第4回大会[1978年]報告

日本映像学会第4回大会
1978年11月17日‐19日
主催校:九州芸術工科大学
実行委員長:吉見 泰

 大会開催時の九州芸工大は、創立後10年を経過していたが、「芸術工科」という名称が映像学会会員に新鮮に思えたのであろう、九州という遠隔地にもかかわらず、多数の研究発表者と参加者があり、活気のある大会となった。小池新二初代学長が「design」邦訳し命名した九州芸工大は、ウルム造形大学をはじめとする、第二次大戦後のいわゆる「ニュー・バウハウス」の一例であった。1950年代から60年代にかけて再度花開いた、芸術と工学の総合というモダニズムの芸術理念それ自体は、1970年代の後半においてさほど新鮮なものでもなかった。というのも、メディア時代の到来によって、60年代末に芸術の動向に大きな転換があり、70年代に入るとモダニズムの芸術理念は、すでに風化しはじめていたのである。そのような状況の中で、この大会では、70年代に顕著なパフォーマンス・アートと都市環境の問題が、統一テーマとして提出された。

研究発表
豊原正智「映像の造形的研究」
河口洋一郎「画像形成における自然科学の構造モデル」
森下明彦「映像における運動」
小笠原隆夫「映画におけるnarativiteについて」
松本俊夫「映像における身体的了解性について」
網基義弘「模倣と認識」
佐藤 優「居住環境におけるデザインの役割」
今井 滋「イメージ環境としての広場」
重森弘淹「写真師・高野直太郎について」
深井 純「<去年マリエンバードで>について」
中川邦彦「ロブ=グリエ<マネキン>を映画によって読むことについて」
平野哲郎「ビジュアル・コミュニケーションを目的とした写真」
R・バーナー「人間のロールプレイングとビデオ」
J・アスケ・ダム「ビデオソフトにおける新しいコンセプト」
青柳房二「描写、マクロ分野における撮影倍率と最高分解能点について」
八木信忠「映像にともなう音声の定位弁別について」

シンポジウム「映像環境としての都市」
山口勝弘、中村善一、竹山実(司会 基調報告/岡田晋、問題提起者/吉積健)

記念講演
吉武泰水「夢における場」

映像作品展 統一テーマ「映像環境としての都市」
第I部ビデオ・パフォーマンス「video-cross-coutry」(製作 吉積健・伊奈新祐)
第II部個人出典作品
かわなかのぶひろ「キックワールド」
小林はくどう「火と水」
山口勝弘「ガウディ」
中谷芙二子「視覚のない視覚II」
山本圭吾「フット」
松本俊夫「モナリザ」
他にナムジュン・パイク、ビル・ビオラ等外国参加作品

エクスカーション
都府楼跡、観世音寺、太宰府天満宮、九州歴史資料館等

(執筆・記録:吉積 健)