2021年度 西部支部研究例会のご案内
西部支部では、2021年度研究例会を下記の通り開催したします。
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2021年度西部支部研究例会
日時:2022年3月27日(日) 15:00-17:00
会場:Zoom Meeting によるオンライン開催
参加方法:
下記メールアドレスに「ご所属」「ご氏名」を本文に含め、メールにてご連絡ください。折り返し Zoom Meeting の参加リンクを返信いたします。
参加連絡メール:kuroiwamail.kyusan-u.ac.jp
参加連絡締切:3月27日(日) 12:00(正午)までに、メールにてご連絡ください。
担当: 九州産業大学芸術学部 黒岩俊哉
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– 研究例会 –
発表者1:文 芝瑛(東亜大学芸術学部准教授)
タイトル:「記憶のアーカイブ -映像における時間性と記憶の再現について-」
概要:私が映像を使う理由は、時間性と視覚的情報を同時に再現できるものだからだ。これまで制作してきた作品の多くは、上映ではなく、ギャラリーや美術館で展示という形で発表してきた。これを私は映像インスタレーションと名付けたい。
『海のかなたで(beyond the sea)』(2013)は、福岡を行き来する船の中で撮影を行なった。生まれ育った釜山と長年住んでいる福岡、どこに「帰る」のかわからない複雑な気持ちから着想し、「波」の色が変化していく様子を映像にしたものである。この作品は、偶然にも同じ名前の作家との2人展「KIZUNA-絆-」において発表した。また、釜山で開催した個展「Nalda・舞い上がる」において展示された映像インスタレーション『Nalda』(2014)は、「時間の経過とともに色褪せていくように、辛い思いも悲しい思いも、うっすらと記憶のかけらになる。しかし、その記憶のかけらはなかなか消滅せず、何かのきっかけでスイッチが入ると蘇る。この「記憶」と「時間」の間で悩む自分」を対象にした映像である。
『アント』(2016)は、生きることに対する問いのような作品である。人はひとりだけの時間を必要とする存在だが、ひとりだけでは生きることができない。今まで多くの人に出会い、これからも多くの人に出会い、時間と空間を共有して生きていく。これをモチーフに新たな可能性の模索をするため、3Dアニメーションとモージョングラフィックを用いて制作し、福岡市のアートスペース貘での個展「Alone or together(林)」において発表した。『The Shadows』(2016)は友人と行った旅先でのエピソードをモチーフにした友情に関する物語りになっており、実写とモーショングラフィックなどをミックスする方法で完成させている。それ以降も、実写とアニメーション、モーショングラフィックなど多様な手法をミックスさせる方法を用いて映像を作ってきた。
さらに、今は「旅する胞子」シリーズを通して、微々たる存在が少しずつ自分の領域を広めていく様子をオブジェと映像を用いて表現している。これは更なる可能性への実験に近いものとして、映像とモノの表面がぶつかり合って作り出す、反乱する光と色の空間に観客が自ら入り込んで、直接体験するような形の作品になっている。観客が経験したその空間での記憶をさらに記録していくことが今後の課題である。
発表者2:西谷 郁(西南学院大学非常勤講師)
タイトル :「映画祭における交流・観光・創造 〜福岡と釜山における独立映画の交流・育成事業をとおして」
概要:2009年よりスタートし今年で13年を迎えた福岡インディペンデント映画祭は継続して釜山のインディペンデント映画界と交流を続けてきた(釜山国際短編映画祭、メイドインプサン独立映画祭、インターシティ釜山映画祭など)。
約13年にわたるインディペンデント映画の交流と育成活動を通じて、釜山と福岡の映画制作をめぐる製作・上映環境の差異と共通点を分析し明らかにする。福岡や釜山は国際映画祭が開催される中核的な地方都市であり、風光明媚な旧所名蹟を訪れ余暇も求める観光地というよりも、イベントや食などに集約された都市観光が注目され人気が高い。
福岡と釜山の独立映画祭において、両映画祭の参加者は自らの作品の上映と質疑応答だけではなく、都市を代表する市場や学校など都市の観光を楽しみ、市民との交流から次回作の構想を練り、次回も自身の作品を福岡や釜山で上映するという目標を持ち次回作へのモチベーションを高めようとしていた。チャン・リュル監督の『福岡』『柳川』もそうした活動の中から制作された事例の一つであろう。
こうした福岡と釜山の映画祭における交流と観光行動を分析し、それが映像制作の創作性とどのように深く関係しているのか、考察する。さらに、福岡と釜山という持続可能な地域間交流の在り方を模索し、新たな創造性を誘発している事例を考察したい。