日本映像学会関西支部第72回研究会(5月10日)のお知らせ
下記の通り日本映像学会関西支部第72回研究会を開催いたします。
日時:平成26年5月10日(土) 午後2時より
会場:神戸芸術工科大学 3号棟クリエイティブセンター2F (3204教室)
研究発表1:スクリーンの拡大とその余波 ―ワイドスクリーン映画の導入にともなう撮影様式の変化について
発表者:北浦寛之会員(国際日本文化研究センター)
要旨:日本の映画産業がライバルの新興映像産業であるテレビ産業の勃興に対して採った最大の技術的対策が、1957年より始まったワイドスクリーン映画の製作である。アメリカではすでに1953年に20世紀FOX社が、シネマスコープというワイドスクリーンの規格を公開し、日本でも、その技術を応用した東映スコープや東宝スコープといったスコープ映画が普及を見る。スコープ映画は従来の縦横比1:1.37だったスクリーンが、アナモフィック・レンズという特殊なレンズの効果で、縦横比1:2.35とおよそ1.7倍横に拡大したものであり、小さなテレビ画面では不可能な映像的興奮を観客に提供することで人気を獲得していった。
しかしながら、こうしてテレビ産業との攻防の余波から誕生したスコープ映画は、映画製作においては大きく二つの問題を産み落としてしまう。第一に、構図の問題。従来のスクリーンでの仕事に慣れ親しんだ製作者の中には、スクリーンの拡大で、構図の取り方に戸惑いを覚える者がいた。第二に、奥行きの生成について。キャメラに装着されたアナモフィック・レンズの影響で、パン・フォーカスが困難になってしまったのだ。こうした問題に、映画製作者はどう挑んでいったのか。本発表では、ワイドスクリーン(スコープ映画)の導入により沸き起こった問題を踏まえながら、それにいかに製作者が対応し、新たな撮影スタイルを確立していったのかを考察していく。
研究発表2:「回遊する思考:山口勝弘展」からみる創造的行為について
発表者:八尾里絵子会員(甲南女子大学メディア表現学科)
要旨:本報告は、2013年10月に神戸芸術工科大学で開催した「回遊する思考:山口勝弘展」を軸に、山口勝弘の「今」について言及する。
メディアアートのパイオニアである山口は、言わずと知れた前衛芸術家集団「実験工房」のメンバーの一人である。実験工房はここ数年、世界各地で再評価がなされており、回顧展の開催数も目立っている。しかしここでは、50年代から90年代の第一線で活躍した山口の姿ではなく、21世紀における現在進行形の表現活動に着目する。
2001年、山口は突然脳卒中で倒れ、その後は不自由な身体となったにも関わらず、創作行為とその発表への意欲が滞ることはない。我々(*)は、2010年の山口からの一通の手紙をきっかけに、彼から直接依頼を受け作品制作に携わってきている。その共同作業を進める中で、山口の作品制作の初期段階における想像力とそれを展開するスピードの速さや、スケールの大きなモチーフ選びが極めて独創的である事に気付く。そしてこれこそが、山口の創造的行為の根源であると考え、それを展覧会の名称である「回遊する思考」と呼ぶことにした。
この、創造のプロセスと新作を含む近年の作品群の表現傾向を互いにリンクさせながら、あえて近視眼的なアプローチからの分析を試みる。そして、実験工房時代の飽くなき探究心を85歳となった今もなお抱き続けるアーティストの実像に迫る。
(*)本研究は、JSPS科研費23520195による共同研究である。
会場:神戸芸術工科大学 3号棟クリエイティブセンター2F (3204教室)
兵庫県神戸市西区学園西町8-1-1
神戸市営地下鉄「学園都市」駅下車南に向かい徒歩五分 大学正門スロープを登り、守衛室を左に見てロータリーを横切り10段程の階段を上り左前方オレンジの壁のある建物(3号棟)
http://www.kobe-du.ac.jp/about/access/
日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
報告:会報第167号(2014年7月1日)4頁-5頁