第39回大会[2013年]報告

日本映像学会第39回大会
2013年6月1-3日
主催校:東京造形大学
実行委員長:諏訪敦彦
副委員長:小出正志

 日本映像学会第39回大会は去る6月1日(土)から3日(月)まで、東京造形大学を会場として無事に開催されました。大会報告に際し実行委員会を代表して、大会開催にご支援・ご協力いただいた関係者の全ての皆様に、この場を借りて深くお礼を申しあげます。
 東京造形大学における日本映像学会大会の開催は、1986年と2000年に続く3度目となりましたが、前回開催から10年以上を経て、過去の大会に比べ専任教員の会員数も少なくなり、また大会をお引き受けしたのが昨年8月末と開催まで9カ月余りという時期で、十分な体制を整えて準備をすることが困難な状況でした。幸い本学映画専攻を中心とする現職および退任された先生方の献身的な尽力により、大過なく盛況の内に大会を終えることができました。
 発表募集の遅れにも関わらず、研究発表48件、作品発表14件の計62件の申し込みがあり(最終的に60発表)、過去5年間でも日本大学芸術学部で開かれた第36回大会(2010年)の65件に次ぐ規模となりました。同様に大会プログラムの大会開催直前の会員への送付にも関わらず、参加者数は会員参加者171名(予定数150名)、一般参加者49名(同20名)、学生参加者33名(同40名)の計253名に及びました。これは有料参加者数に限る数字で、参加費を免除した東京造形大学の教職員・学生・院生は入っておりません。また3日目の特別プログラムは一般市民にも広く無料公開としたため、会員外にも学内外多数の参加者がありました。
 今大会は混迷を深める映像状況の下、テーマを「アウト・オブ・コントロール」とし、改めて学会創設の原点に立ち返り、改めて映像について考え直すことを目指し、記念講演やシンポジウム、特別プログラムを企画し、一定の成果を得ることができたと考えております。記念講演とシンポジウムの概要につきましては、別稿(会報第164号)をご覧ください。

■日本映像学会第39回大会 概要
●大会テーマ:アウト・オブ・コントロール(Out of Control)——映像的思考をめぐって
●会期:2013年6月1日(土)~3日(月)
●会場:東京造形大学
    〒192-0992
    東京都八王子市宇津貫町1556番地
    TEL:042-637-8111(代)
    FAX:042-637-8110
    URL:www.zokei.ac.jp
    最寄駅:JR横浜線相原駅

・主会場:4号館4-D教室
 開会式、記念講演、シンポジウム、研究発表、作品発表、通常総会、特別プログラム、閉会式会場
・副会場①~⑥:4号館4-B教室、同4-C教室、同4-E教室、2号館2-201~3教室
 研究発表会場、作品発表会場
・副会場⑦:2号館2-204教室
 発表者控室
・副会場⑧:2号館2-205教室
 作品上映会場
・副会場⑨:カフェテリア
 懇親会会場
・他会場①:1号館第3会議室
 実行委員会本部
・他会場②:1号館第1会議室
 理事会会場

●大会参加費:会員3000円、一般2000円、大学生・大学院生1000円(懇親会費5000円)
●発表数:研究発表 47発表
     作品発表 13発表
        計 60発表
●参加者数:会員参加者数 171名
      一般参加者数  49名
      学生参加者数  33名
           計 253名
※有料参加者数。特別プログラムを除く

●日本映像学会第39回大会実行委員会
諏訪 敦彦(委員長、日本映像学会理事)、小出 正志(副委員長、日本映像学会理事)、井坂 能行、太田 曜(日本映像学会常任理事)、沖 啓介、紙屋 牧子、かわなか のぶひろ、木船 園子、木船 徳光、土田 環、中島 崇、西村 智弘、宮崎 淳、河合 政之*、高橋 直治*、中嶋 莞爾*、渡辺 敦彦*(以上委員、*は非会員)、波多野 哲朗(顧問、日本映像学会元会長)

■日本映像学会第39回大会 プログラム
●6月1日(土)
・12:00-  参加受付開始[大学内バス停前(1号館1F)]
・12:50-13:00  開会の辞・開催校あいさつ[4-E]
諏訪 敦彦(日本映像学会第39回大会実行委員長、東京造形大学学長)

・13:00-13:50  記念講演[4-E]
「映像、あるいは映画、その反時代的考察」
吉田 喜重(映画監督)

・14:00-17:20  シンポジウム[4-E]
「Out of Control——映像的思考をめぐって」
パネリスト:兼子 正勝、キム ジュニアン、北野 圭介、河合 政之
司会・波多野 哲朗

・17:30-18:00  研究発表(【研】)、作品発表(【作】)
【研】吉田 馨:劇映画のシリーズ化とは何か——大映京都撮影所製作の『座頭市』シリーズを題材に[2-201]
【研】南家 識子:構造映画『The Flicker』(1966年)のデジタル再現について——デジタルとアナログのあいだから[2-202]
【研】笹川 慶子:京城における帝都キネマ演芸の興亡——朝鮮映画産業と帝国日本の映画興行[2-203]
【研】萩原 朔美、石原 康臣:朔太郎写真の100年後[4-B]
【研】松尾 好洋:映画用カラーフィルムの退色について——1950年代のイーストマンカラーネガ5248を手がかりに[4-C]
【作】野村 健太:『ガタゴトフィルム交換日記』——映像表現における「日記」について[4-D]
【研】石井 拓洋:古典的ハリウッド映画の音楽における「作者」——映画『廿日鼠と人間』(1939)の事例から[4-E]

・17:30-18:00  作品上映[2-205]

●6月2日(日)
・9:30-  参加受付開始[大学内バス停前]
・10:00-10:30  研究発表、作品発表
【研】小林 和彦:実写映像を円形加工した表現手法における撮影と完成映像の関連性の考察[2-201]
【研】畑中 朋子:映像フェスティバルをめぐる研究とネットワーキングの現状[2-202]
【研】藤田 純一:『モンキーシャインズ』Monkeyshinesの撮影——シリンダー式キネトグラフによる方法[2-203]
【研】今村 純子:情熱と受難のあいだに——G.トルナトーレ『ニュー・シネマ・パラダイス』をめぐって[4-C]
【作】栗原 康行:インナーチャイルド[4-D]
【作】太田曜:『L’Image de la Pucelle』16mm映画作品[4-E]

・10:40-11:10  研究発表、作品発表
【研】セハン ボリガ:ナム・ジュン・パイクにおける図像学——ドローイング作品を中心にして[2-201]
【研】矢澤 利弘:映画祭のマネジメント——バランスト・スコアカードの視点から[2-202]
【研】西村 智弘:日本においてアニメーションの概念はいかにして確立されたか——1950年代のアニメーションをめぐる状況について[2-203]
【研】成田 雄太:邦文字幕と活動弁士についての研究[4-B]
【研】向野 佑:映画『悪魔の首飾り』におけるフェラーリの表現分析[4-C]
【作】杉田 このみ:今日、この島に私がいます——瀬戸内・陸月島を舞台にした映像プロジェクトの取り組みと考察[4-D]
【作】水由 章:『RADICAL WATER』——撮影~現像~編集~加工~映写 ハンドプロセッシングでの映像製作[4-E]

・11:20-11:50  研究発表、作品発表
【研】西尾 千尋:繰り返しと姿勢——ブルース・ナウマン初期ビデオアート作品におけるパフォーマンスの生態心理学的分析[2-201]
【研】陣内 利博:モノガタリ考——メキシコでのアニメーションワークショップから[2-202]
【研】小出 正志:アニメーションとアニメーション研究の独自性と総合性の再検討——映画・映像および美術や漫画などとの関係性を踏まえて[2-203]
【研】ノルドストロム ヨハン:スタジオP.C.L.——社内労働関係を「クラブ・ニュース」からみる[4-B]
【研】山本 祐輝:映画『ロング・グッドバイ』の擬似ヴォイス・オーヴァー——原作に対する批評的機能について[4-C]
【作】井上貢一:Motion Cube JS——Interactive Visual Toy[4-D]
【作】末岡 一郎:AURORA——フィルムの肌理について[4-E]

・12:00-12:30  研究発表、作品発表
【研】齋藤 理恵:1970年代の日本におけるビデオ・アートと対抗文化との関わり——ドキュメンタリー映画『キカイ デ ミルコト——日本のビデオアートの先駆者たち』を題材に[2-201]
【研】宮下 十有:博物館におけるデジタルカメラワークショップ——2D/3Dカメラの導入と子どものまなざし[2-202]
【研】宮本 裕子:初期アニメーションにみられる自己言及性——初期映画研究から初期アニメーションを考える[2-203]
【研】草原 真知子:明治日本のパノラマ館——各地のパノラマ歴訪の旅[4-B]
【研】西岡 恒男:アラン・レネ『二十四時間の情事』(1959)における都市の表現[4-C]
【作】芦谷 耕平:TVアニメーション『ジョジョの奇妙な冒険』における表現の革新性とその一考察[4-D]
【作】大島 慶太郎:Thinking Dot——アナログ銀塩メディアにおける技法的探求[4-E]

・12:30-13:30  昼食[10号館カフェテリア]
・13:30-14:30  第40回通常総会[4-D]

・15:00-15:30  研究発表、作品発表
【研】宮田 徹也:実験映像の側面——上映場所の考察[2-201]
【研】溝渕 久美子:戦時下における映画脚本の懸賞に関する考察——第1回「国民映画脚本募集」と小糸のぶ[2-202]
【研】木村 晶彦:戦前・戦中期における日本のアニメーションキャラクターの感情表現の変遷[2-203]
【研】西尾 祥子:パブリック・ビューイング体験を通じたメディア・イベント論の再考——日独オーディエンス分析を題材に[4-B]
【研】駒井 政貴:『女郎蜘蛛』における砂漠の風景とオリエントというテーマについて[4-C]
【作】万城目 純:『水竹物語』[4-D]
【作】丸池 納:4K高精細映像制作共同研究——『青い薔薇』作品上映[4-E]

・15:40-16:10  研究発表、作品発表
【研】原田 健一:宮本馨太郎——9.5mmパテ・シネマと民俗映像のあいだで[2-201]
【研】河野 真理江:日本映画におけるメロドラマの概念の再検討——1930年代から60年代まで[2-202]
【研】森友 令子:『白蛇伝』と『白雪姫』の背景描写にみるファンタジーの描かれ方[2-203]
【研】高橋 克三:街の記憶を共有するためにしなければならない10のこと。——映像アーカイブによる街おこし[4-B]
【研】玉田 健太:運動と経済——D. W. グリフィス『小麦の買い占め』(A Corner in Wheat, 1909)をめぐって[4-C]
【作】風間 正、大津 はつね:記憶のマチエール5〈D-24〉[4-D]
【研】竹内 正人:P.O.Vを定義する——Point of View Shot共にする映像[4-E]

・16:20-16:50  研究発表、作品発表
【研】大橋 勝:スタン・ヴァンダービークのメディア的身振り——コンピュータ・フィルムを中心として[2-201]
【研】小倉 史:風俗映画のなかの聖書——映画『月曜日のユカ』における統御不可能な女性像[2-202]
【研】渡部 英雄:商業アニメ制作に対する教育指導方法についての一考察——習作アニメ『がんばれ!金太郎』を通して[2-203]
【研】佐伯 知紀、佐藤 洋:ナショナル・フィルモグラフィー——日本映画情報システムについて[4-B]
【研】中垣 恒太郎 エッサネイ期(1915-16)のチャップリン——「放浪者」像の生成とアメリカ文化[4-C]
【作】黒岩 俊哉:実験映像作品『nHr °1』[4-D]
【研】鈴木 清重:動画像系列に知覚される事象の同一性に関する映像心理学的研究[4-E]

・17:00-17:30  研究発表、作品発表
【研】川崎 公平:幽霊と選択——1970年前後の怪談映画をめぐって[2-201]
【研】中村 聡史:『めぞん一刻』×『めぞん一刻』——田中陽造と澤井信一郎による「ラブコメ漫画」の実写映画化に関する一考察[2-203]
【研】岡島 尚志:フィルム生産縮小時代の映画保存——“フジ・ショック”後のフィルム・アーカイブ[4-B]
【研】角井 誠:ルノワール・タッチ——『スワンプ・ウォーター』における俳優演出[4-C]
【研】赤坂 勇:映像技術革新の理性は今後コントロール可能だろうか?——創造性と破壊性、その技術革新の理性を問う[4-E]

・18:00-20:00  懇親会[10号館カフェテリア]
・10:00-17:00  作品上映[2-205]

●6月3日(月)
特別プログラム〈上映+トーク〉[4-E]
協力:松竹株式会社、東京国立近代美術館フィルムセンター、有限会社スタンス・カンパニー
・9:30-  受付開始[大学内バス停前]

◎第一部 吉田喜重監督作品特別上映
『嵐を呼ぶ十八人』(1963年、吉田喜重監督)
・10:00-  上映
・12:00-13:00  トーク
吉田 喜重、筒井 武文、諏訪 敦彦

◎第二部 サイレント映画弁士・伴奏付き上映
『乙女シリーズその二 花物語 釣鐘草』(1935年、川手二郎監督)
弁士:片岡 一郎、伴奏:柳下 美恵
・14:00-  上映
・15:00-15:30  トーク
片岡 一郎、柳下 美恵、筒井 武文、紙屋 牧子(聞き手)

・15:30  閉会の辞 諏訪 敦彦

■日本映像学会第39回大会 作品上映
●6月1日(土)17:30-18:00 [2-205]
・16mmフィルム上映 計33分20秒
太田曜『L’Image de la Pucelle II』12分
水由章『RADICAL WATER』6分40秒
末岡一郎『AURORA』6分40秒
大島慶太郎『Thinking Dot』8分

●6月2日(日)10:00-12:00 [2-205]
共催:日本映像学会映像表現研究会・同アナログメディア研究会準備会

・16mmフィルム上映 計53分
水由 章『水光色』7分
西村 智弘『青い歩道橋』7分
末岡一郎『Ein Sommer in Deutschland』7分
宮崎淳『BORDER LAND』15分
太田 曜『根府川』6分
伊藤 隆介『当映画館にて上映されます』5分
大島 慶太郎『blur』6分

・BD/DVD上映 計57分20秒
万城目 純『水竹物語』DVD、18分
風間 正/大津はつね『記憶のマチエール5〈D-24〉』DVD、18分
丸池 納『青い薔薇』BD/DVD、11分
黒岩 俊哉『nHr °1』DVD、5分20秒
野村 健太『ガタゴトフィルム交換日記』DVD、5分

●6月2日(日)12:00-12:30 [2-205]
・DVD上映 計33分30秒
日本映像学会映像表現研究会ISMIE(インターリンク 学生映像作品展)選抜作品
前田 結歌『まえだかるた』9分50秒(東北芸術工科大学)
山崎 廣人『みえないもの』5分40秒(京都精華大学)
林 紗綾香『パブリックと庭』4分(北海道教育大学)
原 藍子『A DAY』7分30秒(日本大学芸術学部)
鈴木 紀之『fragment』6分30秒(早稲田大学川口芸術学校)

●6月2日(日)15:00-17:30 [2-205]
・16mmフィルム上映 計33分20秒
太田曜『L’Image de la Pucelle II』12分
水由章『RADICAL WATER』6分40秒
末岡一郎『AURORA』6分40秒
大島慶太郎『Thinking Dot』8分

・BD/DVD上映 計71分30秒
芦谷 耕平『ジョジョの奇妙な冒険』DVD、8分30秒
杉田 このみ『今日、この島に私がいます』DVD、30分
栗原 康行『インナーチャイルド』BD/DVD、60分

●終日(6月2日11:20-11:50除く) [2-205前廊下]
井上 貢一『Motion Cube JS——Interactive Visual Toy』PCによるインタラクティブ作品

付記:本報告は全体報告を諏訪敦彦大会実行委員長に代わり実行委員会の小出正志副委員長が、記念講演の報告は同じく土田環委員が、シンポジウムの報告は同じく波多野哲朗顧問が担当した。

会報第164号より抜粋)