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映画ビジネス研究会(2020-2021期 第1回)のお知らせ【12月21日】

映画ビジネス研究会(2020-2021期 第1回)

今年度より映像学会研究会として発足した、映画ビジネス研究会の第1回研究会を下記において行います。
(zoomでのオンライン研究会となります)
会員の皆様のご参加をお待ちしております。

日時:2020年12月21日(月)18時〜19時30分
(Zoomによるオンライン開催:事前申込制)
申込締め切り:12月16日(水)
▶︎申し込み方法
参加をご希望の方は、メールアドレス<eigabusinessjasiasgmail.com>まで、ご氏名・ご所属を記してメールで申し込んで下さい。
送信元メールアドレスに、zoomのURLを12月20日(日)までに返信いたします。

▶︎内容
発表:田村順也(株式会社ティ・ジョイ(総務部総務室総務チーム サブ・マネージャー)/本学会員)

「社会的な危機の中の映画館の現状 〜コロナ禍と東日本大震災時を比較して〜」

①東日本大震災とコロナ禍の前年の共通点―2010年と2019年の比較。
どちらも歴代最高の興行収入をマーク。年間興行収入ランキングの共通点。
②東日本大震災が与えた映画館への影響―2011年。
興行通信のデータ、ボックスオフィスを参照して何が起きたかを分析。
③コロナ禍が与えた映画館への影響―2020年。
興行通信のデータ、ボックスオフィスを参照して何が起きたかを分析。
④映画館と映像配信事業―2011年と2020年の違いについて。
⑤今後の展望―映画業界が社会的危機を乗り越えるために。

座長:鳥山正晴(本学会員)

関西支部第89回研究会【12月26日】

日本映像学会関西支部第89回研究会(12月26日)

下記の通り日本映像学会関西支部第89回研究会をリモート(Zoom)にて開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。

日時:2020年12月26日(土)午後2時より4時頃まで。

研究発表1:新中国映画における満映の影響~映画『寂静の山林』を中心に~
発表者:神戸学院大学人文学部(博士課程) 張少博
要旨:
 近代中国では満洲映画は植民地主義の文化機関として、製作された映画は文化侵略道具の称号と理解されており、この観点は中国映画史研究者の間では共通認識となってる。中国における満映研究は初期、すべての研究は被植民者の立場に立って満映を批判するものだったが2005年、中国百年映画史学会は映画史の観点を修正し、大中国映画史(内地、台湾、香港)を抱合するスローガンを打ち出した。このような環境で、中国の満映研究は次第にマルクス主義唯物論を用いて満映を客観的に見るようになって、満映と中国映画史の関連を検討することは、中国の満映研究に欠かせない新たな課題となっている。
1957年に長春電影制片廠が公開した『寂静的山林』は、満映が新中国映画とどのような関連にあるのかを検討するための最適な突破口の一つであると考えられる。俳優陣から見ると、この映画には浦克、白玫、鄭暁君、侯健夫、夏佩傑などの満映出身の映画人が出演しているし、さらに監督の朱文順、撮影の包傑も満映の出身である。一方、映画の内容から見れば、『寂静的山林』には満洲映画の特徴と満州で流行した「実、奇、暴、色」の文化要素を持っている。ここに当時の延安派監督が作った映画との差異が容易に見出せる。この点は中国建国初期の映画が満州文化の影響を受けた証拠の一つである。
本発表は最新の中国満映研究資料『吉林省社会科学基金項目“満映”及其文化侵略史料在華保存状况調査ー満映影評史料』(2019年12月)及び満映の付属機構である満州雑誌社が創刊し、満州で最大の発行部数を誇った大衆文学雑誌『麒麟』を用いて、満州映画の特徴と満州で流行した娯楽文化を考察しながら、満映出身の中国人監督及び俳優が共同して完成した『寂静の山林』を詳しく分析し、満映が新中国初期の映画にどのような影響を与えたのか、満州で流行した娯楽文化とはなにかなどの問題に答えようとするものである。

研究発表2:母性幻想、同性愛、〈クィア〉な女優―戦後文芸映画『挽歌』、『女であること』をめぐって
発表者:大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程 徐玉会員
要旨:
 戦後の文芸映画において特徴的なのは、女性の生き方に重点を置いている点である。当時の文芸映画は主要な女性映画の型のひとつと見なされ、そこで描かれる女性の主体的な恋愛は、当時の女性観客の期待を満たす重要な主題として多くの作品で取り入れられた。『挽歌』(五所平之助1957)(原田康子原作)、『女であること』(川島雄三1958)(川端康成原作)の映画化もそうした流れのなかにある。
 『挽歌』と『女であること』は、物語内容においても配役においても、類似したところがある。『挽歌』では、左腕が不自由な少女怜子(久我美子)が、妻子のある建築家桂木(森雅之)に好奇心を抱き、桂木と関係を持つようになる。しかし、母親がいない怜子は、桂木夫人あき子(高峰三枝子)の優しさに癒されつつ、夫人のことも慕うようになる。『女であること』では、母との関係がうまくいかず、家出した少女さかえ(久我美子)が憧れていた母の友人市子(原節子)のところに飛び込み、「小母さまの子にしてほしい」と甘えて世話してもらうが、やがて市子の夫佐山貞次(森雅之)にも好意を持つようになり、佐山に接近する。
 このように、いずれの作品においても、一種の疑似家族関係―特に怜子とあき子、さかえと市子、という〈母娘〉関係―が構築されると言える。しかしながら、女性の欲望や女性の恋愛が前景化されているとはいえ、これらの映画については、従来「姦通」や三角関係に目が奪われがちで、同性愛的な要素も含まれる女性同士の関係に注目する研究は少なかった。本発表は、怜子とあき子、市子とさかえの関係を中心に、カーヤ・シルバーマンの「同性愛的母性幻想」(Silverman 1988)やパトリシア・ホワイトの「レズビアン表象可能性」(White 1999)といった概念を援用しながら、両作品における女性の欲望のあり方を考察する。また、久我美子、原節子といった女優に注目し、女優のスター・ペルソナがもつクィアの可能性がこれらの作品にもたらす意味について探りたい。

研究会終了後に関西支部総会を引き続きZoomにて開催予定です。※関西支部会員のみ対象。

参加希望の方は前日12月25日(金)までに eizoukansaigmail.com までメールをお送り下さい。メールにはご所属・氏名のみ記入いただければ結構です。追ってZoomの招待メールを返送いたします。

日本映像学会関西支部事務局
〒585-8555大阪府南河内郡河南町東山469
大阪芸術大学映像学科内
Tel: 0721-93-3781(内線3327)
email:eizouosaka-geidai.ac.jp

中部支部2020年度第1回研究会 【12月12日】

2020年度 日本映像学会中部支部 第1回研究会

例年、日本映像学会中部支部は年に3回の研究会を開催しています。
12月12日に第1回研究会をオンラインで開催することになりました。
会員による2件の研究発表と招待講演を準備しています。
中部支部会員ではない方も、こちらのページからご視聴いただけます。
(お申し込み不要)
http://jasias-chubu.org/wp/?p=806

招待講演では佐藤時啓氏が登壇されます。
現在、佐藤氏は原美術館「光―呼吸 時をすくう5人」展に出品されており、
そこで行われたトークが公開されています。
こちらをご覧になってから招待講演をご視聴いただくことをお薦めします。
https://www.youtube.com/watch?v=_rRtMxw7Yos&feature=youtu.be&t=2135

お問合せ:
日本映像学会中部支部
jasias.chubu@gmail.com
http://jasias-chubu.org/

以下、詳細
―――――――
2020年度 日本映像学会中部支部 第1回研究会
12月12日(土)13時30分よりオンライン開催

[招待講演]
佐藤 時啓 氏(写真家)

[研究発表]
須藤 信 会員(愛知淑徳大学人間情報学部 助教)
鈴木 浩之 会員(金沢美術工芸大学 美術科油画専攻 准教授)

モデレーター:前田 真二郎 会員
(中部支部担当理事・情報科学芸術大学院大学 教授)

◎研究会スケジュール(予定)
13:30 –  開会あいさつ
13:35 – 14:30 研究発表
(2件、発表20分、質疑応答5分 予備時間5分)
休憩 10分
14:40 – 15:15 招待講演(1件 35分)
15:15 – 15:30 ディスカッション(15分)
15:30 –  閉会あいさつ
15:35  終了

◎招待講演
Camera Obscura から Magic Lanternプロジェクトー 光に触れるこころみ ー
佐藤 時啓氏(写真家)

デジタル時代の今日、光が孔を通じて暗闇にイメージを成すこと、その光と闇との呼応関係に気づく機会はほぼ無いと言って良い。しかしその実、映像が生じる仕組みとしては針孔の原理が発見されカメラオブスクラが発明された時代から何も変わっていないのだ。どんなに高級なデジタルカメラを使って写真を写そうにも、8Kのプロジェクターでイメージを投影しようとも、今のところ光学原理の根本である、孔を通じたイメージのやり取りやレンズガラスの屈折による集光という仕組みから逃れることは出来ない。しかしながら現在はその部分を全く意識せずにインターフェースの操作でイメージが得られる時代になった。私はそんな時代を生きながら、光学原理の原点を用いて作品を制作し、そして人々ともに様々なワークショップの活動を行っている。また美術のコンテクストから始まった私の行為も、モダンからポストモダン、そしてさらなる時代への思考から人々との関係性を構築する活動がベースになってきた。

佐藤 時啓(さとう ときひろ)氏 プロフィール
1957年、山形県酒田市に生まれる。1981年、東京芸術大学美術学部彫刻科卒業。1983年、同大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。1990年、第6回東川賞新人作家賞受賞。1993年、メルセデス・ベンツ・アート・スコープ賞受賞によりフランス滞在。1994年、文化庁在外研修員としてイギリス滞在。2015年、第65回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。国内外で個展を多数開催、グループ展にも多数参加。東京都写真美術館、埼玉県立近代美術館、シカゴ美術館、ヒューストン美術館などに作品が収蔵されている。現在、東京芸術大学美術学部先端芸術表現科教授。

◎研究発表(2件)
「手が潰される感覚」を味わうメディアアートの開発
須藤 信 会員(愛知淑徳大学人間情報学部 助教)※発表者
山口 李々菜(愛知淑徳大学人間情報学部 4年)※共同研究者

要旨:
近年のHMDを用いるVRコンテンツでは、身体所有感の研究が進められている。名古屋市立大学大学院の研究者らが発表したStretchar (m)(2017)では、ぶら下がり運動を用いて腕の伸縮感を誘発させることが可能であることが明らかにされた。このように、HMDを用いて体験者に疑似的な感覚を与えるVRコンテンツが開発されているが、手指の動きが連動するコンテンツの制作は進んでいない。手指がVR環境で連動することは、体験の没入感や身体所有感を高めることが期待できるため、本研究では現実環境とVR環境の手指の動きが連動し「手が潰される感覚」が得られるメディアアートを開発した。
本作品は、鋼板が設置された机の前で、HMDを装着して体験する。椅子に座った体験者の視界に、作業台、椅子、ドア、蛍光灯、ハンマーが設置された空間が展開される。その空間では、巨大なハンマーが作業台に数秒おきに振り下ろされており、体験者は自身の手を鋼板へ伸ばすことで、振り下ろされるハンマーによって手が潰されることを疑似体験することができる。

地球観測衛星と電波反射器を利用した地上絵制作プロジェクトについて
/2019年度の制作記録と8K映像化の試み
鈴木 浩之 会員(金沢美術工芸大学 美術科油画専攻 准教授)

要旨:
本発表では、継続中のアートプロジェクト「だいちの星座」(共同研究者:宇宙航空研究開発機構 研究開発員 大木真人氏 / JAXA地球観測研究センター第4回研究公募[2013~17年度]、JSPS科研費[2013~15年度、2016~18年度、2019~21年度]採択)の活動のうち、2019年11月に埼玉県久喜市にて実施された地上絵制作プロジェクト(主催|文化庁、埼玉県教育委員会)について振り返る。
2019年の埼玉県での活動は、小学校の校庭で児童らと臨んだ地上絵制作において電波反射器を自立・配置する手法を試みた。また、従来〈写真〉としてデジタルCプリント出力してきた「だいちの星座」作品を、「おさなごころを、きみに」展(2020年/東京都現代美術館)にてUHD 8K映像作品として上映した。コロナ禍でのプロジェクトの状況とあわせて、近年の活動を紹介する。
(参考映像「だいちの星座―えづらだいに彗星」4Kバージョン )
https://www.youtube.com/watch?v=lXL79D83VIA&feature=youtu.be

「インターリンク:学生映像作品展[ISMIE]2020」オンライン開催のご案内

 今年で第14回となる「インターリンク:学生映像作品展[ISMIE]2020」を映像表現研究会主催にて開催いたします。
本年は新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、例年同様の上映会場での開催を見送り、オンラインで行うことにいたしました。
特設サイト(https://sites.google.com/view/ismie2020/)にて参加校教員による推薦作品を共有し、Zoomにて情報交換を行うオンラインでの研究会を行います。

会員諸氏や作者のみならず、在学生の方にも是非ご覧頂きたいと思っております。
詳細は以下をご参照ください。

【参加校一覧】
愛知淑徳大学
イメージフォーラム映像研究所
大阪芸術大学
九州産業大学芸術学部
京都精華大学
久留米工業大学
尚美学園大学
椙山女学園大学 文化情報学部
成安造形大学
玉川大学 芸術学部 メディア・デザイン学科
東京工芸大学芸術学部
東京造形大学
東北芸術工科大学 映像学科
名古屋学芸大学
日本工業大学 情報メディア工学科
日本大学 芸術学部(本年度幹事校)
文教大学 情報学部 メディア表現学科
北海道教育大学

【推薦作品の視聴】
12月13日(日)から、ISMIE2020特設サイト(https://sites.google.com/view/ismie2020/)にて各校推薦作品を公開します。
※公開は12月27日(日)までです。

【研究会概要】
日時:2020年12月27日(日)15:00〜17:00
会場:Zoom

事前に、各校推薦作品をご覧になった上でご参加ください。
参加する推薦教員から自校と他校の作品について講評を行い、その後、議論を行います。

ISMIE2020特設サイト(https://sites.google.com/view/ismie2020/)にて参加申込みを受け付けております。
研究会前日までに申込みいただいた方には、当日メールにてZoomへの参加リンクをお送りします。
また、研究会当日にISMIE2020特設サイトにもZoomへの参加リンクを設置します。

日本映像学会映像表現研究会
ISMIE 2020 事務局
〒176-8525 東京都練馬区旭丘2-42-1
日本大学芸術学部映画学科(研究室A)
担当:奥野邦利/野村建太/山﨑汐音

アナログメディア研究会主催企画:実証的研究 『遠隔でフィルム映像制作実習は可能か?』【11月30日〆切】

実証的研究 『遠隔でフィルム映像制作実習は可能か?』

 8ミリフィルムでの映像作品制作、ワークショップ形式での実証的研究 

参加者へ機材などを郵送し、4回のZOOMセッションを通じて遠隔でフィルム作品制作の実習を行います。
また、実習に参加せずにZOOM視聴のみの参加も可能です。
■8ミリフィルムカメラでの撮影
■撮影した8ミリフィルムを自家現像
■自家現像したフィルムを編集
■映写、テレシネ、講評
参加方法(以下の①②のどちらか)
①ZOOMセッションを通じて実際に制作する実習参加【定員5名】
注:資料代1000円およびフィルム等の材料費、機材送料等実費がかかります。(メールでお問い合わせください)
機材等郵送の関係で国内在住会員に限らせて頂きます。②ZOOMセッション視聴のみ参加【定員20名程度】
参加無料。

遠隔ワークショップの実際(参加者①を中心に説明)
1:事前に参加者へ必要機材などを郵送。カメラの使用法、撮影方法、制作構想などをZOOMと配布資料で解説。参考作品を紹介。
その後参加者各自で作品を計画し、撮影。
2:撮影済みフィルムの自家現像。ZOOMと配布資料で現像方法等を解説。
3:編集と映写、出来る人は自力でテレシネ。
4:テレシネした作品を遠隔で視聴し、ZOOMで全員参加の講評。

■参加募集期間 〜11月30日締め切り
■スケジュール
1:12月5日 土曜日 13時~14時30分
2:12月20日 日曜日 13時~14時30分
3:12月27日 日曜日 13時~14時30分
4:2021年1月10日  日曜日 13時~14時30分

主催:アナログメディア研究会
https://www.facebook.com/analogmedia

申し込み、問い合わせ:
太田曜(オオタ ヨウ)
distortedcinema-wsyahoo.co.jp

アジア映画研究会(第3期 第3回)開催のお知らせ【12月1日】

アジア映画研究会(第3期第3回/通算第36回)を下記のとおり、Zoomによるオンラインで開催します。

日時:2020年12月1日(火) 18:00開始
(Zoomによるオンライン開催/事前申し込み制)

下記URL「調整さん」で、所定のフォームに出欠をご記入下さい。
https://chouseisan.com/s?h=bce6dac31eef47e290a22e3e45c50ce3
「出席」の方には、後日Zoomの会議アドレスをご連絡致します。
お申し込み締切日は、11月27日(金)です。

<内容>
①報告(30分/質疑応答を含む)
「”ハコ”が変えた映画のスタイル ――経済発展とインド定型映画の変化――」
松岡 環(アジア映画研究者)
要旨:1991年の経済政策の転換ににより、インドが経済発展に舵を切ってから約30年。この間人々の生活は大きく変化したが、インド映画もまた、トーキー化以降「定型」となっていたスタイルに大きな変化を生じさせている。1997年の欧米型シネマコンプレックス登場が促したこの変化を、資料により検証していく。

②発表(90分/質疑応答を含む)
「2000年代インド映画のナラティブー『RAB NE BANA DI JODI(神が結び合わせた2人)』を例にー」
森長恵梨(インド・ミュージカル映画研究)
要旨:経済自由化後の社会変化により、現実逃避的な娯楽映画ではなくストーリーやテーマ重視の作品が好まれるようになった2000年代。物語からの逸脱と見なされがちな歌と踊りは、ストーリーや人物の心情を語る上でいかに機能したのか。『RAB
NE BANA DI JODI(神が結び合わせた2人)』(2008年インド国内興行収入第2位・同年インド映画世界興行収入第1位)を例に検証する。

皆様のご参加をお待ちしております。

12月座長:松岡 環

写真研究会 2020年 第5回研究発表会開催のお知らせ【10月25日】

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日本映像学会 写真研究会
2020年 第5回研究発表会開催のお知らせ
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日本映像学会会員各位

写真研究会の研究発表会を、新型コロナウイルス感染拡大防止のため下記のとおりオンラインにて開催致します。皆様のご参加をお待ちしております。

日本映像学会写真研究会
代表 倉石 信乃

【日時】
2020年10月25日(日) 14:00開始 17:00終了予定

【参加方法】*事前申し込み制
会議システムzoom を利用して開催いたします。下記のURLにあるフォームから事前にお申込みください。いただいたメールアドレスにzoomのIDとパスワードをお送りいたします。
登録期限は10月24日(土) 12:00までとさせていただきます。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfrxCnf3JItSsaUCD2Wrv7GEScRUrFDftoi0d1K-S6otdTRjw/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0

【発表者・発表内容】
前川修『イメージを逆撫でする 写真論講義 理論編』/『イメージのヴァナキュラー 写真論講義 実例編』書評

発表1
「書評:『イメージを逆撫でする』の謎」
増田展大(九州大学)

発表2
「写真研究の論点:前川修『イメージのヴァナキュラー写真論講義実例編』書評」
きりとりめでる(無所属)

共同討議
司会:倉石信乃(明治大学)、きりとりめでる(無所属)、土屋誠一(沖縄県立芸術大学)、中村史子(愛知県美術館)、前川修(近畿大学)、増田展大(九州大学)

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【発表要旨】
書評:『イメージを逆撫でする』の謎
増田展大(九州大学)

 前川修による著書『イメージを逆撫でする:写真論講義 理論編』は、20世紀以降の主要な写真理論について討究した著作である。実際に本書の目次を開けば、各章のタイトルに錚々たる欧米の論者たちの名前が並び、それぞれの写真論について濃密かつ批判的な読解が深められていく。W・ベンヤミン、R・バルト、P・ブルデュー、R・クラウス、G・バッチェンなど、写真に限らずとも映像や美術、視覚文化を考察しようとする読者にとって、本書は古典的かつ難解なイメージ論を読み進めるための有用なガイドとなることを期待させるだろう。
ただし序論から著者自身が断りを入れるように、本書を読み進める作業は決して平易ではない。「講義」と銘打たれた副題とは裏腹に、本書に登場する理論家たちの紹介や背景は抑制されており、膨大な数の先行研究が整理されると同時に、既存の写真論については一定程度の知識が前提とされる箇所もある。また全体として、モダニズム写真による形式の純化と、ポストモダニズム写真論による文脈の重視という傾向を対比しつつ、それでいて前者の「文脈」を抉り出し、後者の「形式」を浮かび上がらせるという、交錯したアプローチが採られてもいる。
そこで今回の書評では、本書を読み進める助けとなることを目的として、特に全体の構成に着目しながら以下の点について検討してみたい。
まず、タイトルの「逆撫で」が意味するところについて、この言葉がまずもって想起させるのはベンヤミンの歴史哲学であるだろう。先に挙げたように、本書ではモダニズムに括られる写真論の再考に始まり、1980年代以降のポストモダニズム期の写真論を経て、2000年に前後して技術的進展が突きつけたデジタル写真論が続く。おおよそ時系列に並んだ議論の流れが、読みやすく配列されたものであるにせよ、どのように「逆撫で」にされることになるのか。また、本書の終章を飾るのは、ロラン・バルトの著名な写真論である。現在まで多大な影響力を残すとはいえ、そのバルトの議論が先の章立ての流れを裏切るかのように結末部分に位置づけられていることがいったい何を意味しているのか。これらの謎を出発点として、各部ごとに内容をできるかぎり拾い上げつつ検討を試みたい。

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写真研究の論点:前川修『イメージのヴァナキュラー写真論講義実例編』書評
きりとりめでる(無所属)

19世紀に始まった写真の実践と、たったいま写真と呼ばれるものは、どのように連続/差異があるのか。この180年程の営みを、歯切れの良い転換点(文化、技術、デジタル)を持ち込まずに、しかし、写真が多様な支持体とともに、どう使われてきたかを軸に振り返るのが、前川修の『イメージのヴァナキュラー写真論講義実例編』(2019)である。

 本書がまず取り上げた使用例は「読む」であり、最古の写真集トルボットの『自然の鉛筆』(1844-46)だ。この写真集が今まで批評家や写真史家によってどのように記述されてきたかを追いながら、本書は読者に写真分析の歴史を追体験させ、そもそも『自然の鉛筆』の読者は誰だったのかという問いを挟みつつ、写真とテキストと写真のシークエンスを読み、「写真集」がその多重に意味を衝突させる場となっていると示す。
 その次には、芸術の写真として一般に美術の教養をもたらし、美術史家の研究態度を方向付けたスライドによって「投影」することを、肖像写真を「身につける」ことを、撮影し、撮影されること、名刺写真(カルト・ド・ヴィジット)を「収集・とじる」ことを扱っている。このように、19世紀を中心とした写真の使用の容態をあらわした本書は、一貫して、「使用者の身体の痕跡は澱として写真という被膜に沈着していく」という、物質としての写真が何を引き起こし得たのかを拾い上げる。そして、最終章のセルフィ分析は、これらの使用の写真史の蓄積を応用する形で展開される。

本発表では最初に、今まで/これからの写真使用の実践分析の物差しとなるだろう本書の概略を確認し、その前提条件を考察する。次に、本書のセルフィ分析を中心に、これからの写真論の論点を検討する。

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以上
日本映像学会写真研究会
代表 倉石 信乃
明治大学理工学研究科
〒214-8571 川崎市多摩区東三田1-1-1