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関西支部第94回研究会【6月25日】

日本映像学会関西支部第94回研究会(6月25日)のお知らせ

下記の通り日本映像学会関西支部第94回研究会を関西学院大学上ヶ原キャンパスにて開催いたします。多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2022年6月25日(土)午後2時より4時頃まで。

研究発表1:前近代の放浪者—1970年代の瞽女映画
発表者:京都大学大学院 人間・環境学研究科博士前期課程 内山翔太会員
要旨:
 本発表は、盲目の女性の旅芸人である瞽女を描いた、映画『津軽じょんがら節』(斎藤耕一監督、1973年)と『はなれ瞽女おりん』(篠田正浩監督、1977年)について論じるものである。瞽女の活動は近世中期から明治にかけて全盛を迎え、そののち衰退したが、1970年代には再び、消滅の危機にある瞽女に注目が集まっていた。本発表では、上記2つの作品をこうした「瞽女ブーム」のなかに位置づける。その上で、まず、作品公開時の製作者や批評家、観客の言説を調査することで、当時、瞽女のなかに日本の起源が見出だされていたことを指摘する。作品に関する当時の言説は、かつての日本の文化が失われつつあることを悲観するとともに、消滅の危機にあった瞽女を消えていく日本文化と重ね合わせていた。過去に存在した文化を懐かしみ、その喪失を嘆く態度は、とりわけ『はなれ瞽女おりん』において、作品のメロドラマ性となって表れている。次に、本発表の後半では、なぜ日本の起源が瞽女に求められていたのかについて考察する。
 1950年代から1970年代の日本では、高度成長にともなって都市が急速に拡大し、農村から都市部へと大量の人口が流入していた。流入した人々の多くは都市においても安定した地位になく、故郷を失ってさまよう、いわば放浪する人々であった。ここでは、特に『津軽じょんがら節』のテクストを分析することによって、こうした高度成長期の放浪する人々こそ、瞽女に日本の起源を求める主体であったことを指摘する。以上を踏まえ、本発表の最後では、1970年代に製作されたこれらの作品において、瞽女が日本の起源として見出だされた主な理由は、高度成長期の放浪する人々が、前近代のやはり放浪する人々であった瞽女に、自らを重ね合わせていたからだと結論する。

研究発表2:アニメーションの疑似知覚(ver.2)―パペットとCGIからみた物質性による意識構成の違い
発表者:関西学院大学文学研究科博士課程後期課程 洪愷均(ハン・カイチュン)会員
要旨:
 パペットアニメーションとCGアニメーションの美学的な相違を探求する際に、多くの人々は主に実体の有無に注目し、それによる実体性と認識性の相違を中心に説明する傾向が強かった。例えば、ロシャ(Rocha, E. 2012)も制作時にメディアに残された指紋や動きの不自然さなどのアニメーターの行為と結びついた物理的な痕跡の働きを焦点とし、それによる「触感(sense of touch)」と「触覚性(tactility)」からパペットアニメーションのほうがより強い体感(embodied experience)をもたらせると主張した。また、アニメーターのアルベルト(Alberto, C. 2019)はパペットアニメーションの魅力を「アニメーションとフィギュアの間で行われるライブプレイによる、数時間かけて施された様々なディテールだ」と述べた。
 しかし、日進月步の機械的進化につれ、現在のCGI技術において、実体性はおろか物体表面の紋や毛などの細かいディテールもすべでリアルに再現できるようになっている。また、パペットにディテールが見えると言っても、決して誰もがその触感に気づいたり、そのことを反省しようとしたりはしない。さらに、パペットとCGIの双方に共通してコマ数を減らすことにより、その動きは不自然さという基準で統一される。したがって、互いの美学的な比較にはもはやより一層基盤的かつ概念的な新しい基準点が必要とされる。それを見極めるために、本発表ではサルトルの唱えた「イマジネール」及びキム・ジュニアンの「観賞装置」という主張を中心において、パペットとCGIのそれぞれの物質性について存在論的な角度から着目し、観賞時における観客の異なる意識構成とその原因について再考察を行う。

会場:関西学院大学上ケ原キャンパス F号館203教室
交通アクセス:https://www.kwansei.ac.jp/access/uegahara
キャンパスマップ:https://www.kwansei.ac.jp/cms/kwansei/pdf/about/campus/nuc2022.pdf
※当日、F号館1階は別学会の研究会が開かれております。日本映像学会関西支部研究発表会場はF号館2階になりますのでご注意ください。

日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内(大橋)
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
email:eizouosaka-geidai.ac.jp

2022年度 研究会活動費助成の公募について(応募締切:2022年6月27日12:00)

日本映像学会 会員各位

 平素より日本映像学会にご参加およびご協力いただきありがとうございます。映像にかんする研究・活動の活性化を図るために、研究会が企画・運営する本年度の研究活動に対して研究会活動費助成の公募をおこないます。有意義と期待される研究活動や、継続的な研究活動を続けている研究会、および新規発足の研究会による研究活動の奨励を目的とします。「2022年度研究会活動費助成申請書」に必要事項を記入の上、応募期限までにご提出ください。
応募された「研究会活動費助成申請書」については審査委員会による研究・活動計画内容、実施の実現性などについて厳正な審査のうえ、助成対象となる研究・活動計画を決定します。

〆切は2022年【6月27日(月)12:00まで(厳守)】となっております。
みなさまのご応募お待ちしております。

日本映像学会 研究企画委員会

詳細のご案内や本年度の申請フォーマットは、以下よりダウンロードしてご使用ください。*予算書、決算報告書も新書式になっています。
2022年度研究企画委員会による研究活動助成について」.pdf
2022年度研究会活動費助成申請書」.xlsx
日本映像学会 研究会活動費助成 予算書」.docx
[参考]「日本映像学会 研究会活動費助成 決算報告書」.docx *研究会活動費の運用についての報告書式

2022年度 春期新規研究会登録申請について(応募締切:2022年6月27日12:00)

日本映像学会 会員各位

平素より日本映像学会の活動にご参加・ご協力いただき、ありがとうございます。
日本映像学会では会員のみなさまに活発な学会活動をおこなっていただくため、2022年度の春期新規研究会を募集します。
従来の研究会にない枠組みでのご活動を検討されている方、映像学への新たな視点をお持ちの方、是非ご申請ください。

同時に「研究会活動費助成」の申請をご検討の方は、こちらをご覧ください。

〆切は2022年【6月27日(月)12:00まで(厳守)】となっております。
みなさまのご応募お待ちしております。

日本映像学会 研究企画委員会

詳細のご案内や申請フォーマットは、以下よりダウンロードしてご使用ください。
2022年度_春期新規研究会登録申請について.pdf
新規研究会登録申請書.xlsx

日本映像学会第48回大会1日目(6月4日)シンポジウム ウェビナー登録

日本映像学会会員各位

第48回大会(京都大学)の1日目(6月4日)シンポジウムのウェビナーの登録は、下記よりお願いいたします。
(日本映像学会会員も登録が必要・非会員も登録可能)
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_VbilJD6fS9eaxxYPF7MWUQ

シンポジウム:カメラを持った女——ジェンダー、創造行為、労働
14:00 開会のご挨拶(木下千花大会実行委員長)
<Part 1>
14:05 講演「女たちの声、子どもたちのまなざし―『ここに生きる』(望月優子監督)の映した失業、貧困、労働」(鷲谷花会員)
休憩(14:45-15:00)
<Part 2>
15:00 座談会「言葉・身体・記憶——映像作家の実践」
登壇者:熊谷博子(映画監督)、山城知佳子(映像作家)、横浜聡子(映画監督)、斉藤綾子(日本映像学会会長)
司会:木下千花

みなさまのご参加をお待ちしております。

*付記:『ここに生きる』(望月優子監督)の配信リンクは5月27日までに公開予定です。
*日本映像学会第48回大会HP:https://jasias.jp/eizo2022/about
*日本映像学会Facebook:https://www.facebook.com/JASIAS1974

会報第194号を発行しました。

会報第194号(2022年5月15日)を発行しました。
以下のPDFよりお読みください。

JASIAS_NewsLetter194

PDFがウィンドウに表示されない(画面が真っ白や真っ黒等)ときは、
ウィンドウ右下端のサイズ調節をマウスで動かして調節してみてください。
ウィンドウの幅のサイズが会報の幅のサイズより大きいときなどに、
PDF表示画面が出ずに真っ白や真っ黒の画面になることがあります。
また、文字が一部しか表示されないときは、URL表示のそばにあるリロードボタンをクリックしてみてください。

会報への会員による投稿につきましては以下の投稿規定をお読みのうえ、末尾の連絡フォームによりご連絡ください。のちほど担当よりご連絡申し上げます。

日本映像学会 会報 投稿規定(2017年10月 理事会決定)

1.投稿資格

(1) 投稿の時点で正会員の資格を有していること。

(2) 投稿者本人が執筆者であること。共著の場合は、投稿者が筆頭執筆者であり、必ず他の共著者全員の承認を得た上で投稿しなければならない。

2.投稿内容

(1) 映像に関する研究を推進し、広く映像文化の向上に寄与するもの(「日本映像学会会則」第2章第4条にもとづく)。

(2) 未発表のもの。二重投稿は認めない。投稿者自身の既発表論文や口頭発表と関連がある場合には、そのことを必ず明記すること。

(3) 投稿者は、自らが著作権を有しない著作物や図版などを引用するに際しては、著作権法(第32 条第1項)が定める引用の条件に則って行なうものとし、必要な場合はその著作権所有者の許諾を得なければならない。

3.字数

(1) 字数は自由(1ページは2,400字程度・複数ページも可)

(2) 図版を添付する場合には、図版の大きさを文字数に換算し、全体の文字数に含める。

4.体裁

(1) 完成原稿であること。

(2) メール本文に、題名、執筆者名、住所、電話番号、Eメールアドレス、所属等を記すこと。なお、総務委員会が原稿を確認し、事務局からEメールで「原稿受付」の通知をする。

5.提出方法

(1) 電子データをメール添付で事務局に送信すること。

(2) メール本文にOSの種類とソフト名(Wordもしくはテキスト)を明記すること。

6.投稿先

E-mail: officejasias.jp

7.校正

著者校正は初校のみとし、以後は総務委員会が行なう。

8.著作権

会報に発表された研究報告等の著作権は日本映像学会に帰属する。他の著作に転載する場合には、事務的な手続きのため、事前に文書等で学会に連絡し、転載する際に、会報への掲載に関する基本的な書誌情報を明記すること。

9.締切

投稿は随時受け付ける。

10.その他

(1) 掲載の可否については、総務委員会が決定する(一部改稿を求めることもある)。また、「採否の通知」は事務局からEメールで送信する。

(2) 投稿原稿掲載部分はPDF電子版会報の内としてホームページ上で一般公開

以上


第49回通常総会について

日本映像学会会員各位

6月4日、5日に開催される大会(京都大学)の第三通信についてご連絡いたしましたが、
例年大会開催期間中に開催される通常総会につきましては、3月19日の理事会において、大会の開催形態にかかわらず、昨年と同様に書面議決にて行う事が決定されました。
「通常総会は毎会計年度終了後3ヶ月以内に開催する」という会則第17条の規定通りに実施すべく、準備をしております。
会員の皆さまには、郵送での議決投票にご協力賜りますようによろしくお願い申し上げます。

会長 斉藤 綾子

映画ビジネス研究会 2022年度 第1回 研究会【5月14日】

※開始時間が変更になり30分繰り下がり、16時開始となりました

映画ビジネス研究会「2022年度 第1回 研究会開催のお知らせ」(オンライン開催)
(zoomによるオンラインで開催します。申し込み方法は最後にあります)

発表:劉文兵会員(大阪大学)
テーマ:コロナ下の中国映画市場と、日本映画の上映
日 時:令和4年5月14日(土) 16:00〜17:30

概要:
中国映画の市場規模はここ20年間で60倍に膨れ上がり、2012年に日本を抜き、北米に次ぐ世界第2位のシェアまで上り詰め、15年には日本のそれの4倍となり、17年の時点で日本円1兆円を超える市場規模を誇るようになった。しかし、コロナの影響で20年の興収は204.17億元(3707億円)にとどまり、400億元(7263億円)以上が失われたと言われている。そして、21年にいたると、コロナ以前の7割程度まで回復してきている。コロナ下の中国映画市場の現状を多くのデータをもって分析する。
いっぽう、中国での日本映画の上映は、主に「一般公開」と「国際映画祭」という二つのルートを通じて行われている。2016年より、毎年10~20数本の日本映画は中国の映画館で一般公開され、「上海国際映画祭」「北京国際映画祭」においても数十本の新作が上映されつづけている。日本映画上映の最新事情も合わせて紹介する。

劉文兵(リュウ ブンペイ) プロフィール
大阪大学言語文化研究科准教授。東京大学大学院総合研究科超域文化科学専攻表象文化論コース博士課程修了。博士(学術、2004年)。著書に『日本の映画作家と中国』(弦書社、2021)『映画がつなぐ中国と日本』(東方書店、2018)『日中映画交流史』(東京大学出版会、2016)『日本映画在中国』(中国電影出版社、2015)『中国抗日映画・ドラマの世界』(祥伝社、2013)『中国映画の熱狂的黄金期』(岩波書店、2012) 『証言 日中映画人交流』(集英社、2011)『中国10億人の日本映画熱愛史』(集英社、2006) 『映画のなかの上海』(慶應義塾大学出版会、2004)。日本映画ペンクラブ賞(2016)奨励賞を受賞。

司 会:田村順也(株式会社ティ・ジョイ 総務部総務室総務チーム サブ・マネージャー)

申し込み方法
参加をご希望の方は、メールアドレス<eigabusinessjasiasgmail.com>まで、ご氏名・ご所属を記して5月10日(火)までにメールで申し込んで下さい。
送信元メールアドレスに、zoomのURLを5月13日(金)までに返信いたします。

2021年度 西部支部研究例会のご案内【3月27日】

2021年度 西部支部研究例会のご案内

西部支部では、2021年度研究例会を下記の通り開催したします。
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2021年度西部支部研究例会
日時:2022年3月27日(日) 15:00-17:00
会場:Zoom Meeting によるオンライン開催
参加方法:
下記メールアドレスに「ご所属」「ご氏名」を本文に含め、メールにてご連絡ください。折り返し Zoom Meeting の参加リンクを返信いたします。
参加連絡メール:kuroiwamail.kyusan-u.ac.jp
参加連絡締切:3月27日(日) 12:00(正午)までに、メールにてご連絡ください。
担当: 九州産業大学芸術学部 黒岩俊哉
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– 研究例会 –
発表者1:文 芝瑛(東亜大学芸術学部准教授)
タイトル:「記憶のアーカイブ -映像における時間性と記憶の再現について-」
概要:私が映像を使う理由は、時間性と視覚的情報を同時に再現できるものだからだ。これまで制作してきた作品の多くは、上映ではなく、ギャラリーや美術館で展示という形で発表してきた。これを私は映像インスタレーションと名付けたい。
 『海のかなたで(beyond the sea)』(2013)は、福岡を行き来する船の中で撮影を行なった。生まれ育った釜山と長年住んでいる福岡、どこに「帰る」のかわからない複雑な気持ちから着想し、「波」の色が変化していく様子を映像にしたものである。この作品は、偶然にも同じ名前の作家との2人展「KIZUNA-絆-」において発表した。また、釜山で開催した個展「Nalda・舞い上がる」において展示された映像インスタレーション『Nalda』(2014)は、「時間の経過とともに色褪せていくように、辛い思いも悲しい思いも、うっすらと記憶のかけらになる。しかし、その記憶のかけらはなかなか消滅せず、何かのきっかけでスイッチが入ると蘇る。この「記憶」と「時間」の間で悩む自分」を対象にした映像である。
 『アント』(2016)は、生きることに対する問いのような作品である。人はひとりだけの時間を必要とする存在だが、ひとりだけでは生きることができない。今まで多くの人に出会い、これからも多くの人に出会い、時間と空間を共有して生きていく。これをモチーフに新たな可能性の模索をするため、3Dアニメーションとモージョングラフィックを用いて制作し、福岡市のアートスペース貘での個展「Alone or together(林)」において発表した。『The Shadows』(2016)は友人と行った旅先でのエピソードをモチーフにした友情に関する物語りになっており、実写とモーショングラフィックなどをミックスする方法で完成させている。それ以降も、実写とアニメーション、モーショングラフィックなど多様な手法をミックスさせる方法を用いて映像を作ってきた。
 さらに、今は「旅する胞子」シリーズを通して、微々たる存在が少しずつ自分の領域を広めていく様子をオブジェと映像を用いて表現している。これは更なる可能性への実験に近いものとして、映像とモノの表面がぶつかり合って作り出す、反乱する光と色の空間に観客が自ら入り込んで、直接体験するような形の作品になっている。観客が経験したその空間での記憶をさらに記録していくことが今後の課題である。

発表者2:西谷 郁(西南学院大学非常勤講師)
タイトル :「映画祭における交流・観光・創造 〜福岡と釜山における独立映画の交流・育成事業をとおして」
概要:2009年よりスタートし今年で13年を迎えた福岡インディペンデント映画祭は継続して釜山のインディペンデント映画界と交流を続けてきた(釜山国際短編映画祭、メイドインプサン独立映画祭、インターシティ釜山映画祭など)。
 約13年にわたるインディペンデント映画の交流と育成活動を通じて、釜山と福岡の映画制作をめぐる製作・上映環境の差異と共通点を分析し明らかにする。福岡や釜山は国際映画祭が開催される中核的な地方都市であり、風光明媚な旧所名蹟を訪れ余暇も求める観光地というよりも、イベントや食などに集約された都市観光が注目され人気が高い。
 福岡と釜山の独立映画祭において、両映画祭の参加者は自らの作品の上映と質疑応答だけではなく、都市を代表する市場や学校など都市の観光を楽しみ、市民との交流から次回作の構想を練り、次回も自身の作品を福岡や釜山で上映するという目標を持ち次回作へのモチベーションを高めようとしていた。チャン・リュル監督の『福岡』『柳川』もそうした活動の中から制作された事例の一つであろう。
 こうした福岡と釜山の映画祭における交流と観光行動を分析し、それが映像制作の創作性とどのように深く関係しているのか、考察する。さらに、福岡と釜山という持続可能な地域間交流の在り方を模索し、新たな創造性を誘発している事例を考察したい。

写真研究会 2022年 第8回研究発表会開催のお知らせ【4月2日】

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日本映像学会  写真研究会
2022年 第8回研究発表会開催のお知らせ
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日本映像学会会員各位

写真研究会の研究発表会を、新型コロナウイルス感染拡大防止のため下記のとおりオンラインにて開催致します。皆様のご参加をお待ちしております。

日本映像学会写真研究会
代表  倉石 信乃

【日時】
2022年4月2日(土) 15:00 開始 18:30 終了予定(日本時間) *オンラインによる開催。

【参加方法】*事前予約制 会議システム zoom を利用して 催いたします。下記URLにあるフォームから事前にお申し込み下さい。いただいたメールアドレスに zoom の ID とパスワードをお送りいたします。
登録期限は 4月1日12時 までとさせていただきます。
申し込みURL : https://forms.gle/c52RkGXEhNNrCXC49

【発表 ・発表内容・座談会】
発表1
「伝・島津斉彬、カロタイプ写真の位置づけの検討」
安藤千穂子 京都工芸繊維大学博士後期課程

発表2
「「差意識」から写真を考える−沖縄の事例から」
亀海史明(沖縄県立博物館・美術館 学芸員)

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【研究発表の要旨】
発表1
「伝・島津斉彬、カロタイプ写真の位置づけの検討」

安藤千穂子(京都工芸繊維大学博士後期課程)

 本発表は、 薩摩藩主の島津斉彬(1809−58)が作製に関わったとされるカロタイプ写真の、日本の黎明期における位置づけを検討するものである。この紙陰画(ネガ) の撮影年代は1850年代半ばと伝わり、被写体は鹿児島城の一部と推定されている。日本人が作製したカロタイプ写真として唯一現存するとともに、人以外の被写体が選択された日本の最初期の写真でもある。
知られているように、1857年にはダゲレオタイプで島津斉彬の肖像が撮影されている。つまり薩摩藩では、ダゲレオタイプとカロタイプという異なる技法によって、人と人ではない被写体の写真が作製された。その発想については、同藩で参照されていた和訳書と、その原本となった舶来の写真技法書に記された解説からの影響を指摘できる。
 ダゲレオタイプによる島津斉彬の肖像写真については、遺影の側面が先行研究によって指摘されている。発表者はこれに被複製性と技術的展開を加え、明治期に撮影され続けたアンブロタイプの肖像写真への連続的展開を推定している。一方、鹿児島城の紙陰画については、その後の日本における写真の展開との関連性が定かではない。この点にたいする発表者の研究は端緒についたばかりではあるものの、本発表では、現存するカロタイプ写真の 明期における位置づについたばかりではあるものの、本発表では、現存するカロタイプ写真の黎明期における位置づけを考察してみたい。
薩摩藩では、他に二点の紙陰画が作製されたようだ。いずれも現時点では現物を確認できないが、早くは1925年の『朝日グラフ臨時増刊 写真百年祭記念号』で紹介されている。一点は、端号の節句の行事を写したと推定できる陰画である。もう一点は、鹿児島城の一部を写した陰画であり、被写体や構図等から、現存するカロタイプ写真に近い印象を受ける。藩主という立場にあった島津斉彬にとって、城は、身近な撮影対象となったことだろう。動かない城は、初学者にとって取り組みやすい被写体であったとも想像される。
 上述のように鹿児島城の紙陰画は、既に日本人のなかに、人以外の被写体が選択肢としてあったことを示している。しかし当時、「日本の風景」を写真におさめたのは、主に使節団やプロの写真家をはじめとする来日西洋人であった。そこで発表者は、鹿児島城の紙陰画を「風景写真」とみなして、 膨大な風景写真が含まれる「横浜写真」との関係性を探ってきたが、制作者や受容者の違いから、比較対象とすることの困難さに直面した。したがって原点に戻り、鹿児島城の紙陰画を城という被写体で捉え直して、現存する幕末・明治期の写真をたどった。その結果、『旧江戸城写真帖』(1871年)をはじめとする城を被写体とした写真が、客観的な記録写真として撮影されている点に注目できた。
 以上をふまえ本発表では、名所浮世絵的な写真との比較も含めつつ、幕末・明治期の城の写真に見出せる記録性を考察しながら、島津斉彬にゆかりとされるカロタイプ写真である紙陰画の、写真黎明期における位置づけを検討する。

発表2
「差意識」から写真を考える −沖縄の事例から

亀海史明(沖縄県立博物館・美術館 学芸員)

 本発表は、沖縄県立博物館・美術館の所蔵作家に関する調査研究をもとに、沖縄ゆかりの写真家の証言を紹介しながら、写真について考える試みとしたい。その際、新川明の「差意識」に関する思考を手がかりとしたい。新川明は、1970年前後において、川満信一、岡本恵徳らとともに沖縄で展開されたいわゆる「反復帰論」の中心的な論客のうちのひとりである。これらの思考では、1969年における日米両政府の沖縄「返還」合意と、1970年に実施された「国政参加選挙」などのプロセスを経て、その政治決定に絡めとられてしまう沖縄の状況を痛烈に批判するものとして展開されたが、新川は「差意識」に注目し、意識の深層に刻印された、いわば内面の「差意識」を自覚することで、「〈国家としての日本〉に寄せる「復帰」の思想=忠誠意識を沖縄が歴史的、地理的に所有してきた異質性=「異族」性によって扼殺する」ことを「反復帰」の闘争として掲げた。ここで肝腎なことは、「差意識」とは、〈国家としての日本〉への「同一化」の不断のプロセスに伴う「みずからの内なる痛み」として生じるという点にあるといえる。こうした「同一化」のプロセスは時を変え立場を変えて遍在し、様々な言葉で個人を抑圧しうる。だからこそ「個の位相」から出発して「差意識」を思考することは、いまもなお充分にアクチュアリティを持った試みであるといえるのではないか。今回は、所蔵作家から石川真生、伊志嶺隆などいくつかの証言を紐解きながら、合わせて写真を考える機会とする。特に石川真生については、2021年に実施した企画展「石川真生展:醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ。」によって、包括的に紹介する機会を設けることができた。「組織と人は別」と語る写真家は、被写体である個人に役を与えて写真を撮る「創作写真」といわれる手法を継続しているが、〈沖縄芝居−仲田幸子一行物語〉(1977-1991)など最初期のシリーズから演劇への関心を持っており、演じ手が「素(ルビ:す)に戻る」 隙をついた写真を多く残している。個人が役割からはみ出た隙の写真は、必ずしも油断した様子ばかりではなく、「観る−観られる」という非対称な関係性を超えて、観ているこちらに切迫しもする。写真に潜む「撮る−撮られる」という非対象に対する被写体の「裏切り」は、様々な立場に囚われ矛盾や葛藤を抱える各々の個に内在する「差意識」のたたかいの結果ともいえ、時には写真家の、ひいては観者の想像をも超えた写真となって現れてくるのではないだろうか。
*************************************
以上
日本映像学会写真研究会
代表 倉石 信乃
明治大学理工学部
〒214-8571 川崎市多摩区東三田1-1-1