第11回クロスメディア研究会開催のお知らせ
第11回クロスメディア研究会の研究発表を下記のごとく開催します。
開催日時:2017年11月26日(日)14:00-18:40
開催場所:大妻女子大学千代田キャンパス E棟7階E753室
〒102-8357 東京都千代田区三番町12
03‐5275‐6026(斎藤恵)
アクセスマップ https://www.otsuma.ac.jp/access/chiyoda
キャンパスマップ http://www.otsuma.ac.jp/about/facilities/chiyodacampus
以下研究発表のタイトル、発表者、概要です。
「めのはなし―右側にも左側にも気をつけろ―」
万城目 純(映像研究/実践、ゲスト)
眼についての話。まずは、網膜に映る映像を自明の理として考えない。映像の専門家であるが故に見落としているもの。自身に一番違いメディアであるが故に死角となり続けるもの。まさしく視覚の死角をめぐる話。かつてスポーツマイムの達人であったジャック・タチはボクサーの死角を『左側に気をつけろ』と叫んだが、ゴダールはいや、本編こそ真っ向から批評すべき『右側に気をつけろ』と1989年に返歌を送った。そして21世紀になり、どちらもこの眼について、更に深堀の話が必要と考える。かつてバタイユの著作を『眼球譚』と重々しく呼んだ時代もあるが、新約では簡単明瞭に『目の話』と代わってきている。しっかりとした形のある眼球より、むしろアンフラマンな網膜に、その糸口は残されているような気がする。こうしたものを自らに起こった出来事の検証をふくめた「めのはなし」という論をすすめていくことにする。
「日本文化の発祥と伝播・変容に関する一考察 ―大和民族ユダヤ人説の謎について―」
渡部 英雄(湘南工科大学、会員)
日本の文化に大きく影響を与えたと思われる渡来人がいる。それは、古代イスラエル人である。「日本書紀」応神天皇(201-310)の時代、応神14年(283年)に弓月君が百済から、120県の人民(秦の民、九十二部、1万8千6百70人)を引き連れてやってきた。秦河勝を中心とした最高の技術集団であり、織物、土木、酒造、通貨など、殖産興業に力を発揮して、先端技術で日本の国家の基盤をつくった。本研究は彼らが日本文化に与えた影響について考察する。
「国策から見る韓国保育の中の伝統音楽―幼保一体型「ヌリ課程」と韓国国立国楽院の事業を中心に―」
山本 華子(大妻女子大学、洗足学園音楽大学非常勤講師、ゲスト)
自国の伝統音楽を発展させていくためには、幼児期から伝統文化に触れられる環境作りが望ましい。韓国では、国策として保育の中に伝統音楽が組み込まれている。本発表では、就学前幼児の教育課程「ヌリ課程」における5領域と伝統音楽に関する記述を抜粋し検討する。さらに、国楽(伝統音楽)の伝承機関である国立国楽院運営の幼児対象教育・体験事業を取り上げ、韓国政府が保育の中の伝統音楽に取り組む現状を明らかにする。
「太平洋戦争後に作られた日本の童謡・唱歌について」
斎藤 恵(大妻女子大学、会員)
前回のクロスメディア研究会(昨年8月)において発表者は「大正期に作られた日本の童謡について」というタイトルで発表したが、今回はその続編である。前回は大正期の「童謡運動」と、それに伴って出版されたこども向けの雑誌『赤い鳥』、『金の船』、『コドモノクニ』等について、そしてそこに掲載された童謡を中心に考察した。今回は前回の発表において今後の課題(一)として挙げた「ろばの会」(1955〜)の当事者や、主にその時期に書かれた「こどもの歌」について検討する。
「日本の近代建築における部分保存の可能性について」
小森 俊明(作曲家、ゲスト)
日本でポスト・モダン建築が隆盛を極めた30年前は、近現代建築のスクラップ・アンド・ビルドが進むと同時に、文化の成熟によって近代建築の保存の動きが模索された時代でもあった。そんな中で、諸々の事情により全面的な保存が難しいケースにおいては部分保存が試みられるようになったことは、大きなトピックであろう。本発表では、現在まで続く近代建築の部分保存の手法を類型化したうえで、それらにおける諸事例を分析し、今後の部分保存の可能性を探ってみたい。
「日本で活躍した外地出身のマンガ家」
牛田 あや美(京都造形大学、会員)
平成26年度から挑戦的萌芽研究において「戦時下の漫画に描かれた戦地及び植民地の表象研究」のテーマで日本統治下の「漫画」を中心に調べてきた。その研究調査過程により、戦前の外地で漫画を描いていた人々、さらに内地である日本国内で活躍していた日本語を母語としない漫画家の発掘があった。韓国名を金龍煥という。韓国に漫画文化を普及させた一人であり、彼のキャラクターである「コチュブ」は現在でも多くの人が知っている。戦前・戦中・戦後を通した日本での彼の作品を繙いていく。
「スポーツ系大学におけるメディアスポーツ関連科目の編成」
柴岡 信一郎(日本ウェルネススポーツ大学、会員)
スポーツ系大学の教育課程におけるメディアスポーツ関連科目編成の在り方について考察する。メディアスポーツは、「マスメディアにおいて報道されるスポーツ」「マスメディアにおいて広告・宣伝のツールとして用いられるスポーツ」と定義する。事例とする大学では科目区分として「共通科目、専門基礎科目、専門専攻科目」、科目種別として「概論科目、特講科目、演習科目」を重層的、体系的に編成する。これにより学生は自身のスポーツ経験と進路志望意識を融合する学びが可能となる。
「美術研究の再検討―皆本二三江を中心に―」
宮田 徹也(嵯峨美術大学客員教授、会員)
美術教育者の皆本二三江(1926-)は幼児期から男女に絵の差があることを突き止め、大人になっても性別によって指導が異なることを指摘した(『絵が語る男女の性差』1986年/『「お絵かき」の想像力』2017年)。美術を考える上で不可欠なのは、皆本のように人間として発生した時の姿の探求と、社会の一部であることの自覚、他の芸術分野や研究動向との融和であろう。美学、美術史、批評は近代に誕生した。現代に対応する研究姿勢を問う。
「音楽ビジネスの課題と展望:「間-共創成」に向けて」
河合 孝治(河合明、芸術メディア研究会、会員)
近代であれ、ポスト近代であれ、資本主義という消費社会の中で音楽が喚起されるという現実を受け入れるとすれば、売れるか売れないかは、音楽においても重要な価値基準の一つである。特に音楽の場合、造形作品のように1つの作品に高額な値段がつくのとは異なり、(作曲料や委嘱料の違いがあるにしても)有名無名に関わらず、1曲あたりの販売単価に変わりはないのであるのでる。従って、利益を生むためにはできるだけ多くの人たちに楽曲が聞かれることが必要となり、そのためのさまざまなメディアミックスの戦略が巨額の富を生むことも珍しくない。中でも大きな役割を担っているのが放送局系音楽出版社の存在がある。本発表ではそのような現状について、問題点を指摘すると共に、従来のクライアント中心主義による音楽ビジネスの現状を乗り越えるために、音楽家自らによる「間-共創成」による、「ポスト・音楽ビジネス論」を提案し、新たな音楽ビジネスの展開を模索する。
以上
日本映像学会クロスメディア研究会
代表 李 容旭
〒164-8678東京都中野区本町2-9-5
東京工芸大学芸術学部映像学科内
e-mail:lee@img.t-kougei.ac.jp