草月から次世代へメタモルフォーゼするアニメーション 「グループえびせん」と80年代のアマチュア・アニメーションの隆盛
アニメまたはアニメーションは、現在ポピュラーカルチャーの代表的なものの一つとして国内外から認知されている。娯楽的なコンベンションイベントから芸術的な国際映画祭までさまざまな場において、多種多様な作品を観ることができる。特にデジタル化が進んだ2010年以後は、少なくない個人や少人数制作によるアニメーション作品がオンライン上で配信されるようになった。このような個人制作のアニメーションは、デジタル化以前に遡ると、どのような文脈を持つのだろうか。
国内で個人によるアニメーションが注目を集める契機となるのは1960年に草月会館で開催された「アニメーション3人の会」による上映会以降である。個人作家達による実験的なアニメーションは国内外で高い評価を得る。70年代に入りそれまで作家の交流と登竜門的場を提供してきた草月アートセンターが解散し、作家達は新たに「日本アニメーション協会」を設立する。また彼らはワークショップを通じ次世代育成にも尽力する。その受講生らは実験系・商業系作品などさまざまな作品から影響を受けゆるやかに新しいアニメーション作品を形作り、80年代のアマチュア・アニメーションのムーブメントを牽引する。
草月で実践された実験的な試みや形式を受け継ぎ、そしてメタモルフォーゼさせながら新時代のアニメーションを作り出す作家たちの活動は、ロシアの映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインが言及したアニメーションの魅力の本質「どんな形式を呈することもできる」「原形質性」にも通底するといえる。それは、手描きのキャラクターが可塑的に自由に変形できることと同様に、動きや演出、形式などを先行する作家から受け継ぎつつも自己流に変形していく遊びや試みの実験場ともいえるのである。
本研究会では未だ研究が寡少な個人制作アニメーション、とりわけ草月系作家から次世代の作家へと受け継がれたアニメーション制作の方法論と次世代のアニメーション作家たちが牽引した80年代のアマチュア・アニメーションのムーブメントを「原形質性」や「メタモルフォーゼ」をキーワードに、当時最も注目されたアニメーショングループ「グループえびせん」の中心的作家であるはらひろし。氏と角銅博之氏を招聘しインタビューを通じて実証的に検証する。
日時 2022年2月19日(土)13:30-16:00
オンライン開催(zoomを予定)
ご予約はこちらからお願い致します
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdRWyT-V1sYFLc0REsba2LM-7zMQG1cY7dZIu2tPBUIaOl7Sw/viewform
企画・インタビュアー 森下豊美(日本映像学会関西支部会員/関西大学ほか非常勤講師)
主催 日本映像学会ショートフィルム研究会
●ゲスト登壇者
はらひろし。
日本アニメーション協会会員。日本アニメーション協会主催第1回「アニメーション・ワークショップ」受講後、受講生のうち6人で「グループえびせん」をを結成。歯科医の傍らNHKのプチプチアニメ、「グループえびせん」の上映会など作家活動を行う。主な代表作に『セメダイン・ボンドとG-17号』シリーズがあり、同作は庵野秀明へも影響を与えた。
角銅博之
アニメーション監督・演出家。日本アニメーション協会理事。日本アニメーション協会主催第1回「アニメーション・ワークショップ」受講後、受講生のうち6人で「グループえびせん」を結成。主に東映アニメーションでTVアニメの監督や演出を行いながら「グループえびせん」上映会の運営も行う。主な代表作に自主制作アニメーション『錆びた館』(1982)、『白い手』(2005)、監督作品にTVアニメ『遊☆戯☆王』(1998)、『デジモンアドベンチャー』(1999)など。
※内容や出演者などは都合により変更となる場合もありますので予めご了承下さい