ヴィデオアート研究会vol13/初期ヴィデオアートとテレビ放送

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クリス・メイ=アンドリュースをゲストに迎えてのレクチャー

日時:2015年10月12日(月・祝)17:00-20:30 会場:co-lab渋谷アトリエ2F 会議室3

テーマ:ヴィデオアートの歴史を振り返る:初期ヴィデオアートとテレビ放送

内容:当研究会で何度か参考文献とした「ヴィデオ・アートの歴史 その形式と昨日の変遷」(三元社)の著者である、クリス・メイ=アンドリュースを迎え、イギリスを中心にヴィデオアートの歴史と、また同時に進行していたテレビ文化とのクロスオーバーに関して紹介して頂く。

パネリスト:クリス・メイ=アンドリュース(Chris Meigh Andrews/ セントラルランカシャー名誉教授・西イングランド大学客員教授) 進行:瀧健太郎(ビデオアートセンター東京代表)

 今回は自らも作家活動を行っているアンドリュース氏の幅広い見識から、主にイギリス・アメリカなどのヴィデオ作家の作例を辿りながら、あまり語られることのないテレビとヴィデオ、放送とアートの往来に関する貴重なレクチャーをして頂くことができました。  テレビ、ヴィデオはカメラ、モニターなどの技術的な背景と、中継・即時性というメディウムの特性を共有しながらも片方は広域放送分野として、後者は現代美術分野の出来事として、横断的に見られることは多くありませんでした。アンドリュース氏の挙げる例により、1960年代後半に産声を上げた初期ヴィデオアートに関わるアーティストの何人かは、広域放送としてのテレビジョンを「自宅に居ながらにしてアート鑑賞ができる」という潜在的な観客であるとみなしていたことが分かりました。またそこで行われた数々の表現の試行では、物質性に囚われないアートの提示という新たなメディウムの可能性を作り手が感じていたこと、文化の発信方法として非中心的な構造と、また手法のフレキシビリティを意識していたことなどがわかりました。  ヴィデオアートの研究において、閉じた一つの表現区分として捉えるのではなく、同時代のこうした文化的な背景との関係性の中で考えることについて改めてその重要性を認識することができる、今後の研究活動につながる充実したお話をしていただくことができました。

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ヴィデオアート研究会の様子

参考リンク: http://www.meigh-andrews.com/

http://www.sangensha.co.jp/Author/author-Meigh-Andrews_Chris.htm

中部支部|2015年度第2回研究会

2015年度日本映像学会中部支部第2回研究会
日時:2015年12月5日(土)13:00より
会場:中部大学春日井キャンパス「不言実行館 ACTIVE PLAZA」一階「アクティブホール」
住所:〒487-8501 愛知県春日井市松本町1200
◎スケジュール
13:00〜13:05:開催校挨拶
13:05〜14:15:研究発表(2件)
林桃子会員
タイトル:リンケージを示すイメージリテラシー・ツール
要旨:
本研究は、電子ネットワーク社会におけるイメージの理解や発見をリンケージ(繫がり)を通して促すためのツールを開発することを目的としている。その基礎的な技術として、写真の形や色などの構成要素から類似検索することができるコンテンツベースト・イメージリトリーバル(CBIR)を用いている。人が写真を見る際の注視行動を、写真への注視範囲に関する調査用紙とアイカメラを用いた被験者の注視点データ分析により測定した。そしてその分析結果を考慮に入れ、写真の類似検索を通して三種類のリンケージを表わす機能を持たせたイメージリテラシー・ツールを開発した。
佐近田展康会員+伏木啓会員
タイトル:「映画における〈音〉の機能」ビデオクリップ集の制作を巡って
要旨:
本研究は、科研費基盤研究(B)「映画における〈音〉の機能──その多角的分析と映像教育資源の開発」(課題番号25284045、2013~2015年度)の助成を受けて進行中の研究であり、映画における「音」(声・音楽・物音・音響操作すべてを含む)について、過去の理論研究と映画作品事例の検証を通じて、それが果たしている「機能」を多角的に分析するものである。最終的な研究成果として、分析された音の機能が顕著に分かるシーン事例を映像化し、同一映像に対する〈音〉機能の有無や複数の解釈による音付けを比較対照できるオリジナルのビデオクリップ集を制作する。完成したビデオクリップ集は、理論的解説を付したうえで、インターネット上に無償公開することを企図している。
今回の発表においては、現時点における〈音〉の機能の分析枠組みを提示したうえで、ビデオクリップ集制作の進捗状況について報告したい。


14:30〜15:30:長門洋平氏によるご講演

タイトル:映画産業における「サントラ」レコードの諸問題――初期角川映画と薬師丸ひろ子を中心に

要旨:近年、日本の大衆文化産業における「メディアミックス」についての学術的議論がみられるようになってきた。しかし、わが国のメディアミックスに関するこれまでの言説において、映画と音楽との関係に関するまとまった考察はほぼ皆無である。本講演では、1976年に設立された角川春樹事務所=「角川映画」を代表するアイドル/女優/歌手の薬師丸ひろ子と、彼女の声を中心化した「サントラ」レコードに注目してみたい。スタジオ・システムおよび戦後日本映画の中核たるプログラムピクチャーの凋落から、異業種主導のメディアミックスへという時代の流れを決定的に印象づけた初期角川映画は、まさに日本映画界における「戦後」の終焉を象徴するプロダクションであったと言える。本講演の主眼は、薬師丸のサントラ・レコードに注目することで映画産業におけるサントラ盤の意義を整理するとともに、いわゆる「角川商法」が映画界に与えたインパクトを聴覚面から再考することにある。
長門洋平氏プロフィール:
国際日本文化研究センター機関研究員。総合研究大学院大学文化科学研究科国際日本研究専攻、博士後期課程修了。博士(学術)。
『映画音響論― 溝口健二映画を聴く』(2014年、みすず書房)にて、第36回サントリー学芸賞(〈芸術・文学部門〉)受賞。
15:30〜16:40:ディスカッション
-ディスカッサント:福田貴成氏(中部大学人文学部共通教育科教員)、尾鼻崇会員(中部大学人文学部教員)
17:30〜:懇親会(会場:中部大学春日井キャンパス「不言実行館 ACTIVE PLAZA」六階「アロハテーブル」)