日本映像学会関西支部第102回研究会(3月8日)のお知らせ
下記の通り日本映像学会関西支部第102回研究会を開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。
日時:2025年3月8日(土)午後2時00分より4時30分頃まで。
会場:神戸大学 六甲台第2キャンパス 眺望館1階Vルーム
研究発表1:ビル・ヴィオラの初期作品における時間
発表者:国立民俗学博物館 望月由衣会員
要旨:
本発表は、ビル・ヴィオラ(1951-2024)の初期作品における、音と映像の関係を時間という観点から考察することを目的とする。ヴィオラは、1951年にニューヨークに生まれ、1972年に初のヴィデオによる作品を発表する。ヴィオラが制作を始めた頃は、様々な作家がヴィデオを使った作品の制作を始めた時期であった。当時学生だったヴィオラは、学内や学外でヴィデオに触れて、自身の作品の制作を始めた。ヴィオラは同時代の作家たちと同様に、ヴィデオの技術を習得し、ヴィデオの特徴の中でも時間について考えるような作品を多く制作した。またヴィオラは音についても関心が高く、学生の頃からバンド活動を行っており、ナムジュン・パイクの作品についても、時間の構成だけでなく、そこにリズムを生じさせていることを指摘している。
本発表で考察をする作品は、シングルチャンネルのヴィデオ作品である《移動》(1976)と《歯と歯の間に》(1976)である。《歯と歯の間に》は、「For Songs」という4作品が収録されている作品集の中の1作品である。考察をする2作品は、ヴィオラの初期作品の中でも、音が特徴的な作品である。《移動》は、ゴングの音が響き、《歯と歯の間に》では、男性の叫び声が聞こえる。ヴィオラの発言を手がかりに、初期ヴィデオ作品における音と映像の関係を時間という観点から分析し、それが音によって映像と生成されるイメージをつなぐという関係であることを論証する。
研究発表2:映画はどのように日本野球を表したか:占領期を中心にした考察
発表者:神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート・学術研究員 大谷晋平会員
要旨:
本発表は、映画と近代スポーツの連関を体系的に明らかにする大きな狙いを持ちつつ、占領期に映画が野球をいかに民主主義イデオロギーのイメージとして機能させようとしたのかを明らかにするものである。
本発表の背景は下記の通りである。
1872年にアメリカ人教師のホーレス・ウィルソンが第一大学区第一番中学校にbaseballを伝えて以来、日本では今日まで野球は人気スポーツとして位置付けられてきた。ただ、その歴史を紐解くと、大学スポーツの黎明期において教育との関わりから野球の有害性が語られたり、反対に、野球は武士道と結びつくものとして肯定的に語られたりしながらさまざまに意味が付与されてきた。さらに、戦時には敵性スポーツとして制限されることもあったが、戦争が終わると民主主義イデオロギーを体現するものとしてGHQに後押しされて日本の映画業界も関わりながら本格的にプロ野球が花開いていく。
そうした、時代の流れによって多様に読まれ方が変容した野球の展開には必ずメディアが関わっていた。その中でも特に映画は、競技を表象するメディアとしても、また、1950年代を中心に映画業界のプロ野球経営参入という産業面においても、戦前から戦後、そして現代に至るまで深く関わっている。すなわち、その時々における野球の読み解かれ方を背景としながら、映画は野球とイデオロギーの連関や日本プロ野球運営の歴史にも組み込まれてきたのである。
しかし、これまで日本の映画と野球の関わりについて体系的に論じられることはほとんど無かった。そこで、本発表ではそうした体系的な研究構築を睨みながら、イデオロギーと映画、野球が編み直されていく時期――占領期――に注目する。そこでは、CIEの映画検閲資料や、戦前から戦後にかけてのスポーツ論評にも触れながら、武士道イデオロギーの体現から民主主義イデオロギーの象徴として野球の持つ意味が変容させられる歴史的流れを抑え、野球に付随するイデオロギーのイメージを描く映画表現がどのようなものであったのかを明らかにする。
研究会会場:神戸大学 六甲台第2キャンパス 眺望館1階Vルーム
交通アクセス https://www.kobe-u.ac.jp/ja/site/access/
最寄駅からのアクセス https://www.kobe-u.ac.jp/ja/campus-life/general/access/rokko/#station
構内マップ https://www.kobe-u.ac.jp/ja/campus-life/general/access/rokko/rokkodai2/
キャンパス・マップの99番(一番手前、海側)が眺望館
日本映像学会関西支部事務局
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