メディア考古学研究会(第1回)ダイジェスト映像公開のお知らせ

メディア考古学研究会(第1回)ダイジェスト映像公開のお知らせ

メディア考古学研究会では、先日3月11日(土)に板橋区立教育科学館で開催したメディア考古学研究会(第1回)「「動く」装置でよみがえる戦前の天災と防災意識」のダイジェスト映像を下記サイトで会員向けに限定公開しております(2023年9月30日まで)。

https://youtu.be/xsiqgscIMDE

明治期の幻燈機での実演、昭和初期のローヤルベビー映写機によるフィルム上映、蓄音機でのレコード演奏の様子などをまとめた6分程度の短い動画ですので、ぜひご高覧ください。

メディア考古学研究会代表
福島可奈子

写真研究会 2022年 第10回研究発表会開催のお知らせ【3月21日】

******************************
日本映像学会  写真研究会
2022年度第10回研究発表会開催のお知らせ
******************************
日本映像学会会員各位
写真研究会の研究発表会を、対面、オンライン併用にて開催致します。皆様のご参加をお待ちしております。
日本映像学会写真研究会
代表  佐藤守弘

開催概要
日時
2023年3月21日(火・祝) 14:00開始 17:30終了予定(日本時間)
場所
同志社大学今出川キャンパス良心館 RY320(定員30名)およびリモート開催
参加方法
*事前申し込み制
上記会場にての対面とリモート配信でのハイブリッド方式で開催いたします。会場参加、リモート参加とも、こちらのフォームからお申し込み下さい。いただいたメールアドレスに参加方法をお知らせします。
https://forms.gle/LD2g4wBiWdUThndq5
なお、先着順で会場定員が埋まってしまった場合は、リモートでの参加をお願いすることもありますので、その場合はご了承ください。

発表者・発表内容
発表1
「写真家及び写真集編集者としてのジョン・シャーカフスキー——写真集The Idea of Louis Sullivan(1956)の分析を通して」
山際美優(同志社大学大学院文学研究科美学芸術学専攻博士前期課程)

発表2
「写真における「日常」とコンセプチュアル・アート以後の芸術——ジェフ・ウォールの写真観」
折居耕拓(大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士後期課程)

発表3
「儀礼の国の肖像:国家戦略としてのタイ写真史からアピチャッポンまで」
中村紀彦(映像/アピチャッポン・ウィーラセタクン研究)

研究発表の要旨
発表1
「写真家及び写真集編集者としてのジョン・シャーカフスキー——写真集The Idea of Louis Sullivan(1956)の分析を通して」
山際美優(同志社大学大学院文学研究科美学芸術学専攻博士前期課程)
 ニューヨーク近代美術館の写真部門のディレクターとしての活動で知られるジョン・シャーカフスキー(John Szarkowski, 1925-2007)は、2005年の展覧会によって、彼の写真作品が注目されている。写真家でもあったシャーカフスキーは、キュレーター職に就く以前に二冊の写真集を、退職してから更に一冊の写真集を制作、出版している。本発表で対象とする写真集The Idea of Louis Sullivanは、「形は機能に従う」の言葉で知られるルイス・サリヴァン(Louis Sullivan, 1856-1924)の建築を対象に、シャーカフスキーが撮影・編集・文章の選択を行った、第一作目の写真集である。冒頭であげた、2005年にサンフランシスコ近代美術館で開催された展覧会”John Szarkowski : Photographs”では、未発表の資料の公開、時系列的な整理が行われたが、写真及び写真集そのものの精緻な分析には至っていない。
 そこで、本発表ではシャーカフスキーと同時期にサリヴァンの建築を撮影したアーロン・シスキンド(Aaron Siskind, 1903-1991)らによる写真を比較対象として取り上げる。これらの比較により、シャーカフスキーの写真は、建築の構造を精緻に写し取ったり、一つの画面としての構図の美しさを追求するものではなく、夾雑物の写り込みも厭わず対象を撮影し、経年劣化の様子をも積極的に写し取っていることを指摘する。その上で、シャーカフスキーによる写真集制作の理念を整理する。これにより、シャーカフスキーが目指したのは、サリヴァンの建築を「美的・社会的文脈」に戻すことを目的に、「形」のみでなく「生活」を写した写真制作を行っていたことを確認する。そして、写真と文章の組み合わせによって、写真では建物が生み出した「結果」を、文章では建物が生み出された「原因」を示しており、サリヴァンの同時代性とシャーカフスキーの現代性を実現しようとしたことを指摘する。これらの指摘は、文脈を廃し、形だけで判断を行い、写真というメディウムの純粋視覚性を目指したとされる、従来のシャーカフスキーのモダニスト及びフォルマリストとしての一面的な評価を相対化するための一助となるだろう。

発表2
「写真における「日常」とコンセプチュアル・アート以後の芸術——ジェフ・ウォールの写真観」
折居耕拓(大阪大学大学院文学研究科文化表現論専攻博士後期課程)
 本発表では、バンクーバー出身の写真家にして美術家であるジェフ・ウォール(Jeff Wall, 1946-)の作品と著述を対象として、彼の作品と著述の両方のうちに指摘される「日常」(the everyday)の観念に注目することから、彼の写真観を浮き彫りにすることを試みる。
 ウォールは、大型のライトボックスにカラーの透明フィルムを貼りつけた写真作品で知られる。一見ありふれた日常の場面を写す彼の写真は、撮影前の演出と撮影後の合成をとおして入念に構築されたものであり、同じイメージのうちにありのままの様子ととわざとらしい様子が混在する。
 アメリカの美術史家であるマイケル・フリードは、『なぜ写真はいま、かつてないほど芸術として重要なのか』(2008)において、こうしたウォールの写真作品におけるいわば演出されたリアリズムを、彼のインタビューに見られる「日常」や「ありふれたもの」(the commonplace)という観念に関連づけることから論じている。フリードにとってウォールの写真における「日常」とは、「撮影されることなく過ぎ去った」出来事の外観を復元したものである。言い換えれば、たんなる自然の断片であった光景は、制作者によって適切な視点をあたえらえることで初めて芸術作品になる。
 このように芸術作品がそれ自体のうちに自律性を有することを求めるフリードの解釈は、1960年代に展開された彼のモダニズム的美術史観に立脚するものであり、それゆえウォールの仕事におけるある側面を意識的に考慮していないと思われる。それはコンセプチュアル・アートにおける写真の役割をめぐる彼の議論である。本発表では、フリードが指摘する「日常」や「ありふれたもの」の観念から出発して、これらの視点からウォールが論じる1960年代後半以後の「フォトコンセプチュアリズム」をとらえ返してみたい。
 議論の流れとしては、まず、上述のフリードのウォール論における「日常」の観念について整理したのち、ついでウォールの論考「「取るに足らないものの印」——コンセプチュアル・アートにおける/としての写真の諸相」(1995)および「河原温のトゥデイ・ペインティングにおけるモノクロームとフォトジャーナリズム」(1996)に目を移していきたい。これらの論考におけるウォールの記述をふまえて、コンセプチュアル・アートにおけるありふれた自然らしい画像の使用は、一方でその芸術としての地位を否定するものでありながら、他方で描写という写真の本質的な特性を明らかにしたということについて論じる。以上の議論をとおして、本発表では、「日常」の観念が、「自律的な芸術」としての写真と、むしろ自律性や固有性に反する「理論的な対象」(ロザリンド・クラウス)としての写真という、ウォールの作品と著述から引き出されてきた相異なる写真観をともに構成する論点であるということを指摘する。

発表3
「儀礼の国の肖像:国家戦略としてのタイ写真史からアピチャッポンまで」
中村紀彦(映像/アピチャッポン・ウィーラセタクン研究)
 本発表は、タイの国王や王族による肖像写真を用いた国家戦略の歴史的位置づけを検討し、タイ出身の映像作家アピチャッポン・ウィーラセタクンをはじめとする同世代作家の諸実践にたいする影響関係を分析するものである。
 タイでは、国王や王族の巨大な肖像写真が都市を埋め尽くし、農村部ではそれらの写真が信仰の対象となってきた。国王や王族の肖像写真は権力の表象であると同時に、国家と国王の身体を同一化させるイデオロギーを維持・保管する装置として機能した。
 国王と写真技術は、その当初から密接な関係を築いてきた。1845年には現在のバンコクに写真機が渡来し、1855年にラーマ4世(モンクット王)がはじめて国王として自身の肖像写真を撮影した。モンクット王は自身の肖像が映ったダゲレオタイプをヨーロッパ圏の権力者や指導者に贈るなど、国王の肖像は政治的なツールとして用いられたのである。こうした写真技術と国王の接近は、発表者が論じてきた映画(投影)のテクノロジーと国王の関係性と近しい戦略であると考えている。
 ところで、地理学者のトンチャイ・ウィニッチャックンが指摘したように、国家による地図作成という行為が新しいシャムを創造した。つまり、国家の仮想的な領土を地図上に先立って投影した結果、近代的なタイの国民国家の空間概念と国家の意識形成が編み出されていった。この一連をトンチャイは「地理的身体(geo-body)」の形成という。発表者はさらに、この地理的身体が構築/維持される過程で、国王の肖像の拡散と浸透による国家戦略が写真技術と手を結んだことが重要であると推測している。
 以上のような国王の肖像による国家戦略の影響は、映画の「投影」という営為と相互に高め合った。1932年には、家庭内や会社や店舗、そして映画館での映画上映前に肖像写真を掲げることを保証する法律が制定された。以後、ラーマ8世(プミポン国王)や政府によってイメージ戦略は大規模に展開され、今日の国王の象徴的な力が確立された。このことは、イメージと種々の儀礼のもとに国民を統御する「儀礼的空間」をタイ全土に形成するに至ったのである。
 この「儀礼的空間」を批判的に検討することは、アピチャッポンの諸作品のひとつの主題であるはずだ。とはいえ、国王イメージの国家戦略と表現の検閲は、かれの制作の障壁であると同時に想像力の源泉のひとつであることも否定できない。本発表は、このジレンマの渦中にある作家たちの写真/映像表現をいくつか取り上げたい。以上のことから発表者は、国王の肖像を用いた国家戦略によって構築されたタイ写真史の一側面をまずは素描し、近代タイ国家の意識形成に国王の肖像が与してきたことを明らかにする。そして、アピチャッポンや同世代作家にも目配せをしながら、王政のイメージ戦略や「儀礼的空間」の創出を批判的に作品表現へと昇華させるあり方を分析する。

第25回ヴィデオアート研究会【3月23日】開催のお知らせ

第25回ヴィデオアート研究会(3月23日)開催のお知らせ
日時:2023年3月23日(木)19:30-21:00
オンライン開催(ZOOM会議形式)

アクセス方法:
当日17時までに下記メールにご連絡頂ければ、ZOOMのアクセス先のURLをご返信致します。

内容:飯村隆彦「ヴィデオ・フィールド」ヴィデオ・テープ作品のアーカイブ作業検証
本研究会は、ヴィデオアートのアカデミックな研究と、制作や展示現場のフィールドワークを交互に行なう方針で発足されました。今回はオンライン開催の研究会で、2022年7月に他界した飯村隆彦のヴィデオ・テープ作品の修復・保存作業の過程と成果についての検証を行いたいと思います。アーカイブ作業にかかわったスタッフによる作業プロセスの紹介と、先月の「恵比寿映像祭2023飯村隆彦特集」(https://www.yebizo.com/jp/program/2361)や現在京都で開催中の展覧会「飯村隆彦 ヴィデオ・フィールド」(http://www.moriyu-gallery.com/exhibition/index.html)などでデジタル化された飯村作品が紹介された経緯と成果について報告します。

パネリスト: 服部かつゆき、西山修平、大江直哉ほかアーカイブ作業スタッフ
(飯村隆彦アーカイブ準備室)

進行:瀧健太郎(ビデオアートセンター東京/飯村隆彦アーカイブ準備室/学会員)

お問合せ:
日本映像学会ヴィデオアート研究会
代表 瀧健太郎
e-mail:taki.kentarouebony.plala.or.jp
https://jasias.jp/study_group/videoart

日本映像学会第49回大会(明治学院大学)参加申込について【5月15日〆切】

日本映像学会会員各位

日本映像学会第49回大会(於:明治学院大学、2023年6月10日、11日)の参加申し込みのページがアップされました。
参加申し込み締め切りは、2023年5月15日となっております。
参加される会員の方は忘れずにお申し込みください。
尚、会員(学生会員を除く)に限りインターネットでの3,000円の参加費支払いが可能となっておりますので、ぜひご利用ください。
※当日、大会受付での支払いは現金のみとなります。
※学生会員の方は、大会受付のみの現金支払いとなります。必ず学生証を提示してください。

参加申し込みに際して幾つかの留意点があります。
・参加費領収書は大会窓口でお渡しいたしますが、領収書が必要な方は、申し込みフォーマットに「領収書の宛名」の項目がありますので、忘れずに記入してください。
・「会員」「学生会員」のチェックボックスがありますので、忘れずにチェックしてください。学生会員の方は、大会当日窓口で必ず学生証を提示してください。

大会参加申し込みのURLは下記の通りです。
https://jasias.jp/eizo2023/apply

多くの会員の皆様の参加をお待ちしております。

日本映像学会第49回大会実行委員会
meigaku-conventionjasias.jp

日本映像学会第49回大会(明治学院大学)HP

アジア映画研究会(第3期第17回)開催のお知らせ【4月4日】

日本映像学会のみなさま

アジア映画研究会(第3期第17回/通算第50回)を下記のとおり開催します。オンライン開催ですので、お気軽にご参加いただければ幸いです。

日時:2023年4月4日(火)18時~20時
場所:Zoomによるオンライン開催/事前申込制
申込:3月28日(火)締め切り

下記URLより事前登録してください。 登録後、ZOOMミーティングのアドレスが届きます。
https://docs.google.com/forms/d/1WPohB8roRp0uMV258vmX7vs7X9szg4ydJCcqhxSJ_XI/edit

<内容>
①発表:ショーレ・ゴルパリアン氏
(映画プロデューサー、翻訳家、東京芸術大学大学院映像研究科客員教授)
「著書『映画の旅びと イランから日本へ』を語る」
2021年にみすず書房より刊行された著書『映画の旅びと』について、ご講演いただきます。お話のあとは10分ほど質疑応答の時間をとりたいと思います。
出版社のサイト『映画の旅びと イランから日本へ』
https://www.msz.co.jp/book/detail/09033/

②発表:夏目深雪氏
(映画批評家、編集者、多摩美術大学講師)
「編著『韓国女性映画 わたしたちの物語』を語る」
2022年に河出書房新社から刊行された編著『韓国女性映画』について、研究会会員に語っていただきます。現在Tokyo Art
Beatで連載中の『#Me Too以降の女性映画』の内容も絡め、他国の女性映画との比較や、最新の韓国女性映画についても触れる予定。10分ほど質疑応答の時間をとりたいと思います。
出版社のサイト『韓国女性映画』
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309292168/

12月座長:金子遊

2022年度 西部支部研究例会・総会のご案内【3月26日】

【日本映像学会西部支部 2022年度 研究例会・総会のご案内(3月26日(日))】

下記のとおり日本映像学会西部支部2022年度研究例会・総会を開催いたします。
対面のみでの実施です。
万障お繰り合わせの上ふるってご参加ください。

日時:2023年3月26日(日) 14:00~17:30
   (発表14:00~、総会17:00~)
場所:九州産業大学芸術学部17号館6階 デジタルラボ601
(九州産業大学アクセス https://www.kyusan-u.ac.jp/guide/summary/access.html

1)高 戈(九州産業大学大学院芸術研究科博士課程3年)作品発表
タイトル「映像インスタレーション作品『束縛』についての考察」
 『束縛』は、2022年に制作された、映像インタレーション作品で、人が二人座ることができるソファーと円形の光ファイバースクリーンで構成している。
 ソファーには、人が座る座面の左側に、8万本以上の光ファイバーを使い、人の尻のサイズに合わせた小さなスクリーンがある。ここには、ソファーの座面に人が座った跡の皺を一年間写真で撮影した映像が映っている。ソファーの皺からブラックホールへと変化する映像は、孤独の痕跡を表している。
 円形光ファイバースクリーンは、ソファーの前に置かれ、観客はソファーに座りながらリビングルームでテレビを観るように体験する。スクリーンは直径が80cm、50万本以上の光ファイバーを円形の金具で固定した。光ファイバーはその形の自由度から、象徴的な意味を表現できる。また光ファイバーの実験を行うなかで、光ファイバーそのものの美しさを発見したため、ソファーに加え円形のスクリーンも作ることにした。
 円形スクリーンにはプロジェクタによって映像が投影されている。光ファイバーは、片方の端から入った光を、もうひとつの端から一対一で出力するため、両側から同一の映像を観ることができる。この特性は、インターネットなどの光情報通信のインフラとして使用されている。今回の作品では、遠く離れた別の国同士が共有する、海底の光ファイバーケーブルの横断面を象徴しながら、情報データが互いに伝送される様子を象徴している。
 映像は、人が都市の中で歩いたり走ったりするシーンを360度カメラで撮影したものである。人が時計の針のように動く様子は、ハムスターホイールのなかのネズミのように、いくら走ったとしてもそこから逃れることができない様子を表している。
 ソファーと円形光ファイバースクリーンの映像は、時々入れ替わりながら繰り返す。この作品は現代の日常生活において、人がインターネットとスクリーンから離れられないことを表現している。

2)有吉末充(法政大学非常勤講師)研究発表
タイトル「アニメーション制作ワークショップのアクティブラーニングとしての効果」
 この30余年のあいだ、神奈川、京都、東京で児童、学生、大人向けのアニメ制作ワークショップを開催してきた。
 当初はアニメの制作技法の指導を目的にしていたが、現在はコミュニケーションを学ぶためのアクティブラーニングとしての側面を重視するようになった。
 この変化には、ふたつの要因がある。ひとつは、有吉の学校図書館司書として探求学習(調べ学習)の指導に参加した経験で、調べ学習として効果を上げるためには、これまでのような情報探索指導だけではなく、メディア表現法の指導も必要であること、そして「研究発表をより良い形で仕上げる」という課題の達成のためには指導者(教師、司書)と生徒間、生徒と生徒間のコミュニケーション、コラボレーションがなによりも重要であることの発見である。この経験は有吉が参加した日本図書館協会の情報リテラシー指導ガイドラインにも反映されている。もうひとつは継続的にワークショップに参加している児童、生徒の人間関係に大きな変化が現れたことの発見である。彼らは互いに協力したり批判したりすることを通して、次第に相互の人間関係を成長させ、目標の達成というゴールにこぎ着けたことによって、自己肯定感を獲得していったように見える。
 このような経験をもとに現在ではワークショップのプログラムを、チーム活動メインにし、そのメンバー間での話し合いを促し、その中で協力関係を作り出して、「限られた時間の中で作品を完成させる」という課題に取り組むためのアクティブラーニングとして組み立てる方向に変化させてきた。
 今回の発表では、これまでのワークショップのあり方の変化について総括し、最近の府中市でのワークショップでの成果もふまえて、今後の展開を探りたい。

3)佐藤慈(九州産業大学芸術学部)研究発表
タイトル「教育・研究分野におけるデジタルサイネージの可能性」
 デジタルサイネージは、屋外や店舗に設置された画像表示機器を通して、広告、販売促進、情報提供などを目的としたコンテンツを表示するシステムの総称である。人の注意を引きやすい動画やインタラクティブ性のあるコンテンツを利用できることから、従来のポスターや看板に代わる新しいメディアとして活用が広がっている。
 九州産業大学芸術学部では、地域の文化や産業の振興を目的とした産学連携活動において、学生が主体となってデジタルサイネージを制作するプロジェクトを実施してきた。例えば、学生によってリ・デザインされた博多人形の広報・宣伝を目的としたプロモーション動画および双方向型デジタルサイネージ、博多帯と着物のコーディネートをシミュレーションできるプロジェクション・マッピング、学生と大川市の家具メーカーのコラボレーションによって開発された商品の展示会場における接客コンテンツ、久留米織のデザイン嗜好調査を目的としたデザインシミュレーター、福岡の伝統的工芸品の魅力を若年層に伝えるための3DCGアニメーションなどが挙げられる。
 デジタルサイネージは、動画や音声の活用による訴求力の高さに加え、新しいデジタル技術を取り入れやすいことから、学生の技術力や応用力の向上などの教育効果も期待できる。また、コンテンツを企画するにあたり、地域の歴史や文化について調査する必要があるため、地域学習と技術修得の機会を統合的に提供することができる。さらに、さまざまなセンサーを活用して、視聴者に関するデータを収集することで、学生や連携企業・団体へのフィードバックも可能となってきた。今回の発表では、これまで実施したプロジェクトの成果について報告するとともに、教育・研究分野におけるデジタルサイネージの可能性について考察する。

4)斉 琛(九州産業大学大学院芸術研究科博士後期課程2年)作品発表
タイトル「ビデオアート作品『meta-』について」
 映像作品『meta-』は、7つのチャプターによるビデオアート作品である。実験映像のノンリニアな物語スタイルを継承しながら、ユングの提唱した「アニマ(anima)」と「アニムス(animus)」をテーマとしている。男性のたくましい肉体には、「アニマ anima」と呼ばれる女性像が内在し、女性の繊細な心には男性像「アニムス animus」が潜んでいるというものだ。アニマとアニムスは、ラテン語の「アニマ」(魂, soul)と、「アニムス」(精神, spirit)に由来するが、両者はある程度交換可能な概念として捉えられる。私たちの意識的な態度がどうであれ、無意識はしばしばそれと対立する見解を抱いており、無意識が異性の「人格」を担っていることを示唆する。
 またアニマは、無意識の中の男性と「陰」に関わる側面を表し、アニムスは、女性の潜在的な「陽」を表すと理解することができる。それらはどちらも「生命を越えたもの」として捉えられ、私たちのイメージの中である種の強力な印象形成の力を持つ。
 本作で使用したショットには、身体の写真と抽象的なイラストのコラージュや、生物実験室にあるヒト胚性細胞の映像などがある。各細胞の「性」は、分子間の複雑な相互作用のネットワークによって、決定され制御されていると考えられているが、前述の「アニマ」と「アニムス」の概念は、これらの原始的な生物細胞の振る舞いと重なり合う部分がある。この生物細胞には、男性と女性という区別を越えた多様性があり、バイナリな構造の世界の中でいかにしてジェンダーを超越し、自らの性差を覚醒させるかという潜在力を持っている。本作ではこれらの映像を、美的なモチーフとしてだけではなく、性差を超えた存在から、身体=無意識のコンセプトを表す象徴として用いている。

西谷 郁(西部支部研究会代表)
連絡先 日本映像学会西部支部
住所 〒815-8503 福岡市東区松香台2-3-1
九州産業大学芸術学部内(超 瑞)
e-mail xiguyugmail.com

映像テクスト分析研究会 2022年度(通算第22回)研究発表会【3月29日】

******************************
日本映像学会 映像テクスト分析研究会
2022年度(通算第22回)研究発表会 開催のお知らせ
******************************
日本映像学会会員各位

映像テクスト分析研究会の研究発表会を下記のとおり開催します。
対面のみでの開催です。みなさまのご参加をお待ちしています。

日本映像学会映像テクスト分析研究会
代表 藤井仁子

■日時===========================
2023年3月29日(水曜日)15時30分開始〜17時30分終了予定
発表後に休憩をはさんで質疑応答あり
※発表に先立ち13時から参考上映を行ないます(日本語字幕あり、VHS画質、126分)

■発表者==========================
藤井仁子(早稲田大学)

■会場===========================
早稲田大学 戸山キャンパス 36号館2階演劇映像実習室(283教室/定員60人)
〒162-8644 東京都新宿区戸山1-24-1
最寄り駅:地下鉄東京メトロ東西線「早稲田駅」、副都心線「西早稲田駅」
https://www.waseda.jp/flas/hss/access/

■表題・概要===============================
これはシナトラではない——伝記映画としての『抱擁』における俳優とキャラクターの相克

 戦後の低迷期を乗り越え鮮烈な復活を遂げた1950年代のフランク・シナトラにとって、最大の収入源が実は映画とテレビであったという事実はあまり注目されることがない。なかでも1957年に主演したチャールズ・ヴィダー監督『抱擁』(The Joker Is Wild)は、親友だったコメディアン、ジョー・E・ルイス(1902-1971)の伝記を原作とし、自ら映画化権を買ってパラマウントに売りこんだほどのシナトラにとって特別な野心作だった。今日ではもっぱら主題歌「オール・ザ・ウェイ」によってのみ記憶されているこの魅力的な細部に満ちたフィルムで、シナトラはもちろん主人公のルイスを演じているのだが、奇妙なことにそこにはシナトラその人の実人生が嫌でも二重写しになってくる。さらには〈影〉の主題、イメージと身体の分離の問題が絡んでくることで、事態はますます錯綜していくだろう。本発表は、フィクション映画における俳優の身体イメージと想像上のキャラクターとの競合関係にかんするジャン=ルイ・コモリのよく知られた議論を踏まえ、その特殊な一ケースとして『抱擁』を分析することを目指す。そして何より、これほど見応えのある一作がアメリカでも日本でもまともに評価されていない(ソフト化もされていない!)という現状への憤りを、一人でも多くの参加者と共有したいと願う。

******************************

お問合せ先:
日本映像学会 映像テクスト分析研究会
代表 藤井仁子
〒162-8644 新宿区戸山1-24-1
早稲田大学文学学術院
e-mail: jinfujiiwaseda.jp