日本映像学会関西支部第93回研究会(3月5日)のお知らせ
下記の通り日本映像学会関西支部第93回研究会をリモート(Zoom)にて開催いたします。関西支部会員に限らず多くの方の参加をお待ちしています。
日時:2022年3月5日(土)午後2時より4時頃まで。
参加希望の方は下記リンク(Googleフォーム)にて事前申し込みをお願いします。申し込み締め切りは3月3日(木)いっぱい日付変更まで、締め切り翌日(研究会前日)にZoomリンクをメールにてお知らせします。
https://forms.gle/kUh2fPuue11aGBGa8
研究発表1:「コマの配置空間と物語空間の関係」における異化効果の検出実験に関する報告〜イマジナリーラインの跨ぎを中心に
発表者:京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科デザイン学専攻博士後期課程1年 杜若飛(ト・ジャクヒ)会員
要旨:
漫画と映画は同じくコマの繋がりによって展開するメディアである。漫画は時間軸ではなく空間にコマを配置する特徴があり、これは映画と異なる点である。また漫画は、二次元としての紙面空間と、遠近法による二次元的な物語空間が重なって表現されるために、並置されたコマ同士の相互作用を通じて物語空間に影響を与える。このような漫画の特性に従い感情移入という観点からは、次の3者による議論が重要である。竹内オサム(2005)は手塚の作品を分析した上で、漫画に「映画主観ショット」の導入を中心にして「同一化技法」を示した。泉信行(2008)は漫画のコマが「キャラクターに感情移入しながら、距離を取って客観視する」という身体離脱効果があるという概念を打ち出した。これに対して鈴木雅雄(2014)は時間の経過によって表せるコマたちが目の前に共存するため、読者が漫画を読んでいる時に、読者自身が物語の当事者となりながら観察者にもなるメディア特性を論じた。
現在流行しているタブレットやスマートフォンなどを利用した「縦スクロール漫画」の表現は、デバイスの面積と形状が漫画雑誌の紙面と異なるため、「語り」に対する没入効果も異なる。映画に使われて、紙漫画に無視されるイマジナリーラインのルールは縦スクロール漫画には利用されている。先述した3つ観点は、漫画というメカニズムからブレヒトの異化効果のような現象を説明したが、コマ配置の左右上下前後という三つの方向の差異や効果の詳細については論説していない。
以上の問題設定を踏まえ、本発表では、発表者自身が行ったイマジナリーラインに関する認知実験の結果を紹介(中間報告)し,縦スクロール漫画で失われた、自在にコマを平面空間上に配置できる紙漫画のような物語への没入感が、新しいデジタル漫画などでどのように活かせるのかを考察する糸口を示したい。
研究発表2:展示室空間における映像プロジェクション ―現代日本における作品を中心に
発表者:関西学院大学大学院博士課程後期課程 髙見翔子会員
要旨:
本発表では、現代美術において数多く存在する「プロジェクション(投影)」を伴う映像作品のうち、美術館や科学館などの展示室内で展示を行う作品を中心に、映像の内容に加えてスクリーンの設計や空間的配置、身体とのインタラクションを含む関わりなどについて、その総合的な特性を明らかにすることを目的とする。
映像をスクリーンや壁面、オブジェクトなどに投影する技法である「プロジェクション」は、19世紀に幻燈が登場するなど、映像史においてその技術は古くから人々の日常に多く用いられてきた。近年では、タブレット型端末の急速な普及などの影響により、映像が投影される媒体や、展示空間における身体的な関わりは大きく変容するなど、映像の鑑賞を巡る方法が多様化している。
とりわけ、本発表では、作品に対して条件が整えられた展示室内での展示を行なってきた池田亮司、クワクボリョウタ、チームラボの作品を中心に採り上げる。2000年以降、データを主題とする表現を模索し続けてきた作曲家/アーティストの池田亮司(1966-)は、展示空間に映像をプロジェクションし、またその空間に映し出される映像と連動した音圧のあるサウンドにも特徴を持つ。メディアアーティストのクワクボリョウタ(1971-)は、2010年以降、LEDライトを搭載した車輌を走らせ、光を当てた日用品の影を展示空間の壁面に投影し、映像のように展開する作品を制作している。アートコレクティブのチームラボは、科学館や美術館といった展示空間で、鑑賞者の動きに合わせて空間を構成する映像や音楽すべてがインタラクティヴである作品を多く展開してきた。展示空間に投影される映像には、継ぎ目がない点もその特徴である。
このように、本発表では映像プロジェクション作品について、展示空間とスクリーンの在り方や鑑賞者によるインタラクティヴィティの点も含めた特性を明らかにする。
日本映像学会関西支部事務局
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