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日本映像学会 映像テクスト分析研究会
2016年度第2回(通算第15回)研究発表会 開催のお知らせ
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日本映像学会会員各位
映像テクスト分析研究会の研究発表会を下記のとおり開催します。
みなさまのご来場をお待ちしています。
日本映像学会映像テクスト分析研究会
代表 藤井仁子
■日時===========================
2017年3月4日(土曜日)15時開始~17時30分終了予定
(発表後、休憩をはさんで質疑応答あり)
■会場===========================
早稲田大学 戸山キャンパス 36号館2階演劇映像実習室(283教室)
〒162-8644 新宿区戸山1-24-1
最寄り駅:地下鉄東京メトロ東西線「早稲田駅」、副都心線「西早稲田駅」
交通アクセス
https://www.waseda.jp/top/access/toyama-campus
キャンパス案内図
http://www.waseda.jp/top/assets/uploads/2016/10/20161020toyama_campus_map.pdf
*スロープは上らず、スロープと工事フェンスの間の狭い通路を抜けて31号館に
突きあたったところで右折し、正面の階段を上っていただくのが近道です。
(あるいはスロープを上がり、31号館と33号館の間を通って中庭を抜けてください。)
■発表者==========================
藤井仁子(早稲田大学)
■表題・概要===============================
「忘れられた人」宇宙へ行く――『未知との遭遇』の政治神学
1977年に公開されて大ヒットを記録した『未知との遭遇』は、同年の『スター・ウォーズ』とともに従来のSF映画にあった政治的な隠喩性やディストピア的な想像力をほぼ一掃した。友好的で意思疎通の可能な異星人を登場させてジャンルを脱政治化することに成功したこのフィルムは、しかし他方では別種の政治性をおびることにもなった。独立200周年を記念したナショナリズムの昂揚のなかでファシスト映画として批判を浴び、のちにレーガン政権を成立させるに至るヴェトナム戦争後の反動を象徴するものと見なされたのである。それらの批判がすべて当たっていたとはいえないにせよ、このフィルムが持つ独特な〈代表=表象〉の構造がそうした批判を招いたことは否定できない。
本発表では、リチャード・ドレイファスによって演じられた幼稚な主人公が男として父として落伍者であるだけでなく、「普通の人」(ジョン・ドウ)のステレオタイプにもニューシネマ的なアンチヒーローにもなりそこねた「忘れられた人」であった点に着目する。ここで「忘れられた人」というのは、彼のような存在がアメリカ映画にとって――そもそも社会にとって――可視的な階級を形成しえず、それゆえ自らの利害を自分自身の名で主張することもできないでいるという事実を強調したいがためである。『未知との遭遇』では、そんな「忘れられた人」が政府、軍、科学者といった既存の権威との政治的な力学を無視するかたちで突如異星人から聖痕を授けられ、ついには地球人類を代表する一人として晴れがましく宇宙船に乗りこんでいく。その不可解な過程を仔細に検討したい。このフィルムが、普遍的な娯楽としての古典的ハリウッド映画の理念が崩壊したのちに、もはや言語を打ち負かすまでに圧倒的な視聴覚のスペクタクルによって新たなバベルの塔を建設する企ての一部でもあったという見通しのもとに、議論は大衆化された神学的側面にも及ぶことになろう。公開から40年の時を経てアメリカ政治と日米関係の転機に立ち会いつつある現在のわれわれにとって、奇妙に切実な発表になるかと思う。
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お問合せ先:
日本映像学会東部支部 映像テクスト分析研究会
代表 藤井仁子
〒162-8644 新宿区戸山1-24-1
早稲田大学文学学術院
e-mail: jinfujii(a)waseda.jp