日本映像学会映像人類学研究会第8回研究会(2024年9月7日)のお知らせ
下記の通り日本映像学会映像人類学研究会第8回研究会を、Zoomでのリアルタイムオンラインにて開催いたします。
今回は、「映像領域の越境」をテーマにフィールド調査や取材に基づく領域横断的な美術作品の制作をおこなう、現代美術家であり映像作家の八幡亜樹氏をお招きします。八幡氏の表現は「映像インスタレーション」です。3面を使用した映像インスタレーションのみならず、ドキュメントや写真、webサイトを同時に展示して完結させるという独自の手法は高い評価を受けています。八幡氏が提唱する 「ドキュメンタリーミュージカル」は、前回、前々回の研究会で取り上げた「アニメーションドキュメンタリー」と同様、映像における「ジャンルの境界とは何か」ということを私たちに問いかけてきます。また「映像インスタレーション+α」という表現の多様性や柔軟性は、「映像の限界と何か」を考えさせてくれます。
とても刺激的な研究会になると思いますので、会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。特にこれから映像業界や美術家を目指す学生さんなどにも積極的に参加いただけたら幸いです。
概要:参加申請をしてくださった皆さんには、ゲストスピーカー(八幡亜樹氏)が制作した作品『jaPandesal2013』と『ベシュバルマクと呼ばないで//2022』の二作品を事前にご覧いただきます。どちらも、3面インスタレーションで表現されている作品です。参加申し込み後に視聴URLをお送りします。当日は、これらの作品にまつわる制作秘話や苦労話を伺いながら、八幡氏と主催者とでトークセッションを繰り広げます。そしてその後に参加者との質疑応答、意見交換をおこないたいと思います。
多くの皆様の参加をお待ちしています。
日時:2024年9月7日(土)14時00分〜16時00分(予定)
形式: Zoomによるオンライン開催
参加費:無料
どなたでも参加できます。学生さんも歓迎です。
お気軽にお申し込みください。若手制作者、若手研究者の方で興味がある方も是非ご参加ください。
参加申し込み方法:下記 Googleフォームからお申し込みください。ご質問、ご不明点がございましたら、以下のメールでお問い合わせください。参加者リスト作成などの準備のため、締め切りは2024年9月2日(月)18:00厳守とさせていただきます。
Googleフォーム:https://forms.gle/fdiW1A9ANy8NpLwAA
メールでお問い合わせ:visualanthropology2021gmail.com
作品概要:以下の二作品を事前に視聴していただく予定です。
『jaPandesal2013』
展示形態: 映像インスタレーション[3channel videos+ドキュメント展示 ] (25分59秒 )
本作は、パンデサル(フィリピンの国民食とも言える定番のパン)をめぐるフィリピンの日常と、そこに接続する第二次世界大戦や植民地時代の歴史を「ドキュメンタリーミュージカル」という形式で捉えた作品です。フィリピンの日常のなかの戦争の歴史、人々の心の中にまで入り込んでいる記憶を研ぎ澄まされた感性で描き出しています。同時に、急速にテクノロジーが進んでいく現代社会のなかで、昔ながらの暮らしや価値観を守ろうとする田舎の風景も映し出され、「失われそうなもののなかにある、失われない強さ」というものをどこか確信的に映し出してもいます。その強さは、パンデサルというものが過酷な歴史を貫通して残ってきたソウルフードであることや、大きな袋から家族や仲間と手に取り合って、共食するものであるという精神的なつながりの強さなどに折り重なっていきます。
『ベシュバルマクと呼ばないで//2022』
展示形態: 映像インスタレーション[3channel videos+写真+手食webサイト展示 ] (10分45秒)
本作品は手食を題材とし、そこに複数の事象が絡み合うことで形を成している作品です。手食を「人類のパフォーマンス」と捉え直し、文明の発達とともに失われていく手食の面影や痕跡、現在の在り方を調査し、アーカイブしていく(https://teshoku.com)とともに、行為としての手食に身体性や感覚の解放と拡大、人と人との結びつきや自他の共通性を見出し、芸術を通して手食を考え、人間の可能性や人類のあゆみに考えを巡らせることを意図した作品です。本作では、世界中の手食文化の中でもカザフスタンとキルギスの伝統的な肉料理であるベシュバルマクに焦点を当てています。ベシュバルマクとはカザフスタン語で「5本の指」を意味しますが、その取材を進めるなかで、八幡氏はこの料理名をめぐるカザフスタン人の複雑な思いとアイデンティティ の問題、その背景にあるロシアとの関係にも触れていくことになります。
ねらい:
八幡氏は、3面インスタレーション映像をベースに、そこに音楽や写真、はたまたドキュメントやwebサイトなどの様々な情報伝達の手段を駆使する展示を通して作品表現をおこなっている。その手法は独特で、そして多様性に満ちている。またそれらの作品は、綿密なフィールド調査や取材に基づいて構築され、現地の人々と共有されることで生み出されている。それはまさしく、ジャン・ルーシュが提唱した「共有人類学」にも通ずるものである。八幡氏が「失われそうなもののなかにある、失われない強さ」を映像として表現しようと考えたきっかけや理由は何なのか。八幡氏とのトークセッションを通して、八幡氏の作品の方向性や目指しているものは何なのかを探ってゆきたい。そこには必ず、映像の限界や可能性のヒントが見いだせるに違いない。
ゲストスピーカー略歴:
八幡亜樹/Aki Yahata
現代美術家、映像作家
東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。同専攻博士後期課程中退後、滋賀医科大学医学部医学科卒業。フィールド調査や取材に基づく、領域横断的な美術作品の制作を行なう。主なメディアは映像+インスタレーション。
「(地理的/社会的/心身的な)辺境」の概念を追求し、その一環として近年は「手食」や「ロードムービー」に焦点を当てる。ロードムービーをVJの手法で即興する試みなど、映像の多岐にわたる展開も探求する。2022年より世界の手食文化をオンラインアーカイブするウェブサイト「手食」webを立ち上げ、主宰・編集。また最近では、“医術としての芸術”の在り方に着目し、それを「藝医術(げいじゅつ)」と呼び、人間の生命力を伸張する芸術の在り方について改めて思索・探究している。
主な個展に、「ザ・トライアングル『八幡亜樹展 | べシュバルマクと呼ばないで//2022』」(京都京セラ美術館、2023)、「彼女が生きたかった、今日の日に。」(HENKYO.studio、京都、2021)、「楽園創造 vol. 07 八幡亜樹」(gallery αM、東京、2014)、グループ展に「2023 Taiwan International Video Art Exhibition」(鳳甲美術館、台湾、2023)、「逡巡のための風景」(京都芸術センター、2019)、「Journey to the West」(Lalit Kala Akademi、インド、2012)、「REFLECTION」(水戸芸術館、2010)「六本木クロッシング」(森美術館、東京、2010)など。
司会:本研究会メンバー(田淵俊彦、中垣恒太郎、西野毅史)
式次第(予定):
14時00分〜 開会の挨拶、映像研究会のこれまで(第1回~第7回)の活動についての報告
14時15分〜 ゲストスピーカー・八幡亜樹氏とのトークセッション
15時15分〜 参加者との意見交換
16時00分頃 終了
協力:
芸術科学会
映像人類学フォーラム
映像人類学研究会代表:田淵俊彦