クロスメディア研究会第13回研究会のお知らせ
下記の通り日本映像学会クロスメディア研究会第13回研究会を開催します。会員の皆様の参加をお待ち申し上げます。
日時:2019年6月22日(土)13:00-17:00
会場:小田原短期大学 東館リトミック室(E101)
https://www.odawara.ac.jp
〒250-0045 神奈川県小田原市城山4-5-1
アクセス
https://www.odawara.ac.jp/about/access/index.html
研究発表1:数の思考と相関した世界、「理念的出来事」再考―ドゥルーズ『差異と反復』の能力論批判からパトナムの内在的実在論における真理論へ
発表者:織田理史 アトリエ第Q藝術 会員
クワインに始まる存在論の復興以来、いわゆる英米の分析哲学と大陸哲学は、主に「実在」ないし「実在論」という存在論的主題をめぐって、自然な形の架橋が可能となり、実際その架橋の試みは多く行われているように思われる。本発表では、ドゥルーズの能力論、特に彼が「能力の超越的行使」と呼ぶものに対する批判的吟味を通じて、思考という能力を再検討し、この再検討された思考と実在との相関性をめぐってパトナムの内在的実在論へと開かれる道筋を追ってみたい。最終的に、パトナムの内在的実在論的枠組みにおいて、ドゥルーズ的意味での「理念的出来事」の概念の定位を試みることで、非ドゥルーズ的な実在論を素描する。
研究発表2:広告業界に先進事例を提供し続ける鉄道広告
発表者:柴岡信一郎 タイケン学園 会員
鉄道車内、駅構内は公共性の高い場所であるので、そこに出稿されている鉄道広告はクリーンで、信頼性が高い媒体として認知される。また、鉄道広告は利用者や季節、時間帯、流行の変化に応じて柔軟に出稿内容、形態を変化させられるどの業界からも重宝される宣伝媒体である。こうした鉄道広告の現状と可能性について考察する。
研究発表3:〈ロック〉の本質とその未来
発表者:宮田徹也 嵯峨美術大学客員教授 会員
近年、ポピュラー音楽としての〈ロック〉が様々な場面で考察されている。そこで常に問われるのは、何を以て〈ロック〉と定義するかの点にある。本発表では先ずどのような研究媒体によって〈ロック〉が考察されているのかという先行研究を分析する。次に〈ロック〉とは神と人間の関係のように、シュミラークルとして存在することがその本質であることを示す。そして「新世界秩序」と「新右派連合」が渦巻く世界の中で、これから〈ロック〉がどのような役割を果たすべきかを論考する。
研究発表4:「現代における古典写真技法の動向
発表者:相田晃良 芸術メディア研究会、日本写真芸術学会、APPLE JAPAN合同会社 会員
写真は時代により像を記録するプロセスが移り変わっていくメディアである。現代の写真は、イメージセンサにより演算されるデジタルデータによるものであり、かつてはフィルムに像を直接定着した。
現代の写真プロセスはより合理的である。にもかかわらず、古いプロセスによる写真作成の流れが完全に途絶えた訳ではない。むしろ古典といわれるような技法を模索する傾向も感じ取れる。
本発表では、現代において選ばれる古典技法の傾向とその理由を考察する。
研究発表5:バーチャル・リアリティ(VR)時代の映像表現の可能性 — 重力・無重力との関係性を中心に
発表者:李容旭 東京工芸大学 会員
社会の様々な分野でVR映像の技術が広まっている。VR映像時代の映像表現のキーワードを「重力/無重力」を中心に歴史的に検証し映像表現の現在、そしてその可能性を探る。
実写とCGアニメーションの関係を詮索しながらVR時代の映像特性を検討する。
今まで経験したことがない空間体験を提供している VR映像を紐解くキーワードとしてバイナリグラビティーBinary Gravity概念*を提出する。
重力と無重力の間に生まれてきた独特な空間体験をVR映像の特徴として捉えること、そしてその可能性を考える。
*李は「柴岡信一郎 監著「はじめての情報情報メディアコミュニケーションリテラシー」p116 技術評論社 2019 」でバイナリグラビティー概念を提出している。
研究発表6:「ジャズピアノ教本の変遷〜テキストから映像へ~」
発表者:河合孝治(河合明)芸術メディア研究会 会員
今日、ジャズピアノの教則本はたくさん出版されている。しかし、クラシック音楽のように楽譜に音が固定的にエクリチュールされ、目標とする音楽の全体像が明確なら、メソッドを絞りやすいが、ジャズは即興であり、ジャズピアニストは作曲家でもある。したがってそうした広範囲な音楽的技法や素地を満たすスタンダードな教本を示すのは難しい。本発表では、レコードコピーの時代から、今日の映像を含むインターネットによるジャズピアノの学習までを考察するが、それはまたジャズに限らず「対機テキスト」、「間-共創成テキスト」と言う様々な分野の学習に共通するテーマでもある。
研究発表7:保育現場における「合奏劇」の実践 ~子どもの初めての出会いに着目した音楽活動~
発表者:望月たけ美 小田原短期大学 ゲスト 山本華子 小田原短期大学 ゲスト
小田原短期大学保育学科1年次後期授業では、幼稚園教育要領「表現」の内容を踏まえ、「合奏劇」を行った。その際、教員側は学生に対し、「子どもが生まれて初めてその楽器に出会う時、「合奏劇」を通して子どもに楽器の魅力や特性が存分に伝わるような紹介シーンを作り出して演じよ」という指示を与えた。先行研究では、学生の授業内発表の振り返りシートの結果を分析し、「合奏劇」の実践が、学生の創造性や保育現場での実践力を育むことに繋がったか考察した。
本発表では、継続研究として、学生が環境や鑑賞する子どもの年齢が異なる2つの保育園で「合奏劇」を実際に演じた際、子どもの初めての出会いへのアプローチに繋がったのか、2つの園の保育者と演じた学生の事後アンケートの分析結果と今後の課題について発表する。
連絡先
日本映像学会クロスメディア研究会事務局
〒164-8678 東京都中野区本町2−9−5
東京工芸大学芸術学部映像学科内
Tel&Fax 03-5371-2717
李 容旭
lee@img.t-kougei.ac.jp