第3回大会[1977年]報告

日本映像学会第3回大会
1977年11月19日‐21日
主催校:武蔵野美術大学
実行委員長:重森弘淹

 さまざまなジャンルに分かれた会員の関心を広くとらえ、最も今日的な課題を提起するテーマは何か─これはきわめてむずかしい問題です。様々な議論の末、最終的にまとまったのが、すでに発表した「映像伝達における意味作用について」というテーマでした。いうまでもなく、記号論・意味論は、今日われわれにとって最も魅力的な分野であり、研究途上にあるテーマです。しかし、何分にも広い領域にわたり、研究者によって記号・意味そのものに対する理解がずいぶん違います。とくに映像の分野になりますと、まだ研究成果も少なく、明確な方法すら確立していません。これを敢えて取り上げても、単に分散した議論に終わるのではないか、という懸念はたいへん大きいのですが、逆にいえば、それだから映像の広いジャンルをカバーし、冒険をおかして実りある成果が期待し得るのではないか。われわれはこの観点から、本テーマを取り上げることに踏み切りました。この場合の<映像>は、単に映画・テレビ・写真に止まらず、ひろく視覚媒体ないしイメージを指しています。そこで出席者もなるべく広くとり、渡辺淳、浅沼圭司、松本俊夫会員の外に、ゲストとして山田宗睦氏をお招きしました。(シンポジウム概要からの抜粋)

研究発表
平野哲郎「ビジュアルコミュニケーションを目的とした写真に関する研究・第一報─フォトグラムを中心として模索する」
今井 滋「グラフィック・デザイン教育における社会科学的接近による試みとその実際」
稲垣栄一「物語りの構造」
永田彰三「演劇と劇映画─その劇的なるもの」
岡田 晋「imageにおける物と世界」
武井邦彦「”見る”ことについての研究─新聞記事1808段に現れたる色彩語」
八木信忠「リュミエール兄弟のシネマトグラフについて」
吉積 健「映像の創造的機能」
中島 興「ビデオ・アースの運動について─ビデオ映像と写真のシャッターチャンスの諸問題」

シンポジウム「映像伝達における意味作用について」
渡辺淳、浅沼圭司、松本俊夫、山田宗睦(司会:岡田晋)

特別講演
水尾比呂志「美術研究における映像」

創作発表
Richard E. VERNER「COWORKS」
中川邦彦「LA PLAGE A DISTANCE」(映画)
徳橋昭三「コンピュータによる図形の変形」(パネル展示)

エクスカーション
ソニーPCL本社および八芳苑
アメリカ・CF最近作の上映と解説 浅井敬三
武蔵野美術大学学生作品上映と解説 岡井睦明、下村千早、土屋幸夫

(記録:黒坂圭太)