェロー「<ジゴマ>と映画の発見」
クリストフ・シャルル「日本の映像に於ける<妨害なき相互浸透>についての一考察」
月野木隆行「映像作品に於ける価値の問題について─ヴァルター・ベンヤミン再読─」
登川直樹「アマチュア映像の展開 そのハード先行を考える」
吉川信雄+高山英子「<歯科機能矯正におけるカラーセラピー>バーチャル歯科診療室」
脇リギオ「デジタル画像の色再現システム─銀塩+デジタルの究極のシステム…バソコン用グレイバランスシステムの提案─」
横田正夫「アニメーションにおける顔表現の検討」
織田祐宏「映像の視知覚─テレビ画像に対する視認性─」
幸村真佐男「視覚体制と電子共同体論─<第三の皮膚>論─」
浅井敬三「1990年代前半アメリカテレビCM表現の動向」
映像展
<ビデオ上映>
浅井敬三「アメリカテレビCM1990年代の優秀作、話題作」
脇リギオ「A WHITE GOLF BALL」
大山千賀子「残像のなかで聞く現代音楽・R」
千光士義和「ことばのアニメーション’96から」
山下 耕「メトロ・スペクトル」
串山久美子「A-LIFE GARDEN 3」
風間正+大津はつね「Dé-Sign 7(Armageddon)」
<パネルおよびビデオインスタレーション>
瓜生隆弘「花シリーズより」
澤本玲子「想像力の種子─Photo-Installation─」
吉川信雄「<シーラカンス・D>バーチャル歯科診療室」
(執筆・記録:真鍋信誠/会報第95号より抜粋)