日本映像学会第12回大会
1986年6月14日‐16日
主催校:東京造形大学(6月14日は大学セミナーハウスで開催)
実行委員長:波多野哲朗
大会前年の代通信で、研究発表の内容充実を第1目標にすると宣言し、発表時間を各40分に延長し、また少なくとも3領域以上の分科会が成立するよう努力した。その結果、研究発表者の数は19人にのぼり、同時に3会場をしようするという未曾有の大会となった。特定の大会テーマは掲げなかったが、すでに迫りつつあったハイテクノロジー時代における人間の想像力の在りようについて論じ、また映像との関係を探求することはこの大会の大きな関心事であった。一方たとえ口頭発表ではあっても、映像作品の公開に付随するものは同時開催の映像展の枠組に入れ、研究発表という言葉の意味の明確化を計った。なお映像展には会員による作品発表のほか、第1回映像ユニバシアードを開いて映像の創造教育の問題にはじめて取り組むことになった。またごく些細なことではあるが、研究発表者名に慣習的に冠せられてきた○○大学所属という肩書きは、一切用いないようにした。
研究発表
犬伏雅一「写真記号論の行方」
武田 潔「メタ映画理論のために」
牧野 守「戦時下に於ける哲学者たちの映画理論研究」
飯村隆彦「ビデオの現象学─J・デリダ『声と現象』のビデオによるリアリゼーション」
土山 伸「パーソナル・コンピュータ・グラフィックスの展開」
福屋武人「タキストスコープによる映像認知基礎研究」
中川邦彦「C・メッツの大連辞論再読」
曽根幸子「映画と物語の問題─アルベール・ラフェの場合」
森岡祥倫「電子映像メディアにおける”個”(パーソナリティー)概念の特殊性」
小林はくどう「国立市に於けるコミュニティビデオのありかた」
井坂能行・赤松龍彦「映画編集”技法”をみつめ直す─試み その1」
林 三郎「映像メディアの学習 2」
山口勝弘「環境芸術とビデオインスタレーション」
横田正夫「映像理解における自我機能の役割」
岡田 晋「映画記号学から映画の精神分析へ」
加藤文一「プリズムの組合せによる大判立体映像の観察」
宇佐美昇三「発想別英語会話におけるディスプレイ・モデルの適用」
シンポジウム
「ハイテクノロジー時代の想像力」
木村恒久・端山貢明・森岡祥倫・柏木博(司会)
映像作品展
第1部 会員による映像展示
浅井敬三「1984年フランス優秀テレビCM」(VTRによる展示および口頭による発表)
田中 淳「ビジュアルパターン」(パネル展示)
ほしのあきら「きのうゆき」(8ミリ映画)
豊原正智「WINDOW」(ビデオ14分23秒)
柴田良二「どこへ行くの坊や」(3/4インチビデオ7分45秒)
第2部 映像ユニバシアード
大阪芸術大学(出品責任者/吉岡敏夫)
京都芸術短期大学(出品責任者/松本俊夫)
京都工芸繊維大学(出品責任者/黒崎彰)
九州芸術工科大学画像設計学科(出品責任者/伊奈新祐)
筑波大学MC総合造形(出品責任者/山口勝弘)
多摩美術大学(出品責任者/内山昭太郎)
東京芸術大学(出品責任者/内山昭太郎)
東京工芸大学短期大学部(出品責任者/岡村征夫)
東京造形大学(出品責任者/かわなかのぶひろ)
名古屋芸術大学(出品責任者/山口良臣)
名古屋造形芸術短期大学(出品責任者/山本圭吾)
日本大学芸術学部映画学科映像コース(出品責任者/真鍋信誠)
武蔵野美術大学(出品責任者/藤原俊樹)
以上参加校13大学 出品作品総数119作品
エクスカーション
イマジカおよびソニー・メディア・ワールドにおいて、ハイテクノロジー機器・装置を見学。
(執筆・記録:波多野哲朗)