関西支部第66回研究会(5月26日)のお知らせ
下記の通り日本映像学会関西支部第66回研究会を開催いたします。
会員の皆様には奮ってご参加下さいますようお願い申し上げます。
日時:平成24年5月26日(土) 午後2時より
会場:京都造形芸術大学 映像ホール(人間館B1)
研究発表1:写真からみるハンス・ベルメール―初期人形写真からウニカ・チュルン緊縛写真まで―
発表者:松岡佳世(大阪大学大学院文学研究科博士後期課程)
要旨:シュルレアリスムが席巻するパリにおいて活躍した芸術家、ハンス・ベルメール(1902-1975)は、特に手足や乳房が増殖した奇怪な身体を持つ人形や、独特のエロティシズムを緻密な線によって描いた版画、ドローイングで知られる。
ベルメール研究に関しては作家が没する前から国内外で進められ、とりわけ制作活動に至るまでの父親との関係、ナチスへの反抗といった視点から取り組まれた精神分析的な研究事例には事欠かない。しかしこうした研究においては、作品に現れる図像の由来を作家の生涯や来歴に探すに留まり、実際の作品制作行為を含む考察が十分にされているとは言い難い。
よって発表者は、ベルメール作品に現れる図像のみに問題を集中するよりもむしろ、その図像形成に至るまでのプロセスや表現メディアに対するアプローチ、とりわけ写真との接続を試みることで、ベルメールの芸術実践を再考する。本発表では、1934年の初期人形を撮影した写真から最後の恋人であるウニカ・チュルンを緊縛した写真までを扱う。各写真の分析では、まずベルメールにとって写真というメディアの意義がどのように変遷したかを辿る。同時に被写体、写真、撮影者それぞれの間に結ばれた関係を、被写体の造形、写真のフォーマット、ベルメールが接した身体論といった観点から指摘することによって、身体と身体に対するまなざしを軸とするベルメール独自の試みを明らかにしたい。
研究発表2:澤井信一郎監督『ラブ・ストーリーを君に』で描かれる「難病」と「純愛」 ―1988年の日本映画における「純愛もの」についての一考察―
発表者:中村聡史(帝塚山学院大学)
要旨:ディディエ・ドゥコワンの小説『眠れローレンス』(1969年)を映画化した澤井信一郎監督作『ラブ・ストーリーを君に』は、白血病にかかった少女が、青年との純真な愛を育みながらもついに純潔のまま死んでいくという物語の骨子からみても、「難病」を題材としたいわゆる「純愛もの」であるということが言える。この、「純愛」という言葉は、日本の恋愛を扱った小説、映画、テレビ・ドラマなどにおいて、その物語の性格を一言で言い表す言葉としてしばしば用いられてきた。また、「純愛」という言葉で言い表される物語が、ある時期に熱狂的に受容されるような現象を「純愛ブーム」などと表現する場合もある。このように、「純愛」と称される物語は少なくとも日本においては決して無視できない存在としてあり、それへの関心も低くはなく、「純愛」物語がどのような特質、構造をもったものであるのかといった研究や、なぜ、人は純愛に惹かれるのかを解明しようとする試みもなされてきた。しかしそれらは一様に「純愛」物語というものを定型的な決まり切ったものと捉えているきらいがあるのではないだろうか。確かに、「純愛もの」の類型性というものは強固なものとしてあるようではある。しかし、野心的な作家の試みによっては、類型的な「純愛もの」にも特異性があらわれることもあるのではないだろうか。
本発表では、『ラブ・ストーリーを君に』と、そこで澤井信一郎監督が描いた「難病」や「純愛」を分析し、特異な「純愛もの」の可能性を探っていきたい。
京都造形芸術大学 〒606-8271 京都市左京区北白川瓜生山2-116
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交通アクセス
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■阪急「河原町駅」より 市バス5系統/岩倉行 「上終町京都造形芸大前」下車(約30分)
市バス上終町3系統/上終町京都造形芸大前行 「上終町京都造形芸大前」下車(約30分)
※当日は公共交通機関の利用をお願いします。
以上
日本映像学会関西支部事務局
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大阪芸術大学映像学科内
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
報告:会報第160号(2012年10月1日)50頁-51頁